あなたの街にもたぶんある「違法荷札」のふしぎ
まずはこちらの画像をご覧いただきたい。
なんの変哲もない、路上の落書きである。
繁華街の薄暗い通りに大量に貼られ、景観を悪化させているおなじみのアレだ。
さて続いては、こちらの画像を見てみよう。
さきほどの画像と同じような落書きだが、なにか奇妙な数字が書かれている。
4桁区切り、都合12桁の数字が書かれたこのサイズの紙、というと、なにか察するところのある人もいるかもしれない。
続けてこちらの画像を見ていただければ、その気づきは確信に変わるだろう。
そう、ここまで紹介した画像はすべて(1枚目も含めて)宅急便の荷札が使われた落書きシールである。
実は、路上に貼られた落書きのうち決して少なくない割合が、これらのように荷札(ここでは宅急便類に貼られるシールの総称とする)で作られているのだ。
本稿は、こういったいわば「違法荷札」、およびそれらを貼って回っている「荷札族」とでも言うべき人々に関するレポートである。
違法荷札の定着について
さて、今回彼らを「荷札族」と呼称してはみたものの、違法荷札をボムる(路上にこの手のシールを貼って回ることを指す隠語)徒党というのは決して特定少数の集団ではない。
これから主に渋谷で見かけた違法荷札を紹介していくが、そんな狭い地域内でも描かれている意匠はさまざまで、個人あるいは団体の署名と思われる部分だけでも相当の種類がある。
また一口に荷札といっても、実際使われるものはバリエーション豊かだ。
下の壁なんかは、まるごと引っ剥がしてヤマトに持っていけば、そのまま発送してオフィスの隅に立てかけてもらえそうな充実ぶりだ。
「荷札族」と呼びうる人々は、すでに一定の広がりを見せていると考えるべきだろう。
違法荷札の発祥に関する考察1.模倣・カウンター・メタファー
さて、そもそも彼らはなぜ「荷札」を用いて自己表現を行うのだろう。こういったカルチャーは、どのような経緯で誕生したのだろうか。
自分がまず最初に立てた仮説は、なにか既存の文化におけるかっこよさを表現しているのではないか、というものである。
数年前、ヴェイパーウェイヴが流行したころに中野でテプラを用いた落書きが発生したように、荷札はなんらかのカルチャーと親和性が高いのかもしれない、と考えたのだ。
たとえば、荷札の中でも「配達日時指定」や「引っ越し用」のものは、古くから落書きによく使われるステッカーとやや意匠が似ていなくもない。
近いと言われればまあ近いかな、くらいの親和性ではあるが、たとえば昨年末の筆者が年越しそばをカップ焼きそばで済ませたことに比べれば、十分妥当な置き換えといえよう。
このくらいの差異ならばむしろ、"HELLO my name is"ステッカーに対するカウンターカルチャーとしても機能するかもしれない。
(ちなみに、"HELLO my name is"ステッカーはもともとアメリカのパーティで名札として使われるもので、そこから落書き用途に使われるようになったらしい)
またこの「ワレモノ注意」なんかも、単体で見る限りは「ワレモノ」をなにかの比喩と解釈する余地も見いだせなくはない。
無遠慮に法を冒して街を汚す徒党も、ガラスのように壊れやすい心の持ち主だったりするだろう。このくらいの矛盾は、我々がSNSで毎日見ている地獄と比べればかわいいものだ。
さて、実際のところ、これまで紹介した仮設はいずれも、冒頭で紹介したような「送り状」を使ったステッカーに意味を与えられていないことを認めなければならない。
これについて統一的に説明する仮説として、メッセンジャー文化との関連なども指摘できなくはないが、バイク便と宅急便を同一視するのはやや無理があるだろう。
そこで登場するのが次なる仮説、いわば「実用説」である。
違法荷札の発祥に関する考察2.実用説
そもそも荷札族が、どのようにして荷札を調達するのか、ということを考えてみる。
彼らを一旦若者であろうと仮定すると、学業などの傍ら、コンビニやドラッグストア、宅配業者などでバイトをしている例も少なくないだろう。
筆者の過去のバイト経験(コンビニ)を思い返すに、店内にあった宅急便の荷札は希望者に無料で渡してよいことになっていたし、とくに棚卸しの対象とはなっていなかったはずだ。
つまり、コンビニバイトやその友人にとって、荷札はきわめて「調達」が容易なのだ。
さきほど「一般的な落書きシール」として紹介した「HELLO my name is」ステッカーは、1ロット100枚前後が1000円少々。決して高いものではないが、それでもバイトで暮らす学生などにとっては手痛い出費だろう。
