ドンキ歴20年の筆者が送る、ドン・キホーテで得するための5カ条と、得どころじゃなくなる5つの見所
気軽にショッピングもできないご時世である。
なんでも昨今は買い物を3日に一度程度に減らした方がいいとかで、「ちょっとコンビニ寄ってくる」程度のことも今や躊躇われる。
読者の皆様の中には、そんな生活様式に合わせた「たまの買い物」をなるべく効率よく済ませるべく、久々に大型のディスカウントストアに足を伸ばした、という方も多いことだろう。
さて、ディスカウントストアといえばドン・キホーテ、そしてドン・キホーテといえば筆者である。
小学生のころに初めてドンキを訪れ、中高時代は帰宅を遅らせるためにドンキに入り浸り、一人暮らしを初めてからは徒歩圏内のドンキに生活の大半を頼るようになった筆者が、ドンキ歴20年(推定)の知見をもって皆様に「ドン・キホーテを楽しく活用するコツ」をお伝えしよう。
世間では疫禍もいったん落ち着き、少しずつ生活を新たにしていく流れが見られる中、この記事はやや遅きに失した感もあるが、次回の買い出しからでもお役に立てていただければ幸いである。
第1条:ハデな定価に気をつけろ
筆者に言わせれば、商品の安さなどドンキの魅力のほんの一部に過ぎないのだが、ともあれ皆様がたまにディスカウントストアに行くときというのは、概して「それ」を求めるものだろう。
であれば、うずたかく積み上げられた商品や、過剰に装飾されたPOPに気圧されて「特段安くもないもの」を買ってしまうことのないよう注意が必要だ。
■有名なエナジードリンク。これだけの物量とPOPでアピールしているが、ほぼ定価である。
それが定価だろうが9割引きだろうが、価値に見合うと感じたなら遠慮なく買うべきではあるが、それはそれとして「買い物でトクをする」ことは、このご時世に気後れせず楽しめる貴重なレジャーの一つでもある。
そんな愉悦に影を落とすことのないよう、ドンキで買い物をするときはいつにも増して「定価」に気を配っていただきたい。
たとえば、売り場のいい位置に展開されている食料品に、「オススメ」「定番」など、特に価格に言及していないPOPばかりついているときは警戒すべきだ。
また経験上、新商品に「お試しプライス」というPOPがついているときはほぼ間違いなく定価販売なので、これだけでも覚えておいてほしい。
■「機能の話ばかりするときは定価」という見方もある
とはいえ、このように左上にある特価のZIMA缶と、右下にある定価のZIMAに同じ体裁の値札がついているような例もあり、POPの見かけだけでは安さを判断できないことも多い。ドン・キホーテはかように油断ならず、奥が深いのである。
第2条:「安さの理由」は一応見ておけ
ドンキの一部のPOPには「安さの理由」という欄があり、なぜその価格を実現できたのか説明されていることがある。
記憶が確かなら、この手のPOPが出始めたのは2010年前後で、恐らく当時メディア露出の増えていたオーケーストアの「オネストカード(安い分低品質な商品の問題点などを記載するPOP)」に影響を受けて始められたものだろう。
それはともかく、ドンキのPOPにおける「安さの理由」欄は実際のところほとんど形骸化しており、たいてい
いまひとつ理由になっていないことや
見ればわかるようなことが書かれている。
ただ時折
こういった感じで「まっとうな理由」が書かれていることもあり、そのような商品はかなり狙い目だ。
この欄をチェックしておけば、珍妙なPOPでクスリと笑うか、あるいはお得に買い物できるかのどちらかはほぼ保障されているわけだから、「安さの理由」はぜひとも確認しておくべきだろう。
■もはや安さに関する言及を放棄して、ただ商品説明をしている例(さらに文字が小さい)。「安さの理由」はそれだけでブログが一本書けるほど見ごたえがある
第3条:車を出た瞬間から油断するな
ドン・キホーテといえば、「圧縮陳列」と呼ばれるスタイルの売り場づくりが特徴的で、とにかくあらゆるところに商品が置かれている。
■たとえ柱の最上部であろうと、空いた面があるならそこで何かしら売る、というのが彼らのスタイルである。干物売り場にプリンやバナナの被り物が置いてある無茶苦茶さについて「おっ『食品合わせ』で来たか」くらいの気持ちで受け入れられればドンキ中級者だ。
