無料の牛丼に並ぶのは、本当にコスパが悪いのか?
昨年末は、ソフトバンクが「SUPER FRIDAY」と称して、毎週金曜日に牛丼やドーナツやアイスクリームが無料になるクーポンを配っていて、対象店舗ではしばしば長い行列ができていたらしい。
で、ニュースでそういった行列が話題になるたびに出てくるのが
SoftBankの無料牛丼に並ぶたくさんの人たちと我々の違いについて | More Access! More Fun!
こういう「並んでまで○○するのはコスパが悪い」的なまったくの正論を述べるブログであり、それを見るたびにchocoxinaはこう思うわけだ。
なんかしゃらくせえな。
と。
以下はその「なんかしゃらくせえ」を、いかにまっとうな主張っぽく表出させるか、という試みであり、言い換えれば「ああいったブログを見続けることでchocoxinaの心の中に産まれた『仮想のしゃらくせえ奴』との喧嘩」である。
よってどうか、上で挙げたブログのライターさんや「行列には頑として並ばない、コスト意識の高いひと達」も、気を悪くせずご笑納頂きたい。
0.序
さて、行列とコスト意識に関する議論というのは、簡潔には「並んだ時間と得られた利益の費用対効果」に関する議論だと言い換えられる。
つまり、二時間並んでタダで牛丼を食う行為に対する批判というのは
「120分を支払って380円の利益を享受するのでは、費用と効果が割に合わない」
という主張だといえる。
(人によっては「並んでいる奴らはそこに気づいていないので愚かだ」くらいのことを言ったりするわけだが、そうやって利害関係のない他人を非難することは明らかに非合理的である。そういった非難の是非は今回のコスパに関する考察で取り上げるに値しないので、今後は触れないこととする)
この主張について、当エントリでは
「得られた利益は本当に380円相当だろうか?」
「消費した費用は本当に丸々2時間相当だろうか?」
「『2時間払って380円』は、本当に割に合わないのか?」
の三点から掘り下げを試みる。
1.「得られた利益は本当に380円相当だろうか?」
この点に関して異を唱えることは容易い。価値というのは極めて主観的なものだからだ。
chocoxina個人を例に挙げると、さすがに無料の牛丼のために2時間並ぶことはないが、10月1日、すなわち天下一品の日にラーメン無料券を得るためであれば、2時間は平気で並ぶ。
天下一品でchocoxinaが2時間並んで得ている利益を箇条書きすると、以下のようになるだろう。
・この日に向けてバッチリ備えた店員のテキパキとしたオペレーションや、満席の店内から感じられる活気
・あの油のカタマリみたいなスープを短期間に二度食うことへの精神的なエクスキューズ
・天一の日キャンペーンの実質的な効用「ラーメン二食半額」が「一食食うと一食無料」に置き換えられていることによる余分のお得感
・数年に一度当たる謎のアメニティ
・(ありきたりな言い方で読者の目が滑ることを危惧するが)お祭り感
特に「天一を月に二度食う理由ができる」価値については筆舌に尽くしがたい。
chocoxinaは「丸一日野菜を食っていないことに気づいたら、野菜ジュースでも何でも摂らないと落ち着かない」という程度に偏った健康意識があるのだが、10月1日に「だってタダ券貰えるし」と言って天一を食い、「だってタダ券の期限あるし」といってまた食うその時は、健康の呪縛から自由でいられる。
深夜に食うカップ麺が普段よりはるかに美味であるように「月に二度目の天一」もまた大いに美味であり、天一の日はそのための背中を押してくれるのだ。
だいぶ脱線したが、ともかくものごとの価値というのは「380円で売っているから380円分」と客観的に規定できるものではないということだ。
「苦労して並んでタダで食ってやった牛丼」に価格の何倍もの価値を感じる人がいることは想像に難くないし、それに対してさもしいだとか非合理的だとか言う権利は誰にもあるまい。
実家に帰省しておかんが作ってくれた手料理や、気の置けない友人と食べるピザ。我々は常にそういった、主観的にしか価値のないものをありがたがりながら生きているのだ。
