chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

山奥のロッジにボードゲームマニアを集めると起こる7つのこと

ボードゲームがえらく流行っている。

都市部には、数年前には存在すらしなかった「ボードゲームカフェ」なる店が林立し、遊ぶ機会と場所には困らない状態になった。

またマスメディアでそれらのカフェやゲームが取り上げられる機会も、ここ何年かで大幅に増えたように思う。

読者の中にも、友人と何らかの機会で「カタカナ語を日本語だけで説明するゲーム」や「ゴキブリなどの害虫カードを押し付けるゲーム」あたりをプレイしたことのある人もいるかも知れない。

ところで、どんな趣味の世界にもマニアというのはいるものである。
いま世間でこうして「目新しいコミュニケーションツール」くらいの温度感で受容されているこのボードゲームにさえ、ものすごい勢いでのめり込んでいる人々というのが(筆者を含めて)少なからずいるのだ。

先日筆者は、そんなマニア25人がつどう「ボードゲーム合宿」なる催しに参加する機会に恵まれた。

ボードゲー厶マニアを25人集めて山奥のロッジに閉じ込め、2泊3日過ごそうというイベント、一体どんなことになるのだろうか。

最高のボードゲームを決める品評会に、一人前のプレイヤーになるための過酷なトレーニング、ボードゲーム業界の未来に関する激論や、それらに起因した凄惨な密室殺人――まではさすがに起きていないが、ともかく山奥にマニア達を閉じ込めた結果何が起きたのか、以下にレポートを記すのでご覧頂きたい。

f:id:chocoxina:20190226182229j:plain

ところで合宿の舞台となったロッジがこちら。
もとより都会的な娯楽に乏しい立地な上、さらに1日目は雪に見舞われたため屋外アクティビティも大幅に制限されていのだが、どのみち参加者の大半は室内にこもってボードゲームをするため大した問題ではなかった。

その1.やたら時間のかかるゲームが遊ばれる

今回の合宿はなにせ2泊3日、寝食を犠牲にすれば40h以上の時間があるので、プレイ時間が長すぎて普段なら敬遠されるようなゲーム(そしてそれ故にマニア以外は購入しないようなゲーム)がいくつもプレイされる。

普段テレビの中やカフェで行われるようなゲームはだいたい1プレイ30分、ちょっと戦略性を求められるものでも1時間少々といったところだろう。

しかしこれから紹介するのは、そういったメジャーなゲームを箱から出して、プレイして、片付け終わるまでの間に、ルール説明さえ終わっていないようなレベルの代物だ。

■1846 f:id:chocoxina:20190226001235j:plain

1846年ごろのアメリカ中西部で、鉄道会社の社長として各地に線路を敷き、列車を運行して収益を獲得し、あるいは他プレイヤーによって同様に運営される会社の株を購入して、個人としての総資産を競うゲーム。

スムーズにプレイしても1戦4時間はかかるのだが、にわかには信じがたいこととして「この手のゲームの中では破格の短さ」という識者からの意見があったことも併せて紹介しておこう(世の中には"18系"と呼ばれる鉄道ゲームが数多く存在し、ものによっては丸1日、24時間かかることさえあるのだ)。

「鉄道会社の運営」にまつわるさまざまな要素がゲーム化されているため非常に複雑なプレイを要求されるのだが、ゲーム中は、勝敗争いから脱落する危機を何度も乗り越えながら、新型鉄道や停車駅の確保、あるいは仕手戦めいた株式のやりとりに精を出しっぱなしになるため、4時間というのは案外あっという間である。

■Age Of Reneissance f:id:chocoxina:20190226142945j:plain

こちらはルネサンス時代のヨーロッパにおいて、各商業都市の元首となり、交易や植民支配によって財を成すゲーム。

現実世界よろしく各国の思惑が複雑に絡み合い、それこそ1つの時代を戦い抜くような体験をもたらすはずのゲームではあるのだが、食事や入浴の休憩を都合3回挟んで通算15時間、というプレイの後は、さすがに参加者も疲労困憊の様子だった。

