密になったら即終了!ソーシャルディスタンシングさんぽ
気づけば世界は大きく変わってしまった。
なにせここ数か月で「どうぶつの森」はNintendo Switchで発売された(たのしい)し、「FF7」は美麗なグラフィックでリメイクされた。
「HearthStone」では新たなキャラクターがリリース翌日に弱体化されるという異例のバランス調整があったし、バランス調整といえば我々の住む世界でも「プレイヤーの当たり判定」が大幅に強化された。
なんでも他プレイヤーと2m以内に近づいてしまうと、確率で詳細不明の状態異常を付与されるという噂で、このパッチの影響により現環境のtier11には、極力外出を控えて他人と距離を取る「ソーシャルディスタンシング戦略」が1強として収まることとなった。
もっとも、不要不急の外出を控えるべきだとはいえ、ジョギングのようなレベリング(運動)は心身のステータスを正常に保つためにも推奨されているようだが、そうは言ってもゲーマーたるもの、デバフ2を受け、または与える可能性は極力退けたいところである。
そこで、健康上のリスクを極力避けながらよりエキサイティングにレベリングを行うべく、このたび「ソーシャルディスタンシングさんぽ」というミニゲームを発案、実行したので皆様にご紹介したい。
ソーシャルディスタンシングさんぽのルール
まず以下に「ソーシャルディスタンシングさんぽ」のルールをまとめよう。
基本的には「人とすれ違うことさえ回避しながら、どこまで遠くへ行けるか挑戦しよう」という以上のものではないので、興味のない人は次の見出しまで読み飛ばしてくれて構わない。
- 自宅を出てから、帰宅後の手洗いうがいまでの一連の行動をセッションと称し、セッション中はルールに従ってより多くのポイントを獲得することを目指す
- セッションが帰宅によって正しく完了した場合、セッション中の道程における自宅から最も離れた1点を決定し、その点と自宅との距離(単位はm)をポイントとして獲得する
- 1回のセッションにおける最大の得点は1000ポイント(1km分)とする
- セッション中、以下の状態を「密」と呼び、密になった場合そのセッションでのポイントは0となる(セッションを直ちに終了し、それ以上の密をなるべく避けて速やかに帰宅、手洗いうがいを敢行すること)
- 路上において、歩行者、自転車、スケーターやそれに類するもの、窓を開けた車、バイカーなど、通行およびその他の目的で屋外にいる人間(以下エネミー)とすれ違うなどして、道の幅を下回る距離まで近づいた場合
- 自分が道でない屋外にいるとき、エネミーとの距離が、自分が最後にいた道の幅を下回った場合
- ただし、以下の場合については密ではないものとする
- 視認できていないエネミーが後方にいると疑われるが、対象との距離が離れ続けていると判断されるとき(背後を気にするあまり怪しい動きをして警察を呼ばれたら、交番でマジの密になってしまって困るので、すぐ離れられれば不問とするということ)
- 走行中または停止中の、窓やドアを開けていない自動車の中にいるエネミーとの接近
- またセッション中は密を避けるだけでなく、以下の規則に従うこと。
- 各セッションはなるべく、買い物以外の必要な外出を伴うかたちで行う
- セッションは不要不急でない運動を目的とするものだという本分に則り、運動をより効率的に行うべく、移動は原則5km/h前後の早歩きとする
- 自身およびエネミーの健康的、社会的リスクをいたずらに高めてはならない
本稿における「密」はルール上定義された状態以外の何物をも示さないこと、またこのルールに従ってゲームを行っても種々のリスクを避けられるとは限らないことなど、読者に注意を促したい点はいくつかあるが、こんな堅苦しいルール文章を読み切った皆様には無用のことだろう。
ともあれ以上のルールのもと、ソーシャルディスタンシングさんぽを実践していく。
Session1:恥辱の小路
■動画配信者のようなマスクと角度で失礼します。ゲーム開始直前の筆者です
このゲーム最大のセオリーは、なによりもエネミーの少ない時間帯にプレイすることである。
最初のセッションは平日の23時すぎ、ゴミ捨てに併せて行われた。
■あまりにも近所なので、念のためモザイク多めで失礼します
改めて人気(ひとけ)を気にしながら歩いていると、1~2か月前なら考えられないほど静かだ。
■住宅街のなかでも、とくに小さく細い道を選んで進んでいく。
ちなみに、このような曲がり角では、
まず道路の右端に立って進行方向を確認し、安全を確認してから曲がるとよい。FPSの基本である。
■このような狭い道ではただちに接敵する可能性こそ低いものの、交差点の見通しが悪いため注意が必要
ここまで道のりで200m。ある程度道を選んできたとはいえ、エネミーの気配さえ感じることなく進んでいる。
この長い直線を安全に超えられれば、かなりスコアが稼げそうだ。
しかしこのあたりで、画面奥、画像ではつぶれて見えないほどの距離に、なにか動く気配があった。
緊張が高まる。
心臓が絞りあげられるように縮み、次いで心拍が早くなるのを感じた。
このゲームに負けたところで、ただちに「何か」あるわけではないし、そもそも今回のルールは「何か」が極力起こらないように、かなり厳しく設定している。
今自分がしているのは「白線だけ踏んで家まで帰る遊び」の延長に過ぎないのに、何を恐れているのだろうか?