その哲学は店内のみに収まるものではなく、ドンキでは大抵、店の軒先や駐車場の一部までもが売り場になっている。
仮にあなたが家族連れで買い出しに出かけたなら、車を降りたその瞬間からドンキの「圧」を感じることになるだろう。
それはつまり、さきほど紹介したような「派手な定価」などの罠について、店に到着したその瞬間から警戒しなければならないことを意味する。
■本来ナニ売り場でもない駐車場においては、全ての出会いが突然だ。ここを訪れる者は、突如遭遇した「着圧ソックス」などの相場を正しく判断する必要がある。
とくに店外の自販機は鬼門そのものであり、店内ならば十分ディスカウントされているはずの飲み物が「いやぁココだと手間とかもありますんで」みたいな顔をして、それなり程度の価格で売られていたりするのだ。
■「一般的な自販機」と比べれば十分良心的だが、3ケタ円のコーラで満足しているようではドンキ初心者のそしりを免れないだろう。
ドンキの駐車場に着いたら、たとえ子供がチャイルドシートの窮屈さにグズっていようとも、まずは深呼吸、と覚えておいて欲しい。
第4条:「この前TVで見たやつ」を買え
あのスーパーは野菜が安いだとか、この店は牛乳の品ぞろえがいいだとか、日常的に買い物をする方なら近所の店舗についていくらか知見があろうかと思うが、ドンキで品揃えがよく、さらに安いものといえば「この前テレビで見たやつ」だ。
ドン・キホーテではどういうわけか、テレビ通販でよく見かける感じの商品がかなり安いのである。
■もともと定価で売られることの少ないものではあるが、それを差し引いても安い
ドンキで見るものが、テレビ通販で見た商品そのものかどうか、いわゆる「ホンモノ」であるかどうかはその時々で異なるが、仮に類似品だったとしても、あなたがこれまで押し込めていた購買意欲を暴発させるには十分だろう。
「めっちゃ水を吸う雑巾」「48時間の断食中に飲むジュース」「正しく寝られる枕」などの事が頭に残って離れないなら、ぜひ一度ドンキを訪れてみてほしい。
かつての筆者のように「倒れるだけで腹筋運動ができるマシン」をすぐ粗大ゴミに出すことになろうとも、財布への打撃は小さく済むはずだ。
■「昼間にほのぼのドキュメンタリーを見ていたらいつの間にか宣伝される」ことでおなじみの青汁も、ドンキなら定期購入だの何だのといった複雑なシステムに巻き込まれず試すことができる。
第5条:インテリアの侵蝕に気をつけろ
大抵のドン・キホーテは、家具やインテリア用品も取り揃えている。
居場所のない小物を一手に引き受けてくれる「ちょっとした棚」などが安価に買えることもあり、筆者が独り暮らしを始めたときは大変お世話になったものだが…
ここで読者の皆様に注意しておきたいのは「あまりドンキの家具を買いすぎるな」ということである。
化粧板が「のべっ」とした風合いを見せる家具や、妙に毛足の長いラグやクッション、間に合わせのつもりで買った生活雑貨などなど、単体で見る分にはなんともないモノが複数集まると、ある時点から急に家が「ドンキ然」としてくるのだ。
■筆者の部屋の、ドンキで買った化粧板の家具が3種集まった一角。必要になる都度買う(買えてしまう)ので統一感がない。
■かつてドンキで安かったハンガー達が何種類もかかったつっぱり棒。奥には情熱価格(ドンキのプライベートブランド)の空き箱が見える。
もとよりインテリアにこだわりのある皆様には不要なアドバイスだったかも知れないが、生活のかなりの割合をドンキに捧げた人間の貴重な証言として、どうか心の片隅に留め置いてくれれば幸いである。
■ドンキを日常とすることは、すなわちこの真っ黄色のビニール袋を日常とすることである。部屋の「ガチャつき」は避けられない。
見所1:「わざわざ買いに行かないもの」を見ろ
さて、ここからは「得できるかできないか」という点にこだわらず、ドンキに行った際にぜひ気にしてほしいポイントについて紹介していこう。
ご存知の通りドン・キホーテはディスカウントストアであって、基本的には「ヨソでも売っているようなもの」ばかりを取り扱っている。
(いや、実のところドンキには「情熱価格」「RESTORATION」「ACTIVE GEAR」などのPB品があってこれらもなかなか魅力的なのだが、いったん脇に置いておこう)