その2.さまざまな事情で普段できないゲームも遊ばれる

■Dungeon Fighter f:id:chocoxina:20190226002301j:plain

この「ダンジョンファイター」は、襲ってくるモンスターを攻撃するためにダイスを的に投げ入れる、というアクションを主軸に、プレイヤー全員で協力してダンジョンの最深部を目指すゲーム。

特殊な能力を用いてくる敵モンスター、あるいは扱いにコツが要る武器・魔法といったものものは、このゲームにおいてほぼすべて「ダイスロールに条件を追加する」といったかたちで再現されている。

よってゲームが進むと

f:id:chocoxina:20190226002327j:plain

「隣のプレイヤーの手に乗せたダイスを、利き手を使わず吐息で飛ばし、以て的の外で一度バウンドさせたのちに的のしかるべき領域に転がし入れる」といった複雑怪奇なゲームプレイを要求されることになる。

他にも、このゲームのプレイ中には

  • 自身が「コロコロ法」と名付ける独自の投てきメソッドを編み出し、ダイスを盤面にバチバチとぶつけながら練習に励む者
  • 的を大きくはずれて他のテーブルの下に転がりゆくダイスを追いかけながら「(出目を見るので)拾わないで!」と叫ぶ者
  • 半回転ジャンプをしながらの投てきを要求されたものの、そもそも半回転ジャンプがおぼつかず大いにバタつく者

などなど奇行に走るプレイヤーが続出するため、世間の目があるボードゲームカフェなどでのプレイは困難を極める。

それこそ、理解ある者のみを集めて山奥のロッジを借りたりしなければプレイできないゲームだ。

ちなみに、このゲームは1日目の夜0時またぎで行われている。
ボードゲーマーというのは、愉快なゲームを前にすると興奮して、頭どころか身体まで動かしたくなる習性があるのだ。

f:id:chocoxina:20190226002348j:plain ちなみに、最初に取り上げた画像は「手の甲に乗せたダイスを指一本で弾き、例によって机にバウンドさせた上で的に入れなければならない左のプレイヤーと、『大地の神』の力で的を動かす権利を得た右プレイヤーが協力しているところ」である。

■Hossa(画像はboardgamegeekより) f:id:chocoxina:20190226003112j:plain

そしてこちらは、お題のワードを含んだ歌を歌い、あるいは人の歌に乗っかることで得られる得点を競うゲーム。

言うまでもなく、ボードゲームカフェや友人のアパートなどでプレイすると周りに多大な迷惑がかかるので、プレイ機会は相当に限られる。

まして夜の27時頃にプレイしたくなったとあれば尚更である。

その3.灯油が切れる

f:id:chocoxina:20190226003625j:plain

先に紹介した通り参加者が軒並み夜ふかしばっかりするせいで、管理者の想定を超える灯油が消費された。
(利用しているロッジは県立の施設であり、もともとは青少年のクラブ活動等による健全な利用が想定されている)

画像は主催のShun.さんが、自分のゲームを中断してストーブに灯油を注いでくれているところです。いつもありがとうございます。

その4.逆に伝統ゲームもやる

アナログゲーマーのコミュニティにおいて、ルールによって面白さの生じる遊びは等しく歓迎される。

■トランプ(ルール不詳) f:id:chocoxina:20190226003713j:plain

一見どこでもできそうなトランプゲームでさえ、面白ければプレイを厭わないのだ。

あと、ひょっとしたらご存知ない方もいるかも知れないが…

■ドミノ(ルール:ファイブアップ) f:id:chocoxina:20190226003738j:plain

よく広い室内でぱたぱたと倒して遊ばれがちなドミノという遊具は、こうして並べて遊ぶこともできる。
というか、こちらが本来の遊び方である。

ドミノの駒は左右それぞれに0〜6(あるいはそれ以上)の数字が書かれていて、同じ組み合わせのものは存在しない、という構成になっており、この特徴を活かした遊びが数十種存在するのだ。

f:id:chocoxina:20190226004021j:plain あと、普通に健康麻雀もやりました。

その5.本当にまったく意味のわからないゲームもやる

突然だが、皆様は「漫画会」という集いについてご存知だろうか?

