chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

「ちょっとした無地の巾着」がどこにも売ってない

人生とはままならないものである。

夢は叶わないし恋は実らない、人と人とは分かり合えないし、探し物は見つからないのが常だ。

この前筆者がボードゲーム屋で中古品を見ていたところ、ゲームに必要な無地の巾着袋が一つ欠けている代わりに、かなり安くなった商品を見つけた。

巾着袋などどうとでもなるし相当にお得だ、と、購入した当時は思っていた。

まさかその「ちょっとした無地の巾着袋」が世の商店に全く見当たらないなどとは、つゆほども考えていなかったのだ。

これは「ちょっとした無地の巾着袋が欲しい」というささやかな夢を見た筆者の、あまりにも長く苦しい旅の記録である。

Day1.100円均一(ダイソー

100円くらいで売っていそうなものを買うために100均に行く、というのは、ごく自然な選択だろう。

というよりも、筆者が最初にダイソーに寄った際は、まさかこのような戦いが始まろうとは思ってもみなかった。巾着くらい「当然あるもの」と認識していたのだ。

しかし、ダイソーに売られていた巾着といえば、あるものは版権キャラクター柄、あるものはおしゃれなロゴ入り、またあるものはデパートの買い物袋を思わせるビニール製、といった具合で「ちょっとした無地のもの」はとうとう見つけることができなかった。

f:id:chocoxina:20191017135357j:plain ■最も地味なものでさえこの通りロゴがついていて、あまつさえその意匠が、インドア趣味の極致たるボードゲームにあまりにも似つかわしくない

そういえば昨年ごろだったか、ダイソーの開発担当だという女性に密着したテレビ番組を見たことがある。

子会社が試作した無難な商品に対して「これでは到底、お客様に100円お出しいただくことはできません!」とぴしゃりと言い放ち、よりこだわったものを作らせる光景が印象的だった。

しかし、無難な商品を探しにダイソーに来て、その願いがかなえられなかった今の筆者にしてみれば「よくも余計なことをしてくれたな」という気持ちだ。

100均らしいものが100均から排除されたら、いったいどこを探せばいいのだろうか。

思えば、100均はいつからか「プチプラ雑貨店」とでも言うべき雰囲気を帯び、若年女性を意識した品ぞろえにシフトしだした感があった。

化粧品を売る棚が日ごとに増え、容器という容器にカフェの黒板を思わせる模様が印刷され、あらゆる顧客の毎日をちょっとステキにしようと油断なく構えている。

おかげで以前、薬品を携帯するためにクリームケースを買いに行ったら、どれもこれもラメの入った夢カワ仕様になっており、ちっともかわいくない男性たる筆者は仕方なく、無印良品で倍近い値段のものを買うことになった。

100円以上の価値を求めてダイソーに来る若年女性もいれば、ただ80円くらいで売れそうなもの(それゆえ100均以外のどこに売っているか想像もしにくいもの)を買うためにダイソーに来る壮年男性もいるのだ。ゆめゆめ忘れないでほしい。

Day2.100円均一(キャン★ドゥ

この時はまだ「無地の巾着なんてものが、100均以外のどこに売っていようか」と考えていたので、別の100均ことキャン★ドゥに来た。

f:id:chocoxina:20191017132603j:plain ■むろんここも「巾着」といえばオシャレな柄モノが前提である

ダイソーに負けず劣らず「プチプラ雑貨店」的な100均となったキャン★ドゥではあるが、2件目となればこちらも対策を用意している。

巾着袋がただ巾着袋として売られている可能性は少ないのではないか、なにか特定のものを入れる「○○ケース」としてなら、理想に近いものが売られているのではないか、と考えたのだ。

しかしキャン★ドゥの品ぞろえは、イヤホンケースなら硬質、カバンの整理用なら透明、メガネケースならパカパカと開く特殊な口、と、どれ一つとして普通の袋がない。

f:id:chocoxina:20191017132637j:plain ■これは別の店(ドン・キホーテ)の写真だが、ちょっとイヤホンを入れておくだけの袋は生地が分厚く口金も特殊で、なかなかの値段がする