すぐ手の届くところに無料の素材があれば、代わりにそれを使ってしまえ、という発想はいかにもありそうだ。
また、宅急便のものとは異なるこの手の荷札は、もしかすると一部のオフィスや引越し業者で手に入るものかもしれない。
そうでなくても、ホームセンターあたりで1ロット20枚100円程度で手に入るため、「ふつう」のシールよりもうんと初期投資が少なくて済む。
こちらについても「入手のしやすさ」で説明ができそうだ。
遍在する違法荷札およびその見分け方
さて、仮説が立ったら次は検証である。
一番手っ取り早いのは、荷札族の「現場」を押さえるなどして当事者に話を聞くことだが、仮にも法に触れる行いをしているひとたちが、chocoxinaのようなよそ者に話を聞かせてくれるとは考えにくい。
実際、筆者もネットでかなり「当事者」に近い人物を見つけ、荷札族シーンについてメールで問い合わせたのだが、今のところ返信は得られていない。
ほかにも、chocoxinaの古い友人に、多少そちらのカルチャーに明るい者(元ストリートダンサー)がいるのでそちらのツテを頼ろうかとも考えたのだが、当人曰く
「ストリートカルチャーでちゃんと活動している人間は(世間における立場をわきまえているから)なるべく外では大人しくするのが身上で、仮に身内にタギング(シール貼り)をやっていた奴がいるとしても決して教えてくれないだろう」とのことだった。
となればこちらは、あくまでも観察に徹して傍証を集める必要がある。
もし違法荷札が、ある種の流行によってではなく実用上の理由で生まれたものならば。
それこそ人類史において、道具としての「火」が同時多発的に使われだしたように、渋谷以外の、文化的に隔たりがある地域でも同様に違法荷札が確認できるはずだ。
(むろん、広範囲で違法荷札が確認できる、というだけでは実用説の完全な裏付けとはならないが、「"HELLO My name is"ステッカーのカウンターとして荷札を使うような込み入ったコンテクストが、地域を超えて伝播した」などという説よりは蓋然性が高いと示すことにはなるだろう)
そう思って各所の繁華街に出向き、また近所に住む友人に協力を依頼したのだが、結論からいえば「あるわあるわ」であった。
笹塚・明大前
池袋
中野
秋葉原
もう「東京にある落書きシールのうち、3〜5パーセントは違法荷札」くらい言ってしまっても大きな間違いではなさそうだ。
これまでただの白いシールだと思って見ていたものも、いったん「違法荷札」について知った者の目にはその多くが「送り状」であることがわかる。
あの馴染み深いサイズ感に、印刷された数字やバーコード。上に貼ってあった伝票のノリが3辺に残る感じや、底面のノリが途切れている部分などに気をつければ、みなさんも近所で違法荷札を見つけることができるだろう。
また「枠付きのシールだと思ったら引っ越し用の伝票」というパターンについては数こそ少ないものの、その気で探せば送り状よりは気づきやすいはずだ。
今回の調査範囲は都内に限られているが、もし他県で荷札を見つけたらぜひ筆者に共有してほしい(Twitterのハッシュタグ #違法荷札 とかで)。
違法荷札文化の発展
さて、違法荷札がどのような経緯で発生したにせよ、数が増えればそれは流行となり、流行にはカウンターが生じる。
違法荷札界隈にも「ちょっと変わった荷札」を使う潮流が存在するのだ。
関税告知書である。おそらく日本郵便あたりで働かないと手に入らないだろうし、なんとなく、くすねたのがバレたらものすごく怒られそうな気がする。
クリーニングに使う荷札と思われる。宅急便のコンテクストから外れており「実用説」を補強する傍証としても見どころがある。(2月7日追記:こちら宅配業者が荷物をまとめて管理するためのカゴに貼り付けるタグだそうです。@masa_game_chさん情報提供ありがとうございます。)
USPS、すなわちアメリカ郵便公社の荷札である。いかにも入手困難そうな荷札は、他の荷札族からの羨望を受けること間違いなしだ(なお、本エントリに彼らの表現や思想の拡散に寄与する意図はないため、"思想"が感じられる部分にはその内容を問わずモザイク処理を施しているが、表記は日本語であった)。
韓国のものもある。日本で取扱いがあるとしたら日本郵便あたりだろうか? 上から書かれた意匠がハングル的でもあるため、観光客が貼っていった線も考慮せねばならないが、その場合「違法荷札は海外発祥で、ストリートキッズにとっては昔からの常識だ」という説も立ち上がってくる。