同様に、「俺は牛丼並盛りに大した価値を感じない」という価値観も否定されるべきではない。こんなことは言うだけ野暮であるが、念のため付記する次第である。
2.「消費した費用は本当に丸々2時間相当だろうか?」
体裁上項目を分けたが、ここで言うべきことはそう多くない。
スマホやタブレットが普及した現代、「ただ並んで2時間消費する」人間などいないのだから、「行列に並ぶコスト」はもっと低く見積もられるべきだ。
「行列に並ぶことは非効率」だと訴える仮想敵たちが「並ぶための時間で他にすべきこと」として挙げがちな、仕事のための情報収集やアイデア出しやある種の実作業。また、それらと比肩して人生にとって重要なゲームなどの娯楽。
そういったものの大半は今や「並びながらできる作業」であって、普段それらの作業のために割いている時間を「作業しながら並ぶ」時間にできたなら、並んだことによって得られる利益は丸々得になるはずだ。
「並びながら作業することによる効率の低下」を考慮するにしても、差し引き支払われるコストが「2時間ただ並ぶだけ」に遠く及ばないことは明らかだろう。
※当然ここでも前段の「主観的な価値」の話を適用しうる。「俺はとにかく並ぶという行為が大っ嫌いなんだ」という人にとっては、たとえ何かをしながらでも「二時間並ぶこと」のコストは甚大なものになるだろう。ただし、そういった主張は(ここで為されるほかのあらゆる主張と同じように)あくまで主観に基づいている、ということを自覚する必要があるだろう。
3.「『2時間払って380円』は、本当に割に合わないのか?」
ここまでで十分「『行列に並んでタダで牛丼を食うこと』をコスパの観点から批判するのは筋が悪い」ということは主張できていると思うのだが、せっかくなので続ける。
「行列に並ぶことは非効率」だと訴える仮想敵たちがその非効率性を訴える喩え話として、以下のようなものがある。
"
2時間並んで380円の牛丼を得ることは、時給190円の仕事をしたことに等しい。君が普段時給2000円相当で仕事をしているとしたら、その差額分損をしているのだ
"
この一件美しい理論の穴は「普通の人間は、絶えず価値を生み出し続けることはできない」という事実を無視している点だ。
どういうことか分からないならば、自問してみればよい。
「今月、自分が倍の時間働いたら、倍の収入が得られるか?」
世の中には「それ」ができる人もいるだろうからあえて断言しないが、一般よりやや体力やスキルに自信のない成人男性の実感として言えば、答えはNOだ。
「未来により多く稼ぐためのスキルアップの時間」をとって、見込み増収を時給に換算すれば実質稼いでいるようなものだ、という意見もあろうが、それだって、計算の方法によれども「現在の時給とまったく同じ価値」とはいくまい。人間の時間の価値、もとい「時間と金の変換効率」はもとより非線形なのであって、見込み増収だとかなんとか言って無理やり線形に近似してはかえって理解を損なうだろう。
さて、こうして「時間:金変換効率の非線形性」を前提とした上で
「『本来そう多くは稼げない時間だった2時間を、行列に並ぶことで380円に変換できる』ことは果たして言うほど非効率的だろうか。例えるなら、カステラの端を格安でまとめ売りするような利益の創出とはいえないだろうか」
というのがこの段の主張である。24時間働けるタイプの人たちからの批判が怖いのでここは極力さらりと済ませてまとめに入ろう。
4.まとめ
以上、こうしてchocoxinaは仮想敵に対して「行列に並ぶことをコスパの観点から批判するスジの悪さ」をありったけの理屈でもって主張した。
この記事の執筆にかかった時間は2時間。得られた価値はゼロ。書いてるあいだラーメン二郎にでも並んでおくべきだった、というのが今回の結論である。
【フードチェーンマグネイト】戦略・戦術覚え書き
はじめに
アナログゲーム「フードチェーンマグネイト」の戦略記事っていうか覚書です。以下ご留意の上お役立てください。
・基本的なルールとカード名、あと「初手はトレーナーかリクルーターが強いよね」「100$のマイルストーン強いよね」くらいの認識を前提としています。