なんなんだお前たちは。創意工夫をするな。ただ無難でありさえすればいいのだ。

日本で「一億総活躍社会」などというお題目が唱えられ始めて久しいが、「100均の凝った袋」というのはそのあだ花ではないか。

なにかに特化しよう、活躍しよう、個性を発揮しよう、と考えるあまり、無難であることの価値が忘れられつつあるのではないか。

無難をこそ求める客、無難であればこそ輝く舞台というのがあるのだ。

ミープル(ボードゲームによく使われる人型の木製コマ)を入れる専用バッグを用意しないならば、せめて汎用的な巾着くらい用意しておいてほしい。

Day3.無印良品

もっとシンプルなものが欲しい、と考えたとき、人は無印良品へ行くよう運命づけられている。

記憶にあるかぎり、無地の巾着というのは往々にして生成りの綿のようなものでできており、まさに無印良品が得意とするところに思えた。

結論から言えば、無印良品には確かに「生成りの巾着」が存在した。

ただそれは

f:id:chocoxina:20191017135449j:plain ■2000円以上するエプロンの付属品

f:id:chocoxina:20191017132806j:plain ■500円のお菓子のおまけである上、妙なプリントのほどこされたもの

f:id:chocoxina:20191017132841j:plain ■無地ではあるが化学繊維製で、さらに「小さくたためる」という一生使わない付加価値のために結構な値段になっているもの

といった具合で、到底「ただ巾着が欲しい筆者」の欲求を満たすものではなかった。

なんなんだ本当に。

なぜそのエプロンを用意するついでに、巾着だけ売ることができないのか。

なぜたかがおまけにすぎない巾着に、余計な意匠を持たせるのか。

なぜいざ巾着を売ろうとなったときに「余計な一工夫」をほどこすのか。

俺はただ、適度な大きさで無地の巾着が欲しいだけなのだ。そう突飛な要求ではないだろう。

かつて「人並みの幸せ」と呼ばれたロールモデル現代日本で夢物語となりつつあるように、「無地の巾着が欲しい」というのはもやは過ぎたる願いとなったのだろうか。

Day4.ホームセンター

そこへ行けばどんな夢も叶うと言われながら、だれでもその場所を知っている現代のガンダーラがホームセンターである。

しかしすがるような気持ちで「島忠」を訪れた筆者に対して、現実はあくまで非情であった。

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ともすれば、このような感じで多様なサイズの巾着が並んでやいないかと期待したのだが……

ホームセンターの売り場は、鞄売り場なら鞄、ツールバッグ売り場ならツールバッグ、ビニール袋売り場ならビニール袋、という具合に整然としており、その中で筆者はとうとう「巾着がありそうな売り場」さえ見つけることができなかった。

思えば、巾着というのはあまりにも中途半端な存在である。

あらゆる用途の入れ物としてそれなりの役割をこなしながら、決して何かの専用にはなりえない。

筆者は巾着袋に、かつて通信簿で「器用貧乏」と評された自分自身を重ねた。

お前に居場所となる売り場がないならば、いわんや、俺には。

Day5.手芸用品店

ダイソーでおしゃれに装飾された巾着袋を見つけたとき、「お仕着せのかわいい雑貨を売るよりも、ユーザーにカスタマイズを任せるほうがいいのではないか」という思いがふと頭をよぎった。

かつて100均を使いこなしていた女性というのは、無難なグッズに自分の手でデコパージュをほどこしたり、スパンコールを縫い付けたり、そういった風に創意工夫してプチプラを楽しんでいたのではなかったか、と。そこにわざわざ店の方でかわいいグッズを用意して売ろうなどというのは、さながら金曜ロードショーが「バルス」を推奨するような無粋なのではないか、と。

そこまで考えたとき、手芸用品店ならば「デコレーションの下地としての無地の巾着」があるかもしれない、と直感したのだ。

その考えは、ある意味正解で、またある意味間違いだった。

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このように「無地のトートバッグ」が何種類もある一方で、無地の巾着だけはついぞ見つけることができなかったのだ。