そんなドンキの何よりの魅力といえば、なんといっても「わざわざ買いにはいかないもの」が一つの店舗にまとまっている点だろう。
たとえば、大抵の人が「たまに見つけたら買っちゃう」くらいの温度感で接しているであろう「ちょっと気の利いた輸入菓子」も、ドンキならよりどりみどりである。
■個人的なオススメは、キャドバリーデイリーミルクのフルーツ&ナッツというチョコレートバー。チョコの味が優しくてモリモリ食えるのだが、お察しの通りドンキでなくてもそこそこ売っている。
食品のほかにも、例えば夜の生活を豊かにするグッズなどは、たいていのドンキでそれなりの品ぞろえをほこっている。
■お子様も見ているかと思うので、画像にはモザイクをかけておきます。ドンキの周りに住む男子中高生は、皆ここで赤い筒を買うのだ。
あとはボードゲームなんかも、普通の人にとってはわざわざ買いに行く類のものではないだろうから、興味があるならドンキで買うのもいいだろう。
■ドンキのボードゲームはここ一二年で取扱数が3倍くらいになっており、ずっとゲームばかりやってる筆者もニッコリの品揃えである
今度ドンキに行ったら、ぜひ全ての売り場をめぐって「そういえば欲しかったもの」を見つけてほしい。
見所2:「ジャストボックス」の衝撃を思い出せ
ドン・キホーテに古くからある特徴的なシステムとして「ジャストボックス」というのがある。
現金で買い物をする際は、レジ横に置いてある1円玉を4円まで使ってよい、というサービスで、うまく活用すれば財布の小銭を減らすのに役に立つ。
近頃はカードやら電子マネーやらなんとかPayやらが普及して現金を使うことがめっきり減ったし、さらに近年ジャストボックスの利用には「お会計1000円以上から」という制限が課されて使いにくくもなったが、ともかく筆者としては今一度、このジャストボックスの衝撃を思い出してほしいのだ。
そこらへんに置いてある小銭を我が物顔で掴んで支払いに充てる、という体験は、ドンキ以外でそうそう味わえるものではないだろう。
また、もしあなたが未だ「ジャストボックス」を使ったことがないなら幸運である。
当時小学生だった筆者が、初めての買い物でおずおずと1円玉に手を伸ばしたときの、「本当にいいの?」という戸惑いを、今こそぜひ追体験していただきたい。
見所3:マイルドヤンキー文化を体感しろ
ドン・キホーテという店やその客層について、正直なところある種の偏見を抱いている、という方も少なくないことだろう。
であれば、たまのドンキめぐりの際にはいっそのこと、そういった「ドンキらしさ」を楽しむつもりで行くのも手だ。
ドンキの客層にある種の偏りが見られるのは事実であるし、そのつもりで商品を探せば、ラインナップからターゲティングの傾向を感じることができるだろう。
■これは数年前の夏、大久保のドンキで安い浴衣セットを買ったら、ホストクラブか大衆演劇でしか見ない材質のやつだったときの写真。
■「グレーのスウェット上下」を着て深夜にたむろしてみたかった皆様、その願いはドンキで叶えられます。筆者は日常的に着るようになってしまいました。
■実際にコトが起こらなければ書かれないタイプの、特殊な注意書きを見ることもできる。
見所4:品揃えを信じ、そして震えろ
例えば、ゲームのハードが不調で、分解清掃のために特殊なドライバーが必要になったとき。
ガスの通っていない家で土鍋をあたためることになって、電熱調理器が必要になったとき。
手作りお菓子を、急に七色に染めたくなったとき。
ネットの情報を頼りにイヤホンを改造していたら、「タバコと、熱収縮チューブと、セメダインスーパーX」がいっぺんに必要になったとき。
筆者はこれらの状況をすべてドンキで解決したことがある。
■すみません、電熱調理器のくだりはフィクションなんですが、これを見つけた衝撃を皆様にお伝えできればと思いまして。
あなたがもし「ナントカ成分が入ってるタイプのスプレー」であるとか「カー用品のなんちゃら配線をつなぐときのカバー」であるとか、専門外のもの、あるいはナニ売り場にあるのかさえ見当がつかないものを探すことになったら、まずはドンキに行ってみるといい。
ホームセンターのような、専門家による細やかなサポートには期待しにくいが、モノ自体がある確率はかなり高いはずだ。