ちなみに、諸般の事情で公開は避けるが、現在国内で「グラフィティ(落書き)用途への転用を示唆しながら、主に国外向けに日本の荷札を販売するサイト」の存在も確認している。
おおもとの発祥が国内外のどこにあるかはともかく、日本では日本の違法荷札文化がすでに定着・成熟していることは間違いないだろう。
今後、日本の荷札を海外の路上で目にする可能性もありそうだ。
落書きは器物損壊や建造物損壊などの罪に問われる可能性があります
以上、東京都内の「違法荷札」事情について紹介させていただいた。
日本各地や国外での状況についても興味はつきないが、ともかく都内の広い範囲にわたって発生していることは確認できたので一段落とさせていただく。
今後も、彼らの自己表現に深入り・肩入れしない範囲で観察を続けていく所存だ。
2021年買ってよかったもの
昨年は夏頃から転職活動を始め、その過程でうっかりフリーランスになってしまった。
そういうわけで下期はブログで冗談を言う余裕もない状態だった(そろそろ再開したいですね)のだが、それはそれとして昨年買ってよかったものについて紹介したい。
以下それなりのアフィリエイトリンクが含まれます。
sphh jp
近頃ギークの間で話題の「自作キーボード」のキットだ。キーボードとして利用するには、以下のリンクから買えるもののほかにキーキャップ(文字が書いてある部分)とキースイッチ(文字通り各キーのスイッチとしての役割を担う部品)、および各種工具類が必要になる。
自作キーボードというと、よくメディアで取り沙汰されるのは指の移動距離を減らそうとした格子配列のモデルや、全てをホームポジションで完結させる超省スペースモデル、果ては宇宙海賊が管制室で叩いているような大仰なものなどが印象的だが、今回筆者が組んだのはより一般的な配列に近いキット。
エンジニアに人気のキーボードを踏襲しつつ左右分割型にして肩への負担を減らした、という設計思想だ。
筆者はキーボードを自作する、ということ自体への興味はさほどなかった(現に組立時ははんだ付けの苦労やその失敗による部品の破損等で楽しむどころではなかった)のだが、そもそも世の中には日本語配列の分割キーボードの選択肢がほとんどなく、自分がこのキットを買った当時は自作するか、あるいはメーカー終売品をメルカリで探すかする他なかったのだ。
そんな苦労はともかく組み上がってしまえば使い心地は見た目の通りで、自分の頼りないはんだ付けに物理的な力がかかるような場所も(ほとんど)なく、更には使われているファームウェアが意外と器用で、作る前に想定していた以上にキー配列の融通が効く。
とくに単押しと長押しに別の機能を持たせられる、というのが便利で、これを駆使して右手のホームポジションをカーソルキーだのテンキーだのに切り替えながら作業できるようになると、なるほど確かにこれらの機能を前提になるべくキーの少ないキーボードを組みたくなる気持ちもわからないではない、という気分になる。
(ところで、分割キーボードやそのキットを選ぶ際には、物理的なキー配列に注意すべきだろう。6,y,bキーは人によってどちらの指で取るかが異なる上に分割する場合どちらに置かれるかがモデルによってまちまちで、またsphh jpのように"特定の小型キーボード"を模したモデルはshiftキーの列が通常よりも若干左にズレているため慣れるまではミスタイプが増える)
ちなみに、キーキャップはCORSAIRのものを使っている。
日本語配列の記号が刻印されたキーキャップはそもそも選択肢があまり多くないのだが、これはLEDを透過させるために2色形成になっており、その分肉厚で重量が増すためか打ち心地がいい。
このキーキャップしかり、壊した部品の代替品しかり、これを組むために買ったはんだごてしかり、かかった総コストについては正直計算を始めると頭痛がしてくるレベルなのだが、それでも後悔はしていない。
MX Master 3
有り体に言うと、ロジクールが出している最強のマウス。価格は実売ベースでも13000円前後となかなか強気なものの、その分多機能なのがウリだ。
シリーズ三代目の本機はセンターホイールに独自の機構が採用されており、ホイールを無段階(なめらか)かつ高速に回すか、あるいは一般的なマウスのようにカリカリと段階的に回すか、というのを自動で制御できるようになっている。