chocoxinaは寡聞にして存じ上げなかったのだが、世の中にはその「漫画会」をモチーフにしたボードゲームというのが存在する。

■Manga Kai f:id:chocoxina:20190226004142j:plain f:id:chocoxina:20190226004158j:plain

他の参加者とリアルタイムに交渉しながら「WakuWaku」「PikaPika」「JiroJiro」などのオノマトペが書かれたカードを集め、所定の枚数になったら早いもの勝ちで得点に変換する、という内容のゲームである。

このゲームを行ったメンバーの中には「漫画会」に参加したことのある人が一人もいなかったため、このゲームがどれほどその内容を再現しているのかはわからずじまいだったが、内容そのものはなかなか楽しいものであった。

その6.もちろん普通に楽しいゲームもやる

■Conhex f:id:chocoxina:20190226004248j:plain 赤のプレイヤーと黄色のプレイヤーに分かれて各セルで陣取りを行いながら、その取った陣地を対辺まで繋げるゲーム

■EL DORADO f:id:chocoxina:20190226004322j:plain ジャングルを進むための道具や人手をトレーディングカード感覚で集めながら黄金郷を目指すゲーム

■Blackout Hongkong f:id:chocoxina:20190226004351j:plain 大停電に陥った香港を復興すべく東奔西走するゲーム

■Sheep, dogs and wolves f:id:chocoxina:20190226004540j:plain なるべく多くの羊を食べたい狼プレイヤーと、その狼に犬をけしかけて無力化したい羊側プレイヤーに分かれ、それぞれ具合よくタイルを配置するゲーム

■Go Go Eskimo f:id:chocoxina:20190226004511j:plain シロクマがこちらを見ていないスキを伺いつつ、氷の下から望む種類の魚を釣り上げるゲーム

■Key Flow f:id:chocoxina:20190226004612j:plain ゲーマーが喜ぶ感じのさまざまなシステムを乗りこなし、とにかくイイカンジの街をつくるゲーム

その7.帰り道でまでゲームする

ここまでご覧いただいたとおり、ボードゲームマニアを山奥のロッジに閉じ込めて何が起きるかといえば、ゲームの品評でも、知識のぶつけ合いでもなく、ただただひたすらにゲームがプレイされるのだ。

f:id:chocoxina:20190226200347j:plain

こんな具合で積まれた娯楽とそのプレイ相手を前にして、何かゲーム以外の知的な活動に精を出そうなどという殊勝な人間は、そもそもマニアたりえないのである。

ところで、参加者の中には実は

  • 近年テレビで取り上げられることも多い「ボブジテン」というゲームのデザイナー
  • 1700回を超えるイベントを主催し、ゲーム関連の著作をもつ研究家
  • 世界で最も著名なゲームデザイナーの通訳を務め、自身もスペインのメーカーからゲームを出版する業界きっての功労者

などがおり、見る人が見ればそうそうたる顔ぶれとなっていた。

しかしそういった重鎮たちさえ、テーブルを囲めばルールの下に平等であり、互いの着手に一喜一憂するいちプレイヤーにすぎない、というのがボードゲームの愉快なところだ。

筆者と比べて干支二回り分は年長のゲーマーが自分より夜更かしをしてゲームに励む姿や、女性プレイヤーが「ボードゲームはプレイ時間が長ければ長いほどいい」なんて言いながらボード上のコマをさばく様子を見ていると、「いい趣味を持ったな」という感慨がわいてくる。

ここを読んで頂いた皆様にも、ご紹介した個々のゲームや、意外と広大なボードゲーム趣味の世界ついて、少しでも良い印象を抱いて頂けたなら嬉しい限りである。

コンコルディア f:id:chocoxina:20190226004642j:plain

ところでロッジを出て東京に帰ったあと、帰り道の近いメンバーで1プレイ2時間級のゲームをした。我々は時間と機会が許せばほんとうにボードゲームばっかりやっているのだ。