・誰かがラジオを打ち始めたら中盤、値下げ競争が起きたら終盤、くらいの認識で書いたつもりですが、いかんせん思いついた先から書いているのでブレます。第一ゲームがそう進まない可能性もあるし。
・本人が書いてるうちの3割も意識できてません。
・そもそもあんまりプレイできてない。
・ガチ勢のツッコミ待ちです。
・未プレイの方はこの記事を見て「なんか難しそうなゲームだな」と思わず一度プレイしてみてください。初プレイでも、序盤躓かなければプレイヤー間の相互作用でピタゴラスイッチ的に勝てたりするし楽しいよ。一緒にやろう。おじさんが丁寧に教えるよ。
初期配置
ゲームが始まって以降のインタラクションが強烈なゲームなので、この部分の選択がゲームにどういう影響を及ぼしたかを後から量りづらいのだが、個人的に気をつけていることを。
・大筋として、家>他プレイヤー>飲料、の順で重視する。
・「自分の店が最も近くなる」家が必ず一件以上あるようにする。距離0だとなおよい。
・配置の順番が序盤(=第一ターンの手番が後)の場合、グルが取れない可能性があることを意識する。
・郵便受けの効果範囲を考慮する(配置によっては序盤の展開に大きく影響するため)
・その他の要素が許すなら、マップタイルの境目をまたぐように店を置く(ドライブスルー発動時に有利になるため)
・「ボード上の供給が少ない飲料」を重視して配置を考える場合、他プレイヤーから遠くなりすぎないよう注意する(自分かだれかがその飲料の広告で盤面に影響を及ぼさない限り、マイナーな飲料を取る意味がない)
・以下の「他プレイヤーの影響を受けにくい戦略」について、それらが今回のマップで可能か、より強い戦略が取れるか、またそれらを妨害できるか、もしくは自分がその戦略を取るか考慮する。ボード上の総需要が少ない3人以下のゲームで特に注意する。
1.マーケター戦略
(看板1つで家2件に需要を発生させ、その需要を独占して最速5ターンで100$達成を目指す)
2.ウエイトレス戦略
(ウエイトレスを大量に働かせて、5ドル*人数分の安定収入を目指す)
3.高級化戦略
(他プレイヤーが進出できない家に対して高値で商品を売る)
銀行準備金
正直あんまりよくわかってない。
・自分が何をして勝つつもりなのか、大筋イメージしておく。
(需要を打って勝つのか、打たせて勝つのか、その他特殊な戦略か)
・基本的に、特殊な戦略を取らないなら、ここで適当に入れて、戦術の方を合わせていくイメージ。
・ただし、誰かがマーケターやウエイトレスで序盤に勝負を決めに来そうなら、自分が中庸な戦略を取る予定でも300$を入れる。
初手:
ここまでですでに決まっているのが望ましい。
何らかの事情で予定が狂ったら、リクルーターでいいんじゃないでしょうか。
序盤(共通)
・「最初に100$獲得した」のマイルストーンについて「誰よりも早く取る」か「取らない」か方針を決め、取らない場合はCFOの雇用を意識して動く。
「取る気がないのに取れちゃった」人はかなりの確率で勝つし「取るつもりなのに取れなかった」人は敗色濃厚。
・自分がテーブルの中で経験豊かな方のプレイヤーである場合、後手番を取る価値が上がる。緩手につけ込んだり、友情コンボで伸びたプレイヤーを叩いたりするため。
・フードとドリンクのどちらを作るべきかは良し悪しだが、逃げ切りを狙っていて、バーガーかピザを自分一人だけ作れそうなら積極的に作る。序盤はドリンクからフード、またフードからフードへの切り替えが困難なため、対応する間を与えずに稼げる。
・他者を妨害するために広告を打つ場合は慎重に。相手がすぐに供給できる場合、かえって100$達成を手助けすることにもなる。
序盤(トレーナーオープニング)
トレーナーで管理職見習いを育ててグルにし、ブランド執行役員をはじめとした強力なカードを使う戦略を指す。
・ルール上、雇用したカードは即教育できる、つまり、グルかコーチを雇うまでは「教育してから使う予定のカード」を雇う必要がないことに注意。管理職を育てている間にリクルーターを取っておこう。
・展開の早いプレイヤーが多いとか、グルの枚数以上のプレイヤーがトレーナーを取ったりとかした場合には、グルではなくコーチを取る路線も考慮する。