手芸用品店であまたの布や糸、あるいは紐をかきわけながら巾着を探していると、「巾着くらいの小物は自分で縫え」と言われているようで心苦しかった。

家庭科の成績が5だった筆者にとって、布と紐から巾着袋を作ることくらい造作もないことではあるが、袋が必要になるたび針と糸とをちくちくやる、というのは避けたいところである(ほとんどの独居成人男性の家がそうであるように、筆者の家にはミシンがない)。

5年6年と飽きもせずボードゲームを趣味とし、これまで3桁に及ぶゲームを買った身として、今後どれほどの袋を縫うことになるのか、考えるだに恐ろしかった。

Day6.雑貨店(フライングタイガー)

北欧のこじゃれた雑貨を売る店であるところの「フライングタイガーコペンハーゲン」。

言うまでもなく「ちょっとした無地の巾着」なんてものとは最も縁遠い店である。

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f:id:chocoxina:20191017133205j:plain ■北欧では、全ての布がアッパーな意匠をまとって生まれてくる

ただ思うに、そもそも「雑貨」という言葉は本来「ちょっとした日用品」「小規模で分類しにくい産業」という意味だったはずだ。

それがいつの間にか「女性向け」の意味合いを帯びはじめ、こんにち雑貨屋といえば、当然かわいらしいグッズを売るものだと誰もが信じて疑わない。

そうなれば、まさに本来の意味で雑貨そのものであったところの「無地の巾着」を、我々はどこで買えばいいのだろうか。

筆者がこの店に来たとき、実は巾着を探しに来ていたわけではない。

もはやそれを買うことは諦め、どうにか楽に自作するべく、400円のハンディミシンを買いに来たのだ。

f:id:chocoxina:20191017134058j:plain ■ちなみにハンディミシンには入れ物として巾着袋がついているのだが、こちらも大概ゴキゲンなことになっている(画像出典:https://blog.jp.flyingtiger.com/

しかし今回の、筆者と巾着袋をめぐる戦いは、ここで思わぬ形の決着を迎えることになる。

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トラベルグッズの棚に売られていた携帯スリッパ。

この外袋が、無地で大きさも適度な、これこそが探し求めていた「ちょっとした巾着袋」そのものだったのだ。

筆者は150円で携帯スリッパを買い、中身をタンスにしまい込んで外袋にミープルを入れた。

どうにか遊べる状態となったゲームを眺めて安堵しつつも、さながら窮屈に折りたたまれたスリッパがもとの形に戻ろうとするように、胸の中でどこか腑に落ちない感情が大きくなるのを感じていた。

ジャーニー・ゴーズ・オン

ここまでが、筆者がささやかな夢を叶えるために経ることとなった旅程である。

ひとまず目当ての巾着を買うことはできたものの、今後巾着が必要になるたび家にスリッパが増えるような事態はなるべく避けたいし、今後も「安定して無地の巾着を買う方法」を探し続ける所存だ。

この日本が、無地の巾着や、無地の巾着のような我々にとって居場所のある、あたたかな社会になることを願ってやまない。

■ロットが大きいとはいえ、Amazonで検索したら一瞬で見つかった。なんなんだ。

アメリカ人はベーコンにチョコを付けて食う(うまい)

噂には聞いていた。

アメリカでは、例えばフライドバターのような、日本人が想像もしなかったような料理が多くつくられること。

またアメリカではベーコンが2000年代から長らくブームになっており、ベーコングッズが作られ、またベーコンキャンプが開催されていること。

その中でさまざまな新作ベーコン料理が生まれ、ベーコンとソーセージをベーコンで包んだものベーコン味のウォッカベーコンをトッピングしたメープルシロップ味のドーナツなどが一定の支持を得ていること。

今回表題とした、ベーコンにチョコを付けたもの、すなわちチョコレートベーコンも、そういった料理の一つであるらしい。

数キロのベーコンを用意したり、酒税法にビクつきながらウォッカを扱ったりするような「フリーク向け」の料理にはちょっと手が出ないが、これなら日本のご家庭でも簡単に作れそうだ。