基本的にはカリカリ言うモードにしたまま使用しつつも、ときおりweb記事を読んでいて末尾の脚注から本文に戻るときなどはホイールを強めに回せば自動で無段階モードに切り替わるため、ほぼ一瞬で長いページを縦横に移動することができる。
なによりこの制御が磁力で行われている、というのが嬉しいポイントで、物理的に動く部品が少ない分壊れにくさに期待できる。
仕事やプライベートにChromeを使っているとセンタークリックを使う機会が多いからか、普通のマウスを使っていると1年そこそこでホイールの挙動が怪しくなったりするのだが、それらと比べればMX Master 3はいくらか壊れにくいだろう。
もっとも、個人的に一番購入の後押しとなったのは握り心地の良さだ。数年前から手首の具合があまり良くないので、負担軽減のため、という名目で購入を思い切った感がある。
ちなみに、ここまで紹介したキーボードおよびマウスはオフィスで仕事をするとき(筆者はフリーランスとはいえ現状フルタイムで業務委託を受けておりそこそこの頻度で出勤する)にも持ち出しているのだが、これらをまとめて持ち出すのに一番ちょうどよかったのがこの商品。
キーボードとマウス、それにリストレスト等々の荷物を持ち運ぶには、一般的なガジェットポーチだと中が「平らすぎる」のだが、より「箱っぽい」フォルムでそれなりの耐衝撃性もあるバッグインバッグが必要な場合、これに限らずコスメボックスが有力な選択肢となるようだ。
ルックプラス バスタブクレンジング
「行けたら行く」「どこからでも切れます」に連なって日本にはびこる嘘として、風呂用洗剤が言う「こすらず落ちる」というのがある。
我々はもはや「それ」を指摘するのも馬鹿らしい、という諦念とともに日々バスタブをこすり続けててきた。つまり「こすらず落ちる」を「行けたら行く」よりも信用できない言葉として扱ってきた。
実際のところ、あれらの風呂用洗剤でも「風呂釜中を薬液の泡で覆い尽くす」くらいにたっぷりと使えば本当にこすらずに掃除ができるらしいのだが、あの小さなスプレーでそんなことに気を使うくらいならばこすってしまった方が早いのである。
ただこのルックプラス バスタブクレンジングは、スプレーが広口なためメーカーが想定した通りに泡を散布でき、かつ薬液も十分に強力なため、より現実的な手順で「こすらず落ちる」を実現している。
叶わぬはずの夢が叶う、という意味で、この商品は魔法のステッキや巨大ロボに匹敵する発明だと言えるだろう。
筆者の家はユニットバスでほとんど湯を張らないためその恩恵を十分に享受しているとは言いにくいが、友人が女性と同居していたころ「保湿成分だかなんだかでやたらヌルヌルしたボディソープだの入浴剤だのも落ちる」と言っていたので、割とハードな使用にも耐えそうだ。
バートル エアークラフト
(一応Amazonのリンクを貼ったが、サイトを選べばもう5000~10000円は安くなる)
近年は工事現場だけでなく真夏のイベント会場などで見かけるケースも増えた、いわゆる空調服(この呼び方は本来株式会社セフト研究所及び株式会社空調服の登録商標)である。
筆者は真夏の公園でディスクゴルフをする際によく利用したのだが、これがあるとないとでは疲労度がまったく違う。
汗がすぐ引く→汗の熱交換作用が十全に発揮される→体温が下がる上に必要以上の汗をかかない→体力の消耗が減る
というわけだ。
「暑い日も涼しくなる」といったたぐいの魔法の道具でないことにはご留意いただきたいが、暑い日の屋外に長く居る予定があるなら大きな恩恵を受けられるだろう。
またこの手の商品の中でもバートルのものは比較的洒脱な見た目のモデルが多く、その気になれば「ワークスタイル」の範疇でまあまあこなれた感じに着こなすこともできるはずだ。
さて、バートルはこのエアークラフトと同じバッテリーを使った冬用のヒーターベスト「サーモクラフト」というのも出しているのだが、こちらは万人におすすめできるかというと微妙なところ。
スイッチを入れれば直ちに用を為す扇風機とは違って、ヒーターは電源ONから十分な暖かさに至るまでやや時間がかかるため、スポーツなどの用途で使うには温度調整がしにくい欠点が目立つのだ。
シカキュア クラッシュジェリーウォッシュ
洗顔料である。その名の通り(?)泡ではなくこんにゃくの細かい粒子で汚れを絡め取るようにして洗うようになっている。
これで顔を洗うと、汚れは残っていない、妙な保湿成分が膜を張る感じもない、かといって肌のつっぱりもない、という、かなり「ニュートラル」な状態になる。最初に使ったときは、ここ10年どころか20年味わっていなかった感覚に思わず顔がほころんだ。