・仕入れ系のカードを使うときや、広告を打つときは、なるべく手番順で後手を取る(自分が生み出す需要に相乗りされにくいように)。
・↑上記を達成するため、またグルの取り合いに勝つために、それ以外の場合はなるべく先手を取る。
・他プレイヤーが自分のラジオに容易に相乗りできそうな場合、すぐにラジオを打たずに、相手が給料で消耗するのを待ちつつ新たな仕入れ手段を用意する戦略がある。ただし4人以上プレイの場合「最初にラジオで宣伝した」を取り遅れないよう注意。
序盤(リクルーターオープニング)
「最初に1ターンで3人雇用した」で増える手数とマイルストーンで戦う戦略を指す。初手トレーナーに走ったプレイヤーがいる場合、自ずとラジオの需要を奪うことに注力する流れになる。
・初手トレーナーに入ったプレイヤーがラジオや飛行機を打つ前に、残りのプレイヤーで「最初に○○を宣伝した」マイルストーンを枯らしておきたい。
・「最初に100$獲得した」を取らない場合「最初に給料を20$支払った」は必ず獲得したい(マイルストーン効果がないとCFOを作りにくい)。どちらのマイルストーンを取るにせよ、資金繰りにウエイトレスが役に立つ。
・金もないのにフードを作ってマイルストーンで来たシェフを即クビにするとか、そういう細かいミスに注意。
・初手トレーナーに入ったプレイヤーが仕入れ系のカードを使うときや、広告を打つときに、そのプレイヤーより後手を取り、広告に即相乗りできるようにする。
中盤(共通)
個々のゲームによるところが大きくなる。
・相手の商品単価、管理職、供給量に常に気を配る。リストラクチャリング時を除き所持カードについてはルール上いつでも聞いてよい。
・戦略外の話だが、ディナータイムや広告、銀行等の処理はなるべく経験者で分担しよう。有限の処理能力を公平に分担し、よりレベルの高いゲームを。
・ラジオを打つ場合の効果時間は、「どのくらいの間需要を独占できそうか」で決める。仕入れも値下げも先行できそうなら長めでよいが、そうでなければ短めにして、自分に都合のよい場所や種類で何度も打つ方が得な場合が多い。
・逆にラジオを打たないプレイヤーは、打つプレイヤーの動向を見ながら仕入れ系職業を構えつつ、ラジオ無しで黒字が出るよう広告にも注力する。それらを両立するための手数と心得る。
・他者の需要を奪う方法として「値引き」と「新規出店」があるが、広域マネージャーの出店は特に強いので注意。単価を下げなくて済む都合上、まず「新規出店」が攻撃的に仕掛けられ、防御的な意味合いで値下げが使われる傾向にある。攻めるにせよ守るにせよ、中盤以降は教育してすぐ使える管理職を保持しておきたい。
・相手が値下げや新規出店で需要をかっさらうターンに仕入れ制作系のカードを打つと、ほぼ完全に手損になるので注意。売れないターンを見極めてきちんとしゃがむことができればしめたものだが、そもそも「値下げが間に合わず、需要を奪われる」ことがないよう立ち回れればなおよい。常に後手番を取れるよう意識するとそういった動きがしやすくなるし、なんなら自分から値下げもできる。
・新規開拓は強力だが、需要を奪われる可能性がある。特に伸びているプレイヤーに奪われないよう注意。
終盤
・値下げの激化によって、終了が存外に延びる場合がある。「総需要が◎個でだいたい単価○$、うち△割はCFOで1.5倍」くらいは数えられると有利だと思う。
・いらないカードを早めに見切ってクビにすることを考える。単価5$まで値下げが進んでいるとき、一人クビにすることは、それ以降1ターンにつき一つ余計に商品を売ることに等しい。
今回はこんなところで。
インテリ向けツナマヨの提案
追って説明しますが、こちらの画像はツナマヨです。
0.序文
毎日職場に持っていく弁当のため、しばしばツナマヨを作っている。
ツナ缶を開け、油を切り、皿にあけて、マヨネーズと和える。何度もルーチンワークのように繰り返すうち、ある時はたと気がついた。
このツナマヨとかいう料理、かなり馬鹿っぽくないか。
1.なぜツナマヨは馬鹿っぽいのか
過去の私のように、未だツナマヨの馬鹿っぽさに気づいていない皆さんのために説明しよう。
ツナマヨに使われているもの一つずつに向き合うことで、言わんとしていることがおわかりいただけるはずだ。