実際に作ってみたところ、これがことのほか美味しかったし、またチョコレートベーコンをより楽しめるバリエーションも発見したので共有させて頂きたい。

チョコレートベーコンの作り方

作り方、と仰々しく題してみたが、とくに変わった工程もなく、イメージから逸脱することはないだろう。

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ベーコンを炒めてかりっとさせ、

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その間にチョコレートを溶かしておく。

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ベーコンの両面にチョコレートを塗り付けたら、皿に盛る際汚くならないよう冷やし固める。

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触ってもベタつかないくらいになったら、品よく盛り付けて出来上がりだ。

――なんだろうなこれは。

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■どんな色調にすれば「映える」のかわからないので、モノクロにしてみた

作り始めた当初は「世間ではゲテモノみたいに言われてるけど、例えば『雪の宿』みたいに甘じょっぱいお菓子だと思えば悪くないんじゃないの?」と考えていたのだが、実物を目の前にすると途端に自信がなくなってきた。

部屋中に暖かいチョコレートとベーコンの臭いが充満しているのに、それらが同じ皿から発せられていることを脳が認識できないのは、かなり奇妙な感じだ。

見た目もなんか、見ようによっては「ゾンビの表面の、何かが着いたのか皮が剥げたのかもわからないぐじゅぐじゅした所」みたいだし。

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■なんとなくハイネケンを添えてはみたものの、これがおやつなのかツマミなのかも判然としない。

このような料理がまさか美味しいなどと、当時の自分は信じられなかったし、また読者の皆さんも同様だろうとは思うが、ここで改めて強調させて頂きたい。

チョコレートベーコンは美味いのだ。

チョコレートベーコンは美味い

口に入れてまず印象に残るのは、チョコレートの素直なコクと口当たりである。

その後チョコレートが体温で溶けるに従い、ベーコンの香りと塩気が驚くほど控えめに、しかし間違いなくベーコンのそれとわかる個性で顔を出してくる。

ベーコンは調理の過程でラードが抜けており、動物的な臭みはほとんどない。

本来あるべき油が抜けたカリカリのベーコンに、油分の塊ともいえるチョコレート(しかもその油は口当たりよく乳化している)がスッと入り込むようにして、両者はほどなく口の中で渾然一体となる。

結果、チョコレートベーコンは「あっさりとしてなめらかなベーコン」でありながら「甘味の引き立つ塩気と芳香を含んだチョコレート」ともいえる、驚くほど均整のとれた味わいを奏でるのだ。

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■今後も肉片の画像が続くので「よく手入れされた公園」の画像を見て目を休めておいて下さい

この料理には意外にも、一口食べたときの強烈なインパクトのようなものは存在しない。

ただ、その味をどうにか言語化しようとしている間に、二つ、三つと口に放り込んでしまう魅力を備えている。

端的に言えば「癖になる」のだ。

甘しょっぱくて癖になる、といえば、日本人になじみ深いのは「ハッピーターン」であろう。
あれを「甘いのにしょっぱくて気持ちが悪い」などと評する人はそう多くないはずで、チョコレートとベーコンの調和はまさにハッピーターンと同様だといえる。

しかもチョコレートベーコンは、ハッピーターンよりも明らかに低糖質で高たんぱく。ダイエットにも最適である。

更なるバリエーションの探求

結局のところ、最初に作った5枚のチョコレートベーコンは、用意したハイネケンを半分も飲まないうちに全て食べきってしまった。

缶の底に残ったビールを舐めている間も「薄いベーコンを使っているから、チョコレートを塗るのは片面でよかったな」などと考える始末で、恥ずかしながらすっかりハマってしまったと言わざるを得ない。

本場アメリカでは、チョコレートベーコンにさらにナッツなどのトッピングをする例もあるらしく、そちらもぜひ試したいところだ。

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そこで今回、この通り5種類のバリエーションを制作し、それぞれ食べ比べてみることにした。

初めてチョコレートベーコンを作った翌日のことである。

ミルクチョコ×アーモンド

まずは無難に、前例のあるレシピから試していきたい。

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■ちなみにここから、チョコレートを塗るのは片面だけとし、冷やし固める工程を省いている