「肌がニュートラルだとウケる」というエンタメを体感するためだけにも一度試す価値があるだろう。
この製品の唯一の難点は値段で、同じ容量のダヴの洗顔料と比べると実売価格が5倍はくだらない。さらに一回あたりの使用量もざっと3~4倍なので、常用するには通常の20倍というコストが重くのしかかる。 そのためchocoxinaも購入当初は数日に一度のみの使用に止めていたのだが、段々と使用頻度が上がっておりそろそろ甘んじて乗り換える覚悟を決めるべきかもしれない。
ソーダストリームGenesis
おなじみ、水を炭酸水にする機械である。
それが良いとか悪いとかいう話は一旦置いておいて、筆者は近頃酒ばかり飲んでいるもので、買って以降は想像以上にヘビーに活用している。
購入を検討している人にとって気になるのはランニングコストだろうが、こちらはざっと計算すると「ディスカウントストアでちゃんと安い炭酸水を買う」のと比べるとせいぜい若干安い程度。 それでは初期投資を回収するのがかなり大変そうだが、ソーダストリームの利点というのはランニングコストよりも、購入や輸送の手間を低減し、また何をさしおいてもゴミを減らせる点にある。
ゴミが減るということはすなわち、大量の空のボトルを一週間部屋に保持しなくていいということでもあるし、朝早くにガラガラ言わせながらそのボトルを捨てに出なくていいということでもあるのだ。
パーカー インジェニュイティ
ボールペンでも万年筆でもない新たなペン先、という触れ込みで売られているパーカーの「5thテクノロジー」を搭載したペンだ。
質のいいサインペンのような機構と万年筆のような「しなり」を兼ね備えており、撫でるような筆圧で、紙との摩擦をほぼ感じさせない書き心地が味わえる。
またペン先の感想などにも強く、万年筆と比べると管理が楽なのもポイントだ。
発売当初デパートで試し書きをして以降ずっと憧れていた商品なのだが、先日メルカリで中古美品がめちゃくちゃな安値になっているのを見つけてとうとう購入してしまった。
(ちなみに、メルカリで安価な商品を見つけるコツはキーワードを絞らずに検索することだ。これは出品者が型番などの細かい情報を知らない可能性を考慮したもので、同様の理由であえて間違った綴りで検索すると売れ残りが見つかる場合がある)
とはいえ普通に買うにはいささか高値がすぎるペンだと思うので、普段遣いならば仕組みはほぼ同等ながらより安価な「IM」シリーズあたりを検討すべきだろう。
Amazon | PARKER パーカー 5th IM ブルーCT 2073225 正規輸入品 | 文房具・オフィス用品 | 文房具・オフィス用品
またこの5thテクノロジーを搭載したペンはインクが切れたら専用のリフィルを交換することになるのだが、これが実売ベースでも700~800円程度はするためランニングコストにやや不安がある。
筆者は普段あまりペンを使わない(その分たまに使うときはテンションを上げたい)タイプなので特に問題を感じていないが、普段からアナログ手帳でがっつり予定を管理するタイプの人には不向きかもしれない。
さいごに
ここまでの内容とはあまり関係ありませんが、ちかごろnoteで日記を書いています。
本年もchocoxinaをよろしくお願いいたします。お仕事も募集しております。
かつて俺達にとってセブンティーンアイスの棒は勇者の剣だったし、大人はそれを具現化することができる
セブンティーンアイスが好きだ。
そのユニークな形とカラフルさは、ボウリング場やショッピングモールなど、幼少期の楽しい思い出と結びついている。
そこかしこにあるわけではない辺りが絶妙にありがたみを感じさせて、大人になった今も、自販機を見つける度ついつい小銭を入れてしまう。
とくに好きなのがこの形のアイスで、幼少期からチョコミントの味はもとより、その持ち手である棒の部分にも強く心惹かれた。
子供の手にちょうどよい長さと、アイスを支える円い土台。
小学生男子からすれば、食べ進めた先に「剣(つるぎ)」があると信じずにおれない形だった。
とはいえ実際のところ、この棒の先端は「剣」と呼ぶにはあまりにも短すぎる。
それでも筆者はセブンティーンアイスを食べるたび、この鍔の向こうに長く伸びる刀身を想像しながら、棒を振り回したものだった。
そう、ちょうどこんな風に――
――我と契りを結ぶか、定命の者。
何の声だ?