見所5:インフラとしての覚悟を見ろ
ここまで紹介したとおり、ドン・キホーテにはおよそあらゆるものが売られているのだが、このご時世に「何でも売っている店」に赴くひとというのは、結局のところある特定のものを求めている。
筆者宅最寄りのドンキにも、ある時期からはマスク、アルコールスプレー、トイレットペーパー、塩素系漂白剤、その他もろもろを求める人が押し寄せ、土日ともなるとレジ待ちの行列が店内の1フロアをまるまる1周するほどになったこともあった。
■そんな客のために、在庫状況をわかりやすく展示しているホワイトボード
ドン・キホーテは、パーティーグッズとB級感と突っ込み所とマイルドヤンキーに満ちた猥雑なディスカウントストアであるが、そんなドンキが今日の日本において、近隣のインフラをその真っ黄色な体で支えていたことも、ここに報告しておきたい。
■おう、頑張ろうな
ボリューム満点激安ジャングルだぞ
以上「ドン・キホーテをお得に利用し、あるいは楽しむコツ」についてご紹介させていただいた。
未ださまざまな楽しみが制限されている昨今、この記事を活用してせめて買い出しくらいは楽しんでいただければ幸いである。
たいていの読者にとって、これまでドンキは「仕方なく行く店」だったかもしれないが…… 真っ黄色のPOPとおびただしい数の「呼び込みくん」、「圧縮陳列」と呼ばれる独自の売り場設計、そういったものを味わいながら買い物ができるある種のレジャー施設として、ドン・キホーテを「楽しみに行く店」と捉え直して頂けたなら、これほど嬉しいことはない。
ところで、ドン・キホーテといえば「ドンドンドン♪ドンキ♪ドンキホーテ♪」というご機嫌なテーマソングでお馴染みだが、実は近年、店内であの原曲が流れる機会はそう多くない。
今はインストアレンジやキラキラハウスREMIX、あるいは完全新曲の「Donki Mambo アイコトバ」など、様々なドンキソングが流れているので、次回お店に行った際はぜひそちらにも耳を傾けてほしい。
密になったら即終了!ソーシャルディスタンシングさんぽ
気づけば世界は大きく変わってしまった。
なにせここ数か月で「どうぶつの森」はNintendo Switchで発売された(たのしい)し、「FF7」は美麗なグラフィックでリメイクされた。
「HearthStone」では新たなキャラクターがリリース翌日に弱体化されるという異例のバランス調整があったし、バランス調整といえば我々の住む世界でも「プレイヤーの当たり判定」が大幅に強化された。
なんでも他プレイヤーと2m以内に近づいてしまうと、確率で詳細不明の状態異常を付与されるという噂で、このパッチの影響により現環境のtier11には、極力外出を控えて他人と距離を取る「ソーシャルディスタンシング戦略」が1強として収まることとなった。
もっとも、不要不急の外出を控えるべきだとはいえ、ジョギングのようなレベリング(運動)は心身のステータスを正常に保つためにも推奨されているようだが、そうは言ってもゲーマーたるもの、デバフ2を受け、または与える可能性は極力退けたいところである。
そこで、健康上のリスクを極力避けながらよりエキサイティングにレベリングを行うべく、このたび「ソーシャルディスタンシングさんぽ」というミニゲームを発案、実行したので皆様にご紹介したい。
ソーシャルディスタンシングさんぽのルール
まず以下に「ソーシャルディスタンシングさんぽ」のルールをまとめよう。
基本的には「人とすれ違うことさえ回避しながら、どこまで遠くへ行けるか挑戦しよう」という以上のものではないので、興味のない人は次の見出しまで読み飛ばしてくれて構わない。
- 自宅を出てから、帰宅後の手洗いうがいまでの一連の行動をセッションと称し、セッション中はルールに従ってより多くのポイントを獲得することを目指す
- セッションが帰宅によって正しく完了した場合、セッション中の道程における自宅から最も離れた1点を決定し、その点と自宅との距離(単位はm)をポイントとして獲得する
- 1回のセッションにおける最大の得点は1000ポイント(1km分)とする
- セッション中、以下の状態を「密」と呼び、密になった場合そのセッションでのポイントは0となる(セッションを直ちに終了し、それ以上の密をなるべく避けて速やかに帰宅、手洗いうがいを敢行すること)
