新しい散歩のたのしみ「ノンポリウォール」について
住宅地を歩いていると
こういった感じで、何らかの政党のポスターが貼ってある壁を目にする。
あまりにも見慣れた光景である上、政治・宗教・野球への深入りを本能レベルで避けている我々は、つい真面目に見ることもなく通り過ぎてしまうのだが、時々ちょっと気になるタイプの壁がある。
同じ家屋に、こうして複数の政党のビラが貼られている場合があるのだ。
これ、大丈夫なんだろうか。
あいにくchocoxinaは政治に明るくない(ポジショントーク)のだが、政権与党と野党をいっしょくたに支持している人というのが、まあそんなにはいないだろうなということ位はわかる。
いったいどういう経緯でこのような状態に…と思って調べてみたところ、どうやらこのような壁の持ち主はたいてい特定の政党を積極的に支持してはおらず、ご近所からのビラ貼り依頼を何でもハイハイと受けている、というのが実態らしい。
塀のポスターは、家主のおおらかさの象徴だといえよう。
そして政党のポスターというのは概して、支持政党により多くの支持を集めるために、つまり卑近な目標としては選挙戦のために貼られるものであろうから――
あの壁には「おおらかな家主の良心のもと、各政党がバチバチに戦っている」という、ちょっとヒヤヒヤするような物語があるわけだ。
そこで今回、かようにスリリングな魅力を持つこれらの壁を「ノンポリウォール」と名付け、あくまでおおらかな目線で楽しむ方法を皆様にご提案したい。
「グレートノンポリウォール」の探求
ノンポリウォール鑑賞における定番の楽しみ方として、よりノンポリ的なる壁、すなわちより多くの政党のポスターが貼られた「グレートノンポリウォール」を探す、というのがある。
基本的には、各党の関係を問わず、4政党以上のポスターが貼られていれば「グレートノンポリウォール」と呼んで差し障りない。
■これなんか相当グレートである
よりおおらかでより戦火の激しい、よりアンビバレントな壁は、見る物によりスリリングな興奮をもたらしてくれる。
グレートノンポリウォールの探求は「もっと味の濃い家系ラーメン」を探して食べ歩くような、初心者にもとっつきやすい楽しみ方といえるだろう。
また、大きなノンポリウォールでは、全く同じ図案のポスターがいくつも貼られる「リフレイン」が発生するのも見逃せない。
ノンポリウォールの要件を満たしつつもより「リフ」の多い壁を探してみる、というのも一興だ。
「きのたけウォール」の蒐集
ところで、各党の党員さん(貼り手)がビラを貼って回るときというのは、「すでに他党のポスターが貼ってあるところ」に積極的に声をかけるらしい。
やはり許可が貰える可能性が高い上に、「アピール力」で他党と差を付けられたくない事情を考えれば、さもありなん、というところだ。
さて、ノンポリウォールを探し歩いていると、ほどなく「ある特定政党同士の組み合わせ」をたたえた壁が非常に多いことに気付くだろう。
むしろ、単一政党のポスターだけが貼られた壁(ポリウォール)よりも数が多いのではないか、と思うほどの量だ。
この2政党のポスターのみが貼られた壁を、国民的チョコレート菓子「きのこの山・たけのこの里」になぞらえて「きのたけウォール」と呼ぶ。
ある日、片方の党員が壁の持ち主(フィールドオーナー)に掲載許可を取り付けると、ただちにもう他党の貼り手がやってくる…という光景が想像され、ミニマムながらもかなりの見ごたえを感じられるはずだ。
「グレートノンポリウォール」のような主流としての人気はないものの十分に味わい深く、さながら蕎麦屋のカレーを食べ歩くようにしみじみと鑑賞できるのが「きのたけウォール」の魅力である。
■これは「きのたけ」の取り合わせではなくただ小規模なだけのノンポリウォールだが、かえってレアでもあるため通に好まれる
「おかずウォール」の発見
ノンポリウォールは、ポスターを貼りたい事情のある貼り手の依頼に応じて発生・拡大するものなので、理論上は「政党のポスターでないもの」も貼られることがありうる。
そういった非主流の掲示物が貼られた壁、すなわち「おかずウォール」を探し出す、というのも悪くない愉しみだ。
■右下の探偵のポスターが「おかず」にあたる
基本的に、商店街やスーパーの近くなど、経済活動のある所では広告に近いおかずが貼られ、住宅街では選挙ポスターに近い、別種の政治的活動のためのおかずが掲示されていることが多い。
この壁は「区営施設のイベント案内」という非常に公共性の高いおかずが貼られて掲示板化しており、なかなかのレアケースといえる。
おかずのバリエーションは土地によっても異なるため、各地を歩けばさながら「製麺所に注目しながらラーメンを食べ歩く」ような、ちょっと理系チックな楽しみ方もできるだろう。
ノンポリウォール鑑賞にあたっての諸注意
さて、当記事はノンポリウォール初心者のため、その愉しみを紹介することを目的とした記事であるが、しかしどうしても、読者の楽しみをそぐ可能性のある「注意喚起」をしておかねばならない。
ノンポリウォールは、フィールドオーナーこと壁の権利者の、多大なる厚意によって成り立つものである。
ひとたびそのことを忘れれば、
この通り、貴重なノンポリウォールが消失する可能性が常にあるのだ。
この壁がなくなった理由が、鑑賞者にあるのか、それとも「貼り手」にあるのかは定かではないが、ともかく我々としても気を引き締め、万一にもフィールドオーナーの迷惑にならぬよう鑑賞したい。
さいごに
以上が、chocoxinaの提案する「ノンポリウォール」鑑賞の大まかな手引きである。
筆者としては、これを機会にみんな国政に関心を、などと言うつもりは一切ないのだが… それでも例えば「この土地ではこの政党が強いのか」というような、ちょっと「大人」な目線でノンポリウォールを見る楽しみ方も悪くないだろう。
逆に、そういった部分への深入りを一切放棄しながらでも、一度まじまじと選挙ポスターを眺めてみると「どの政党も、やたら似たような六角形のシールでポスター貼ってるな」など様々な発見ができるはずだ。
とはいえちょっと今回は内容がポリティカルに寄っていたので、ここで「最近流行りのやつ」を掲載してバランスを取りつつ、この記事を終わらせていただきます。
■おいしかったです