――「真白き依り代の剣」を掲げ、我を呼び覚ます者よ。今こそ共に戦おう。
――我が名はヴァニラゴン。剣に力を与え、主の器を量る者なり。
――残る十と六振の剣をその手に納め、「見定める十七の龍(セブンティーン・アイズ)」に己が強さを示さば、我らは龍が力を以て、あらゆる望みを叶えよう。
――さあ、我を手に、すべての剣士を倒すのだ。定命の者。
さて、ひとしきり遊んで満足したので、以降はこの「ヴァニラゴンの剣」を作って子供の頃の夢を叶える方法について、皆様に紹介しよう。
作業環境
剣の制作には、この3Dプリンターを使った。
3Dプリンターというと、カッターマットのような土台の上をノズルが縦横に走り、熱したプラスチックを盛り付けていくようなタイプ(熱溶解積層方式)を想像する方も多いかと思うが、今回筆者が購入したのは、それとは異なる光造形式と呼ばれるもの。
(一般に想像されるであろう3Dプリンターの例)
(今回使うものと同じ方式のもの。購入当時2万円ほど)
熱溶解積層方式と比べると、手のかかる素材しか扱えない代わりにより高精細に出力できる特徴があり、ここ数年でかなり安くなってきたらしい。
――などと知ったような口をきいているが、自分もフォロワーに教えてもらうまでこの方式の存在さえ知らなかったことを告白しよう。
いつか買おうと思って「あとで買う」に入れっぱなしの3Dプリンタです。ツイッター見る限りでは評判もよく、エントリーモデルとしてはよさそう。 https://t.co/5bew5sp6sv
— よーげ (@youges) 2021年6月16日
ともあれ、この機械に後述の方法で作ったデータを読み込ませると、
(ちょっと見にくいが)こんな感じで、黒い釣り天井からぶら下がるようにしてモデルが引き上げられてくる。
マシンの下に、紫外線で固まる液体(ネイルやアクセサリ作りに使うレジンのようなもの)が溜まっていて、その底からUVライトを当ててコンマ数ミリ厚の層を作り、それを何層も積み重ねて立体にするのだ。
3DCADを用いた刀身モデルデータの制作
さて、問題の3Dデータだが、基本的には3DCADと呼ばれるソフトで作っていくことになる。
有名なところだと「Fusion 360」というソフトウェアが、商用レベルの性能を備えながら、個人・非商用ならば無料で利用でき、日本語の情報も多く使いやすい。
https://www.autodesk.co.jp/products/fusion-360/overview?term=1-YEAR
作業手順としては、Adobe Illustratorみたいな感じで描いた図形を高さ方向に引き延ばしたり、別の図形でくりぬいたり、あるいは逆に組み合わせたりして目的とする形をつくっていく感じだ(粘土をこねるようにして作る機能もあるらしい)。
ところで、筆者がヴァニラゴンの剣を着想する前に作った剣がこちら。今回の一連の作業において「己の中の男子小学生を呼び覚まし、真にカッコイイ剣を思い描くこと」こそが一番の困難だったと付記しておこう。
もっとも一度呼び覚まされてしまえば、小学生の心は遠慮を知らないもので、本制作にあたっては、ついでに起こされた「中学生時代の筆者」との熾烈なプレゼン合戦がありました。
配布される3D素材の利用と再加工
さて、3DCADの操作をざっと習得し、さらに心の中の男子小学生との対話を済ませたところで、さきほどの刀身には「ドラゴン」が足りないと結論するに至った。
しかし、今の知識で画像をこねこねしながらドラゴンを作っても「かつての筆者」の欲求を満たすクオリティが出せそうにないため、ここは既製のデータを使うことにしよう。 3Dプリンター用のデータをアップロード・ダウンロードできるサイトはいくつかあるが、どうやら見た限り最大手はこのhttps://www.thingiverse.com/。
サイト内を"dragon"で検索して出てきた、こちらのかっこいいドラゴンを使わせていただく。
https://www.thingiverse.com/thing:27666
各データにはクリエイティブコモンズライセンスが表示されているので、商用利用や再配布の可否などを確認しつつダウンロードするのだが… このサイトにアップされているデータについては、しばしばアップロード者が著作権者とイコールでない場合があり、例えば今回のドラゴンの場合出典がスタンフォード大学のサイト(http://graphics.stanford.edu/data/3Dscanrep/)となっていたりするので注意が必要だ。