- 路上において、歩行者、自転車、スケーターやそれに類するもの、窓を開けた車、バイカーなど、通行およびその他の目的で屋外にいる人間(以下エネミー)とすれ違うなどして、道の幅を下回る距離まで近づいた場合
- 自分が道でない屋外にいるとき、エネミーとの距離が、自分が最後にいた道の幅を下回った場合
- ただし、以下の場合については密ではないものとする
- 視認できていないエネミーが後方にいると疑われるが、対象との距離が離れ続けていると判断されるとき(背後を気にするあまり怪しい動きをして警察を呼ばれたら、交番でマジの密になってしまって困るので、すぐ離れられれば不問とするということ)
- 走行中または停止中の、窓やドアを開けていない自動車の中にいるエネミーとの接近
- またセッション中は密を避けるだけでなく、以下の規則に従うこと。
- 各セッションはなるべく、買い物以外の必要な外出を伴うかたちで行う
- セッションは不要不急でない運動を目的とするものだという本分に則り、運動をより効率的に行うべく、移動は原則5km/h前後の早歩きとする
- 自身およびエネミーの健康的、社会的リスクをいたずらに高めてはならない
本稿における「密」はルール上定義された状態以外の何物をも示さないこと、またこのルールに従ってゲームを行っても種々のリスクを避けられるとは限らないことなど、読者に注意を促したい点はいくつかあるが、こんな堅苦しいルール文章を読み切った皆様には無用のことだろう。
ともあれ以上のルールのもと、ソーシャルディスタンシングさんぽを実践していく。
Session1:恥辱の小路
■動画配信者のようなマスクと角度で失礼します。ゲーム開始直前の筆者です
このゲーム最大のセオリーは、なによりもエネミーの少ない時間帯にプレイすることである。
最初のセッションは平日の23時すぎ、ゴミ捨てに併せて行われた。
■あまりにも近所なので、念のためモザイク多めで失礼します
改めて人気(ひとけ)を気にしながら歩いていると、1~2か月前なら考えられないほど静かだ。
■住宅街のなかでも、とくに小さく細い道を選んで進んでいく。
ちなみに、このような曲がり角では、
まず道路の右端に立って進行方向を確認し、安全を確認してから曲がるとよい。FPSの基本である。
■このような狭い道ではただちに接敵する可能性こそ低いものの、交差点の見通しが悪いため注意が必要
ここまで道のりで200m。ある程度道を選んできたとはいえ、エネミーの気配さえ感じることなく進んでいる。
この長い直線を安全に超えられれば、かなりスコアが稼げそうだ。
しかしこのあたりで、画面奥、画像ではつぶれて見えないほどの距離に、なにか動く気配があった。
緊張が高まる。
心臓が絞りあげられるように縮み、次いで心拍が早くなるのを感じた。
このゲームに負けたところで、ただちに「何か」あるわけではないし、そもそも今回のルールは「何か」が極力起こらないように、かなり厳しく設定している。
今自分がしているのは「白線だけ踏んで家まで帰る遊び」の延長に過ぎないのに、何を恐れているのだろうか?
――早歩きのせいだけでないだろう、汗が額ににじむのを感じながら、右の小路に逃げ込む。
しかしここがT字路(画像だとわかりにくいが右にも道がある)。距離を稼ぐにはすぐ左に曲がりたいところだが、こちらにも人の気配があり右へ行かざるを得ない。
その先は、元来た道の脇を延々戻らされるばかりの細長い通りで、緊張によって歩調こそ早まっているが全くスコアは伸びていない状態。
先ほど賢しらに曲がり方を説明したあたりまで為す術もなく戻されたため、スコア稼ぎについては断念せざるを得ず、そのまま無念の帰宅となった。
■今回のおおまかな道のり。黒が行き、青が帰りとなっている
帰宅(と手洗いうがい)後にGoogleMapを使って今回のスコアを計測したところ479pt。10分そこそこしか歩いたとは思えないほどぐったりした。
ともあれ、最初のセッションを通して以下のようなことがわかった。
- 曲がり角の少ない道でエネミーに遭ったときや、角の向こうにエネミーの気配を感じたときの緊張感はすごい
- かなり「パックマン」の気持ちになれる。主観視点のパックマンってこんなに恐ろしいのか