まずツナ缶について。
もしお手元にツナ缶をお持ちなら、その裏側を見てもらうとわかると思うが、あれはつまるところ「マグロの油漬け」である。
油の中で魚を煮ることで、あの柔らかくジューシーなツナ缶ができる。
ツナ缶の組成を簡単に表すとこうだ。
【ツナ = マグロ + 油】
次にマヨネーズ。
詳細は省くが、マヨネーズの主な原料は油、酢、卵である。
先ほどと同様に書き表すと、
【マヨネーズ = 油 + 酢 + 卵】
となる。
これを踏まえた上で、ツナマヨの作り方を振り返る。
ツナ缶を開け、油を切り、皿にあけて、マヨネーズと和える、だ。
これを式に表すと、【ツナマヨ=ツナ缶-油+マヨネーズ】となるが、ここにさきほど求めた値を代入すると、こうなる。
【ツナマヨ = マグロ + 油 - 油 + 油 + 酢 + 卵】
どうだ、馬鹿っぽいだろう。
ツナマヨという簡単な料理を作るために、やたらと油を足したり引いたりしており、あまりに非効率的だと言わざるを得ない。「一度引いた油を、あとでまた足している」これが馬鹿っぽさの所以である。
2.効率的ツナマヨの探求
さて、前提の共有がなされたところで、掲題の通り、ツナマヨの馬鹿っぽさを知った我々インテリのためのツナマヨについて考える。
義務教育で初等数学を学んだ我々なら知っての通り、ある数aとその加法逆元-aの和は0となる。また、加法単位元である0は、加法によっては他のあらゆる元に影響を与えない。
(これをひらたく言うと「3 - 3 = 0」だし「5 + 0 = 5」だよね、ということである)
ともかくこれを先ほどのツナマヨ式(ツナマヨ = マグロ + 油 - 油 + 油 + 酢 + 卵)に反映すると、以下の通りだ。
【ツナマヨ = マグロ + 油 + 酢 + 卵】
ここで、先述の通り【ツナ缶 = マグロ + 油】なので、より簡単に
【ツナマヨ = ツナ缶 + 酢 + 卵】
と書き表せる。
つまり、ツナマヨを作るためには、油を切っていないツナ缶に酢と卵黄を足せばいいことがわかる。インテリたるもの、やたらと油を捨てたり足したりなどという余計な手間は省き、効率的に生きるべきだ。
3.効率的ツナマヨ制作の実践
突然むき出しの生活感をお見せして恐縮だが、こちらがツナマヨの材料である。
理論上「ツナ缶から出た油を、酢と卵と混ぜてマヨネーズを作り、ツナ缶に戻す」ことでツナマヨが作れるはずなので、どんどん進めていこう。
これを、
こうして、
よく混ぜ合わせると、
マヨネーズに、なる筈だったんだけどなあ。
マヨネーズと呼ぶには明らかにゆるく「なんか薄ら酸っぱくてぬるぬるしたやつ」とでも呼ぶほかない、マヨネーズとは程遠いものになってしまった。実験は失敗である。
卵が常温に戻っていなかったとか、ツナ缶の油は煮汁を含んでいるとか、フォークではなく泡立て器を使うべきだったとか、原因は色々と考えられるが、ともかくも今回の方法ではマヨネーズが作れないことが判明した。
一応、この出来上がった「薄ら酸っぱくてぬるぬるしたやつ」をツナと玉ねぎにかけて食べてみたところ、味についてはあっさりとして中庸なドレッシング、という趣で悪くはなかったのだが、「上からマヨネーズかけて食いてえな」と思ったことを報告しておく。
実験の失敗は残念ではあるが、理論で説明できない失敗は常に新たな発見の前触れである。次に進もう。
4.革新的アプローチによる効率的ツナマヨ制作
気を取り直すべく「フリー素材の空」を用意したので、地味な写真続きで疲れた目を癒やして欲しい。
さて、気を取り直して。失敗したときは基本に立ち返り、改めてツナマヨ式を見直すことにする。
ツナマヨ = マグロ + 油 + 酢 + 卵
ここで先程は「マグロ + 油」をツナマヨとみなして話を進めたわけだが、この式は以下のようにも解釈できる。
【ツナマヨ = マグロ + マヨネーズ】
ツナ缶がマグロを油で煮た料理であることを考えると「マグロをマヨネーズで煮る」ことによって、より効率的にツナマヨができる筈だ。
マグロを
マヨネーズに埋めて
電子レンジで弱め(200w)に二分間加熱してみた。
するとどうだろう。
これは、
割とツナマヨではないか?