大学側が再配布を許可しているのが確認できたので今回はありがたく使わせていただいたが、このサイトではしばしば明らかに権利を持っていないユーザーが堂々と版権モノのデータをアップしていたりするので、扱いに十分気を付けてほしい。
ともあれこうして無事ドラゴンのデータをゲットできたわけだが、実は世に公開されている3Dプリント用のデータは.stlという形式で配布されており、これが見たところ後から編集することを想定していないものらしい。
さきほど紹介したFusion360でも、通常の方法では配布されたデータの編集ができないようだった。
3Dプリンターを購入した人はしばしば「自分でデータを作れなくても世の中にあるデータを印刷するだけで十分活用できる」と述べるが、そこからちょっと踏み込んでデータを自分用にアレンジする際にはこういった困難があることも覚えておくべきだろう。
ちなみにざっと調べたところ、Fusion360と同じ会社が公開しているhttps://tinkercad.comという子供向けのクラウドサービスでは、なぜか既存のデータに部品を組み合わせたり穴を開けたりといった作業がカンタンに行えることがわかり、
めでたくこうして、ドラゴンに剣の形の穴を空け、成形後に組み合わせられるよう改造することができた(ちなみに筆者は穴のサイズを剣とぴったり同じにしてしまったせいで、後でヤスリがけをして穴を拡げる必要に迫られました)。
プリント用データへの変換
さて、こうして作成したモデルをプリンターに読ませるには、いちど「スライサー」と呼ばれるソフトウェアで加工してやる必要がある。
このような感じで作業領域にそれぞれのデータを配置したり、適宜台座や支柱を補ったりといった作業ののち、3Dデータを無数の断面に分割して、プリンターが印刷しやすいようお膳立てをしてやるわけだ(右にある小さな板は今回の剣とは関係ない制作物の部品。高さの大きいデータは出力に時間がかかり、これなどは九時間近く必要になるので、なるべくいろいろ一度に印刷してしまいたいのだ)。
ちなみに筆者は無数の支柱がついたドラゴンを見て、「ザウスみたいだな」と思ったんですが、今の10~20代には通用しないらしいです(画像出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%89%E3%82%89%E3%81%BD%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%A0SSAWS)。
ともあれこんな感じに処理したデータをプリンターに読ませて数時間待てば、さきほど見たように、さながら釣り天井にぶらさがるような形で部品が出力される。
あとは支柱を取り除いて、しかるべき方法1で表面に残った液体レジンを洗浄したのち、UVライトを当てて完全に硬化させる「二次硬化」を行えば作業終了だ。
ここに至るまでには、記載の作業以外にも初期セットアップやテストプリントで機械や素材の機嫌をとったりする必要はなるが、それらを含めてもだいたいプリンター購入から1週間ほどで、あなたもドラゴンの付いたメチャクソにカッコイイ剣をセブンティーンアイスの棒に顕現させることができるはずだ。
さいごに
今回、文明の利器こと3Dプリンターを使うことによって、積年の夢を叶えることができた。
プリンターがあれば、こういったおもちゃを作る以外にも、特定の小物をぴったり納めるケースや、デスクの厚みに合わせたフックなどを簡単に作れるので、多少なりとも興味があればぜひ買ってしまうのをお勧めする。
記事中にはAmazonのアフィリエイトリンクを貼り付けているが、例えばこの代理店https://skhonpo.com/はサイト内に情報が充実していて頼りになりそうだし、こちらを頼るのもいいだろう。
ちなみにこうしている今も、筆者の中の男子小学生が「チャッカマンをライフル銃にしたやつ」を作れとうるさいので、いずれ当ブログでそちらをご紹介できる機会もあるかもしれない。
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主にイソプロピルアルコールなどを使う。筆者は水洗い可能な素材を使用しているが、それでも廃液は下水に流せず、やや手間がかかるため注意。↩