さて、この定番ともいえる「ミルクチョコ×アーモンド」であるが、食べてみるとチョコとアーモンドががっちり手を取った結果ベーコンの味わいが引っ込んでおり「なんか変わったナッツが入ったうまいチョコ」くらいの趣になってしまった。

これが「定番」なのだとすると、チョコレートベーコンは本国において、ツマミではなくおやつとして受容されているのかもしれない。

  • おやつ度 ★★★★★
  • ツマミ度 ★★☆☆☆
  • 仕事中に食べたい度 ★★★★☆

ミルクチョコ×チーズ

とはいえ、個人的にはチョコレートベーコンの「ツマミ」としてのポテンシャルを高めていきたい。 そこで、冷蔵庫に眠っていたベビーチーズをのせてみることにした。

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ベーコンとチーズの取り合わせなら間違いなくツマミに寄るだろうと考えたが、思えばチョコレートとチーズを合わせたケーキなんていうものもあるし、どちらに転んでもおかしくない。

実際食べてみると、すべてが違和感なく混じりあった結果、おやつともツマミともつかない中庸でもったりした何かになってしまった。
例えるなら、ヤンキーとオタクで仲良くしているのが面白いコンビだったのに、間に陽気な男が入ったらただのありがちな仲良しにしか見えなくなっちゃったみたいな。伝われ。

ただ味が悪いわけではないので、例えばこのままクラッカーに乗せたら、いい意味で印象に残らない気の利いたオードブルになりそうだ。ナビスコのルヴァンにチーズとガナッシュをこんもり乗せて、ベーコンの小片をナナメに突き立てておく感じで。

  • おやつ度 ★★★☆☆
  • ツマミ度 ★★★☆☆
  • 沢口靖子にオススメ度 ★★★★★

ミルクチョコ×ブラックペッパー

ツマミとしてのチョコレートベーコンにすっかりハマっている自分としては、食べる前から勝利を確信していた取り合わせである。

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■ここまで読んだ皆さんにはどう見えるだろうか?

どうあれ筆者にできるのは、やはりこれこそが正解だったと皆に伝えることだけである。胡椒とベーコンの相性は言うまでもなく、チョコレート側も辛いものとタッグした実績(柿の種、タバスコ等)には事欠かない。

どの二者を切り取っても面白い上に、三人寄れば更に強い。さながらお笑いでいうところのネプチューンである。

黒い小瓶の一振りが、チョコレートベーコンを完全なるツマミに引き寄せるのだ。皆も知り合いのアメリカ人に教えてやって欲しい。

  • おやつ度 ★★★★☆
  • ツマミ度 ★★★★★★
  • 名倉潤さんの快復をお祈りしている度 ★★★★★

ミントチョコ

ベーコン料理としてはことのほかあっさりとしているチョコレートベーコンを、よりあっさりとさせるべく、清涼感のあるミントチョコを使用してみた。

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しかし食べてみると、いかんせんミントの主張が強すぎる。寝る前に歯を磨いていたら、歯間からさっき食べたベーコンのカスが出てきた、みたいな味だ。

冷やして食べれば、食感が変わったり香りが落ち着いたりして多少改善するかもしれないが、これ以上試す気にもならない。
ミントチョコに一切の非はなく、責められるべきは筆者の愚かさのみである。

  • おやつ度 ★☆☆☆☆
  • ツマミ度 ☆☆☆☆☆
  • 豚さんへの申し訳なさ ★★★★★

ミントチョコは普通に食べるに限る。

ホワイトチョコ

「チョコレートがベーコンの油を置き換える」という性質に注目し、より油分の強いホワイトチョコレートを使用してみた。

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■これまでとだいぶテクスチャが違うし、なんならマヨネーズに見える

ミルクの味に動物性の香りが足されたら、バターのような趣が出たりしないかと期待もしたのだが、どうもそういう感じではない。「寒い国には、こういう甘いシチューもあるのかな?」くらいの、悪くはないが褒めるところも見当たらない味だ。

ベーコンチョコレートにおいて、ミルクチョコの苦味って大事だったんだなと気づかされる。また普通のチョコレートベーコンと比べると油分の口に残る感覚が強く、自分がこれまで食べてきたチョコレートベーコンの危険性を強く認識させられる。