- この状況でさらに早歩きによって心拍が上がっているため、帰るころにはかなりへとへとになる。有酸素運動としてはかなり効率的なのではないか
- 明るい道はエネミーを見つけやすいが、暗い道の方がエネミーが少ない。リスクとリターンのジレンマが生じている
- あまり通らない道を歩くことができるので、久々にかなり新鮮な気分になれた。普段いかに大きな通りばかり歩いているか思い知らされる
このお遊びのために余計に外に出るのはさすがに考え物だが、何かのついでの運動、兼気分転換としてはそれなり以上の効果がありそうだ。
Session2:白昼の暗殺者(アサシン)
さて、この記事を執筆中の現時点における「環境」3では、原則として夜間の外出を控える戦略が主流となっている。
夜間だからといって直ちに屋外におけるリスクが高まる、というわけでは恐らくなく、さまざまな社会的要素を鑑みての戦略だろうと思われるが… どうあれ今後の環境の変化に備え、昼間のセッションについても理解を深めておく必要があるだろう。
というわけで2度目のセッションは平日昼間、リモートワークの昼休み中に行われることになった。
急あつらえの仕事机に座り続けている腰をいたわるためにも、食後はオープンエアーで運動しておきたいところである。
同じ道から始めつつ、昨晩右へ曲がった道を今回は左へ曲がってみる。
画面奥のエネミーをやり過ごすため若干歩調を落して交差点へ。
歩いていて今日ほどカーブミラーをありがたいと思ったことはない。
そのまま直進すると、前方に別のエネミーを確認。
逃げ道はいくつか考えられたが、エネミーが右に曲がったのを確認してそのまま直進。
しかしエネミーが突如として元の道に戻ってきたため、ここで今回初の「密」。ゲーム終了である。
――茫然自失のなか、どうにか改めて状況を確認すると、このエネミーはどうやら各戸にポスティングを行っているようだった。
いったん視界から消えたのも道を曲がるためではなく、敷地奥のポストになにか投函しに行ったに過ぎなかった、というわけだ。
さて、今回はスコアこそ0ポイントとなってしまったが、いくつか新たな気づきを得ることができた。
- 昼は接敵の機会が増えるため、単純に難易度が上がる
- また暗闇でないぶん本能的な緊張感を欠くためか、集中を保ちにくい。ポスティングの動きにも本来なら気づけたはずだ
- 路上観察的な楽しみがあればいいなと思っていたが、到底そんな場合ではない
- 一瞬スコアがどうでもよくなるほど日差しが気持ちいい
あまり外に出てばかりいると思われても困るので、いったん次を最後のセッションとしよう。
Session3:焦燥の迷宮
最後のセッションは、少しでもスコアを伸ばせるよう万全の体制で挑みたいところ。
ここで今更だが、今回のマップについて確認しておこう。
画像左側と下側がかなりの大通りになっており、ここを渡るのは現実的でない。
今まではただ漫然と歩きまわっていたが、基本的にはマップ右上を目指すべきだろう。
時間については夜間のほうがよく、また予想外の接敵でプランを狂わされないためには、頓死のリスクを背負ってでも、より狭く、暗い道を歩く方がよさそうだ。
この辺りを踏まえつつ、前回のセッションから2日後、最後のセッションを決行した。
まずは先ほどのマップでいう上方向へ。ルールに記載はなかったが、今回猫との接触は密とはみなされない。
この辺りで右方向へシフトしたかったのだが…
行き止まりだったため逆戻り。令和の東京に行き止まりなんてあるのか。
その後どうにか別の道をマップ右方向に抜け、
突き当りを左折したところ。このまま直進してマップ上方向へ抜ける選択肢が見えてきたが、前方にはエネミーとコンビニが見えるため、まだなるべく右方向への道を模索したい。
そこでこの道を右折したところ、
結局もとの道に戻ってきてしまった。なんなんださっきから。
エネミーのみならず、まさか「道そのもの」にまで牙をむかれるとは思わなかった。小路を選ぶことのさらなるリスクに直面したかたちだ。
ともあれ、どうやらマップ上方向へ進んで距離を稼ぐしかないようだが…
接敵!!!(大変お疲れ様です)
ここで一旦脇道に退避。
しかるのち、意を決して直進したところ…
どうにか「関所」を超えることができた。