冷めるのを待って一口食べてみたところ、既存のツナマヨとおおむね遜色ない出来上がりであった。
加熱された油っぽいマグロの歯ざわりに、マヨネーズのコク。既知のツナマヨと全く同じとはいかないが、その差も「お店のチャーハンって、やっぱり自分で作るのとは違うよね」的な範疇に収まっているし、これが入ったおにぎりを食べたあとで中身について聞かれたら、10人中8人は「ツナマヨ」と答えるだろう。
むしろ、出来立てであるためかマグロとマヨネーズの味がそれぞれ濃く感じられ、こちらをより好む人も決して少なくないように思う。
5.革新的ツナマヨが内包する問題とその改善
さて、概ね満足いく仕上がりに見えるインテリ向けツナマヨであるが、改めて写真を見て頂くとわかるとおり、かなりの量の油が分離している。
底の黄色い液体は全て油である。
そもそも今回の試みが「ツナマヨを作る為に油を足したり引いたりする馬鹿っぽさ」の解消を目指すものであるからして、この「油が余っている」現状を見過ごすわけにはいかない。
理論的に正しい方法で作られた筈の今回のツナマヨではあるが、観測的事実は常に理論に勝る。この結果を式に表すと、こうなるだろう。
【マグロ + マヨネーズ = ツナマヨ + 油】
先ほどまでの理論と矛盾するようだが、観測的事実を真摯に受け止めて、次に進もう。
6.真に効率的なツナマヨの発見とその制作
さて、先程の式
【マグロ + マヨネーズ = ツナマヨ + 油】
をよく観察してみると、我々はある事に気づかされる。
まず、マヨネーズは油 + 酢 + 卵、であるからして
【マグロ + 油 + 酢 + 卵 = ツナマヨ + 油】
と書くことができる。
義務教育で学んだ通り、等式の両辺から同じものを引いても変わらず等式は成り立つので、両辺から油を引くと
【マグロ + 酢 + 卵 = ツナマヨ】
となる。
理論と実験的事実から導かれたこの式こそ、最も効率的なツナマヨのレシピである。
実際に作ると、こうだ。
「もずくを切らした日の一品料理」のようだが、ツナマヨである。
これがツナマヨだと言われて納得できる人はそう多くないだろうが、我々はこの非直感的な事実を受け入れなければならない。
「電車の中と外で時間の進み方が違う」と主張する相対性理論や、「壁に向かって投げたボールが、壁を通り抜ける」可能性を否定しない量子論。現代の科学は、いくつもの直感的でない理論によって成り立っているのだ。
7.終わりに
今回の実験によって、真に効率的なツナマヨの作り方を導くことができた。
【マグロ + 酢 + 卵】
これを読んだ貴方も、明日からこのレシピでツナマヨを作ることで、よりインテリらしく、効率的な暮らしを送ることができるだろう。
僕はインテリじゃないので普通に作ります。