  • おやつ度 ★★★☆☆
  • ツマミ度 ★★☆☆☆
  • 翌朝の顔のテカり ★★★★☆

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■二日連続でチョコレートベーコンを食べたことにより、翌朝どころかその場で顔がテカテカになった筆者

チョコレートベーコンは美味い(2回目)

以上が、名作ベーコン料理ことチョコレートベーコンの紹介と、新たなバリエーション探求の記録である。

より大きく厚いベーコンでの制作や、イギリス式の作り方(チョコレートをベーコンで包んで焼く)など、まだまだ試したいことは多いのだが、ひとまずここまでで、皆さんにこの料理の魅力が伝わったなら幸いである。

少なくとも筆者はこれから、スーパーで4連に束ねられたハーフベーコンをすべてチョコレートベーコンとして消費するつもりだし、皆もぜひ、できれば今夜の晩酌から試してみてほしい。

合わせる飲み物は、ビール、バーボン、あるいはコーラなんかもいいだろう。

町田市の領土問題に、機械学習でケリをつける

機械学習というのがスゴいらしい。

具体的にあれこれ指示を出さなくても、データを与えればコンピュータが勝手に学習して、その結果囲碁やら将棋やらポーカーやらがめちゃめちゃ強くなったりするそうだ。

とても良い。 テクノロジーそのものへの興味もさることながら、なにより、コンピュータが勝手に学習してくれるなら、人間があんまり動かなくて良さそうなのが素晴らしい。

ゲームでプロに勝つような高度ものはともかく、もう少しシンプルな問題なら、chocoxinaでも機械学習を利用して解決できるんじゃないか。例えば町田市の領土問題とか。

step0. 町田市領土問題とは

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町田市といえば、東京都と神奈川県の境にあり、その所属について古くから議論の続く地域である。

歴史的な経緯から東京都に属するものだという意見もある一方で、東京の他地域とは丘によって隔てられており、また横浜・川崎・相模原との交流が盛んであるなどの事情から、近隣住民の間では当然神奈川県に帰属するものだという意見が主流だ。

法的には、前身となる町田村が1893年に神奈川から東京へ移管された旨が確認できるものの、20世紀の日本政府が町田と神奈川県相模原市をひとまとめに扱っている事例もみられ、いずれとも断定しかねる状態になっている。

そんな町田市について、機械学習の力を用いて東京か神奈川か判別しよう、というのが今回の趣旨である。

つまり、

  • 東京・神奈川の各市区町村の情報をコンピュータに放りこむ
  • コンピュータがそれらのデータを使って、各市区町村が東京か神奈川か判別する方法を、なんかイイカンジに学習する←ここが機械学習
  • かしこくなったコンピュータに町田市のデータを読み込ませると、いずれに属するか判定してくれる

という具合だ。

step1. 環境の構築、あるいはつまりchocoxinaはこれから何をしようとしているのか

※1 本記事は、機械学習の知識はおろか、30行以上のコードを書いた経験すらない人間が執筆しています。内容に大きな誤りを含む可能性があるので、半笑いでご覧ください。 ※2 そういうわけなので、内容についてご指摘頂いても、言葉の意味さえ分からない可能性が高いです。

今回は、機械学習に使われるモデルの中でも「サポートベクターマシン」と呼ばれるものを用いる。

ja.wikipedia.org

リンク先にはなにやら小難しい説明が並んでいるが、出てくる数式などについては筆者もビタイチ理解していないので、どうか安心してついて来ていただきたい。

他のサイトをもとにしながら、把握できた限りの内容をかいつまんで説明すると…

f:id:chocoxina:20190802230602p:plain 画像出典:左から http://hats.jp/https://www.irasutoya.com/http://oyj.co.jp/

例えば、お手元にある「音楽に強いもじゃもじゃ」が、パパイヤ鈴木なのか葉加瀬太郎なのか、機械学習によって判別したいとき。

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こういった、「正体」「ボリューム」「スピード」のわかっているデータサンプル(教師と呼ばれる)を読み込ませると、