しばらく直進した後T字路に。ここで気力の限界(マジの息切れを発症)を感じたため、スコアを伸ばすことはあきらめて家路へ。
その後も、
エネミーをやりすごしたり、
再来の気配を感じて、モザイクの必要がなくなるほどカメラをブレさせたりしつつ、どうにか無事帰宅することができた。
■首を右に曲げて見てもらうと、今までの説明と方角が揃います
今回のポイントは455pt。初日と比べてかなり時間をかけたにも関わらず、ベストスコアを更新できなかった。
とはいえ、この日は疲労のおかげかめちゃめちゃぐっすり眠れたので、その点についてはよかったです。
さいごに
この遊びについては、どうしてもこう「みんなもやってみてね」とは言いにくいのだけれど、ともかくもこのご時世、ソーシャルディスタンシングさんぽそのものに限らず「こういう感じのこと」をやりながら、なるべく楽しく過ごしていけたらいいですね。
それでは、筆者は「どうぶつの森」に帰らなければならないのでこの辺で失礼します。ドレミちゃんも僕を待っているので。
自販機で買った金貨は、思わず粗末にしたくなる小ささ
一人暮らしを始めてしばらくしたころ、家に「梨」を買って帰った日のことをよく覚えている。
いつもは「スーパーの入り口でかごを拾い上げながら左手に構えるまでの一連の流れ」の中で通り過ぎてしまう果物売り場でふと足を停めたとき「そうか、果物を買ったっていいんだな」と天啓を受けたのだ。
その時買った梨は甘く瑞々しく、また人生に選択肢が増えた喜びも相まってひときわ美味く感じられたものだ。
さて、その手の気づきを久々に感じられたのが今年の秋頃のこと。
趣味で貨幣論について色々調べるなかで「金貨」のことを検索した折、検索結果に楽天へのリンクが並んでいるのを見て気づいたのだ。
「金貨って買えるんだな」
と。
フィクションや歴史上の存在だとばかり思っていた金貨だが、今でも投資対象として金を売るための「地金型金貨」というのが、毎年新たに発行され続けているとの事だった(他にもコレクターを対象にした「収集型金貨」というのもあるらしいが割愛)。
その後更に調べを進めたところ、東京には金貨を自販機で売る店があることや、大きさによっては我々プロレタリアートにも十分手の届く値段であることなどがわかった。いや、わかってしまった。
じゃあもう買えるじゃん、買おうかな、いざとなったら売れるんだし、というのが、本記事執筆に至る経緯である。
自販機で金貨を買う
金貨の自販機は、東京都は茅場町にある。 自販機とはいってもさすがに路上にポンと置かれているわけではなく、専門店の中に設置されている格好だ。
■左から、スパ用品店、弁当屋、貴金属店、コンビニ、というなんだかすごい並び
コンビニの隣「金銀の貯金箱」さんに入るとすぐ左手に件の自販機があり
おおむねタバコと同じ要領で金貨が並べられている。
これはぜったい普通の売り方ではないよな、とは思いつつも、考えてみれば筆者は、金貨というものが本来どのように売られるものなのかよく知らない。
ともかくもここに
札を入れて
ボタンを押すと
金貨の入った箱が出てくるわけだ。
ひととおりの手続きが終わると、自販機の下部からちゃりんちゃりんとお釣りの出る音がして、思わず乾いた笑いが出た。
今まで、金貨を買うぞ、といううやうやしい気持ちをどうにか保っていたのに、その音によって「完全にジュースと一緒じゃねえか」と緊張の糸が切られたようだった。
あはは。金貨買っちゃったぞ。
ところで、さきほど見た自販機の中に「ゴールドバー」という商品があったのだが…
■これ
考えてみればこれは「金の延べ棒」ではあるまいか。
この日もう少し財布に余裕があったなら、筆者は金貨のみならず金の延べ棒まで手にすることができたのだ。
金はすごい
さて、金貨をまじまじ眺めてみると、やはり美しい。
■後述する事情のため、かなり寄りの写真で失礼します
いかにもこれはいいものだぞという光沢をたたえており、またその科学的性質ゆえに今後数百年はその輝きを損なわないだろう。
ごく最近まで、多くの貨幣制度における裏付けとして利用されてきたのもうなずける話だ。
金地金の相場が今のところだいたい1gあたり5500円くらいなのに対し、この金貨がほぼ1万円。
金の塊を1gに分けて、キレイなカタチにして、これは確かに純度99.99%の金ですよと保証してこの謎のケースに入れるために、金そのものと同じくらいの値段がかかっているわけだ。