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コンピュータが何らかの方法で、未知のデータを振り分ける基準となる線(二次元以上であることがほとんどなので「超平面」と呼ばれる)を引いてくれる。

あとはこうして出来た判別機に、未知のもじゃもじゃのスピードとボリュームを読み込ませれば、パパイヤ鈴木か葉加瀬太郎かわかる、というのが基本的な流れのだが、

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前述のサポートベクターマシンとやらはこの線を引く方法の一種で、引き方が他のモデルとくらべてかなりイイカンジ(境界の近くにあるデータから、なるべく距離を取って線を引くようにしている。グレーの矢印を参照)だということらしい。

へー。

※ちなみに、ちかごろプロ騎士やらプロポーカープレイヤーやらを倒すために使われている「深層学習」とやらは、上の図でいうところの「線を引く」操作がめちゃめちゃ難しい問題(入力が数値じゃなくて画像だったりとか)に対して、人間の脳を模した仕組みで何段階も計算をさせて挑む、というものらしいです。
上の例で言えば、例えばまずスピードだけを頼りに予想をし、外れる度に予想材料の中でスピードの比重を減らしていく、というようなことをしているっぽいんですが、正直よくわかりませんでした。

最近はインターネットにさまざまな情報がアップされているので、この程度しか理解していないchocoxinaでも機械学習に手を出すことができる。おかげで領土問題も解決するわけだし大変ありがたいことだ。

さて、サポートベクターマシン(略してサベマ)は、

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なんかすごいフリーソフトR言語の実行環境)に、別のなんかすごいやつ(e1071というパッケージ)をインストールすると簡単に実行できるようなので、試しにやってみよう。

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その筋では有名なirisデータとやら(アヤメの花150本について、ガクや花びらの大きさと品種名を一覧にしたもの)を用意し、

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1~149件目のデータをもとに150件目の品種を予想させてみると…

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あまりにもあっけなく正解が出てしまった。

動画でお見せできない(地味すぎるから)のが残念だが、プログラムを実行してから結果が出るまでわずか3秒ほどで、コードを書く時間を含めてもせいぜい10分程度のものだ。

機械学習とかいう仰々しいものが、こんなに簡単にできてしまっていいのだろうか。この調子でいけば俺も来月あたり羽生善治に勝てるぞ。

f:id:chocoxina:20190803171138j:plain アヤメはもう生えていなかったので、代わりに近所にあった色の似ている花をご覧ください。俺はこの花が何かも分からないのに、コンピュータを使えばアヤメの品種を見分けることができる。

step2. データの用意

ともかく、機械学習が存外にチョロい(言うまでもなく、先人達の多大なる努力の賜物です)ことが判明したので、今度は機械に読ませるデータを作成しよう。

ざっと調べた結果、政府の調べた各種統計情報が以下のサイトにまとまっていたので、ありがたく使わせていただく。

e-stat.go.jp

最初のうちは「どんなデータを読ませれば判別しやすくなるかな」などと考えながらデータを見繕っていたのだが、途中であまりの量にめんどくさくなってやめた。そういうのはコンピュータさんサイドで判断するべきだと思う

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最終的に、役所の緯度経度や人口、他の自治体に働きに出ている人の数やもろもろの施設数など、90件以上のデータを見境なく放り込んだ。

ところで、各市区町村の人口について、はじめは神奈川県のサイトから調べようとしていたのだが

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いらん空白とかがやたら入っていて使いにくい、いわゆる「ネ申エクセル」が出てきて軽くイラつきました。

f:id:chocoxina:20190804133944j:plain イラついた話で段落を終えるのも何なので、先ほどとはまた別の花をご覧ください。

step3. モデル(?)のチューニング(?)