いいものを買ったな、と思う。
確かに思うのだが、どうもこいつ、それだけでは済まない気持ちを筆者にもたらすのである。
いいものではあるのだが
ここまで色々褒めてはみたが、実はこの金貨を買った当日のうちに、筆者は家の中でこれを紛失しかけている。
■そのときの様子
いきなり「成人男性の部屋の汚さのピーク」をお見せしてしまい恐縮だが、こうしてゴミやらなんやらの中に紛れてしまうと、さしもの金属光沢もその存在感を発揮することは難しい。
いかんせん小さすぎるのだ。
「金はグラム単価がめちゃめちゃ高い」「金は比重が重い」というそれぞれの事実は知識として知っていたが、「1万円の金貨は小指の爪くらいのサイズ」というのは正直想定しきれなかった。
なにせポケモン世代の筆者は「きんのたまは5000円」という強固なイメージをゲームフリーク社に植え付けられており、それゆえ1万円出せばもうすこし存在感のあるサイズのものが出てくるだろう、とどうしても期待してしまったのである。
■同じ1gでも、アルミニウム製の一円玉と比べるとその差は歴然
この金貨、取り出して縦に摘んだら「ぐにっ」と曲がりそうだし、そもそもこのケースがなければあっという間に無くしてしまいそうな感じだ。
■500円玉と一緒に並べてみると、もはやどちらがより価値のあるものなのかさっぱり分からない。
一応ケースに入っている分だけ無くしにくくなってはいるのだが、このケースは正直めちゃめちゃ高級感があるという感じでもなく、遠目には「レンタルビデオ屋の会員証」と大差ない。
またそもそも、自分がこれを自販機で買った、という事実が、どうしてもこう感慨の湧かなさというか、思い入れの入らなさに寄与している面もあるだろう。
金貨というのが本来どう買われるべきものなのかは分からないが、本当はもう少し勿体ぶった手続きを経て買われる物だったのではないか。そしたら、こちらにももう少し有り難みというか「大事にしよう」的な気持ちも湧いただろうというものである。
1gの金貨(しかも自販機で買ったやつ)というのは、美しくも粗末にしやすい、なかなかアンビバレントな存在だ。
むしろ積極的に粗末にしていく
自販機で買った金貨の「金貨だけどちゃちい」「小さいけど高級品」というアンビバレントについて、もうすこし深堀りしていこう。
■なんとなく、クタクタの下着と一緒に部屋干ししてみた
わー、金貨をパンツと一緒にしちゃってるよ、というヒヤヒヤする事実と、そこまで衝撃のない見た目とのギャップがすごい。
「金貨ってあの金貨だろ」「でも金貨って感じの金貨じゃないしな」という、語彙力ゼロの逡巡が脳内を満たす。
ちょっと不謹慎なことをしているのかもしれないし、或いは客観的にはなんの面白みもない写真かもしれない。読者の皆様には「どちらか」にしか見えないだろうか、あるいは、どちらとも断言できない落ち着かなさを筆者と共有して頂けるだろうか?
■トランプと一緒に輪ゴムで留められる金貨
ゲーム中にこの金貨が配られるよりも、エース2枚の方が嬉しい。
■「大掃除直前のガスレンジ」の上で、小さめのタッパーに入れられる金貨
このまま食器棚の奥に入れておいたらへそくりとして成立しそうである。
■デカビタの空き瓶感覚で自転車のカゴに入れられる金貨
自分の自転車がこうなっていたら、よく見ずに隣のカゴに金貨を捨ててしまうだろう(ゴミはゴミ箱に捨てましょう)。
■ローソンで買った金貨
見た目の高級感でいえば、1万円のiTunesカードといい勝負である。
■雨の団地に打ち捨てられる金貨
これまで金貨を見て「かわいそう」と思ったことありますか。
メリークリスマス・アンド・ア・ハッピーニューイヤー
なんだかんだ写真など撮っているうちに「買ったものをほとんど褒めていない」状態になってしまったが、「金貨を粗末にしたくなって、実際にする」というのはなかなかできることでもないし、その点ではまあ買ってよかったなと思う。
1万円出すだけの価値があるかは微妙なところだが、いざとなればそれなりの値段で売れるわけなので、そのあたりは深く考えないことにします。
それではみなさん良いお年を。
■金貨は財布に入れることにしました。金は縁起物、という説もあるそうです。