さて、さきほどアヤメの品種を予想する際には省略したが、機械学習によってより高精度な結果を出すには、いくつかの設定をこちらで追加してやる必要がある。

具体的には

  • γ(ガンマ値):判別に使う平面をどのくらい複雑な形にするか(数値が少ないほど「ズバっとした感じ」で分類する)
  • C(コスト):学習時に、一見例外っぽいデータ(かなり速いのに葉加瀬太郎だったもじゃもじゃ等)をどのくらい考慮するか

以上の二つだ。

γとかいう難しい記号が見えて面食らった方もいるかも知れないが、もう二度と出さないので安心して読み進めてほしい。

ともかく、万一このあたりの調整を誤ると、例えば

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図抜けてスピードの低いもじゃもじゃをなぜかパパイヤ鈴木に分類したり、

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既存のデータを完璧に分類することにこだわり過ぎて、新しいデータに対応できなくなってしまったりする(いわゆる「過学習」というやつだ)

このあたりの、いわゆるハイパーパラメータ(かっこいい)を調整するのはきっと相当骨の折れる作業なのだろう、と覚悟していたのだが、

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ネットで見つけたコードを一行書いて一晩放っておいたら、勝手に最適な値を見つけてくれた。こういうのもコンピュータさんサイドで判断してくれるのか。

ちなみに、この値を用いて分類を行うと、正答率は80%強だとのこと。

機械学習の成果が必要とされるほとんどの場面では不十分な値だが、そもそも我々は町田の所属を高々5割の精度でしか判別できないのだから、あまり文句を付けないでほしい。 じゃあお前プロ棋士に勝てるのかよコンピュータは勝ってるんだぞ

step4. 本試験

道具もデータもそろったので、いよいよコンピュータに町田市領土問題を解決してもらおう。

最終的に、コードはこのような内容になった(むろん興味のない人は読まなくていいです)。

#パソコンさん向けの下準備
library(e1071)
setwd('/hoge/machida')

#データの読み込み
shikuchoson.data <- read.csv("shikuchoson.csv", fileEncoding = "UTF-8-BOM")

#データを町田とそれ以外に分ける
machida <- grep("町田市", shikuchoson.data$"市区町村")
test<- shikuchoson.data[machida,]
train <- shikuchoson.data[-machida,]

#町田以外の例を使って、データから都道府県を判定する方法を学習
shikuchoson.svm <- svm(都道府県~., data=train,type="C",gamma=0.00000001,cost=10000000)

#町田が東京か神奈川か判定する
(predict(shikuchoson.svm, test))

「学習」「判定」がそれぞれ一行で済んでいるのは何度見てもソワソワするというか、パンツを履き忘れたまま外に出てしまったみたいな落ち着かなさがある。

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ともかく、このコードをうやうやしく実行したところ

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5秒ほどで結果が出た。

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機械学習による分類の結果、町田は東京都であることが判明しました知ってた。

さいごに

以上、機械学習を用いた分類の結果、町田市は(80%以上の確率で)東京都であることがわかった。

みなさんが今後の人生でこの手の領土問題に遭遇したら、ぜひ当記事を紹介し、紛争の解決に役立てていただきたい。

正直「神奈川」って言ってくれたほうが美味しかったんだけど、どこを弄ればズルできるのかよくわかりませんでした。

また個人的には、その手の冗談を抜きにしても「いわゆる機械学習」に触れられたのは単純に収穫だったし、よりシンプルなデータが相手なら、自分でも実用的に使えるんじゃないか、という手ごたえが感じられた。

皆様も、例えば仕事で何らかの意見を求められたときなどに、この記事を参考にしながら適当な数字をPCに放り込めば「機械学習の結果によれば――」とか言って上司をビビらせられるはずだ。

ちなみに、今回のコードで筆者の生まれ故郷、東京都の東大和市について調べてみたところ

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神奈川県だとのことでした。コンピュータさんが言うからにはそうだったんだろうと思います。

以下、技術的(?)な考察

gamma=0.00000001,cost=10000000という設定ではおそらくかなり明快な超平面を引いてると思うんだけど、そのくらいハッキリした面が引けるデータなら、どこかに目視で見てもわかるような傾向があるのだろうか。少なくとも自分が試した限りは目がチカチカしてよくわかんなかったです。

この手の判別器はでかい数字に引っ張られる(意訳)というような話を聞いたことがあるので、たぶん「人口が多ければ東京都」みたいな雑な分け方をしていると思われます。

f:id:chocoxina:20190804142006j:plain 最後までお読みいただきありがとうございます。こちらは神奈川県東大和市にあった花です。