――早歩きのせいだけでないだろう、汗が額ににじむのを感じながら、右の小路に逃げ込む。
しかしここがT字路(画像だとわかりにくいが右にも道がある)。距離を稼ぐにはすぐ左に曲がりたいところだが、こちらにも人の気配があり右へ行かざるを得ない。
その先は、元来た道の脇を延々戻らされるばかりの細長い通りで、緊張によって歩調こそ早まっているが全くスコアは伸びていない状態。
先ほど賢しらに曲がり方を説明したあたりまで為す術もなく戻されたため、スコア稼ぎについては断念せざるを得ず、そのまま無念の帰宅となった。
■今回のおおまかな道のり。黒が行き、青が帰りとなっている
帰宅(と手洗いうがい)後にGoogleMapを使って今回のスコアを計測したところ479pt。10分そこそこしか歩いたとは思えないほどぐったりした。
ともあれ、最初のセッションを通して以下のようなことがわかった。
- 曲がり角の少ない道でエネミーに遭ったときや、角の向こうにエネミーの気配を感じたときの緊張感はすごい
- かなり「パックマン」の気持ちになれる。主観視点のパックマンってこんなに恐ろしいのか
- この状況でさらに早歩きによって心拍が上がっているため、帰るころにはかなりへとへとになる。有酸素運動としてはかなり効率的なのではないか
- 明るい道はエネミーを見つけやすいが、暗い道の方がエネミーが少ない。リスクとリターンのジレンマが生じている
- あまり通らない道を歩くことができるので、久々にかなり新鮮な気分になれた。普段いかに大きな通りばかり歩いているか思い知らされる
このお遊びのために余計に外に出るのはさすがに考え物だが、何かのついでの運動、兼気分転換としてはそれなり以上の効果がありそうだ。
Session2:白昼の暗殺者(アサシン)
さて、この記事を執筆中の現時点における「環境」3では、原則として夜間の外出を控える戦略が主流となっている。
夜間だからといって直ちに屋外におけるリスクが高まる、というわけでは恐らくなく、さまざまな社会的要素を鑑みての戦略だろうと思われるが… どうあれ今後の環境の変化に備え、昼間のセッションについても理解を深めておく必要があるだろう。
というわけで2度目のセッションは平日昼間、リモートワークの昼休み中に行われることになった。
急あつらえの仕事机に座り続けている腰をいたわるためにも、食後はオープンエアーで運動しておきたいところである。
同じ道から始めつつ、昨晩右へ曲がった道を今回は左へ曲がってみる。
画面奥のエネミーをやり過ごすため若干歩調を落して交差点へ。
歩いていて今日ほどカーブミラーをありがたいと思ったことはない。
そのまま直進すると、前方に別のエネミーを確認。
逃げ道はいくつか考えられたが、エネミーが右に曲がったのを確認してそのまま直進。
しかしエネミーが突如として元の道に戻ってきたため、ここで今回初の「密」。ゲーム終了である。
――茫然自失のなか、どうにか改めて状況を確認すると、このエネミーはどうやら各戸にポスティングを行っているようだった。
いったん視界から消えたのも道を曲がるためではなく、敷地奥のポストになにか投函しに行ったに過ぎなかった、というわけだ。
さて、今回はスコアこそ0ポイントとなってしまったが、いくつか新たな気づきを得ることができた。
- 昼は接敵の機会が増えるため、単純に難易度が上がる
- また暗闇でないぶん本能的な緊張感を欠くためか、集中を保ちにくい。ポスティングの動きにも本来なら気づけたはずだ
- 路上観察的な楽しみがあればいいなと思っていたが、到底そんな場合ではない
- 一瞬スコアがどうでもよくなるほど日差しが気持ちいい
あまり外に出てばかりいると思われても困るので、いったん次を最後のセッションとしよう。
Session3:焦燥の迷宮
最後のセッションは、少しでもスコアを伸ばせるよう万全の体制で挑みたいところ。
ここで今更だが、今回のマップについて確認しておこう。
画像左側と下側がかなりの大通りになっており、ここを渡るのは現実的でない。
今まではただ漫然と歩きまわっていたが、基本的にはマップ右上を目指すべきだろう。
時間については夜間のほうがよく、また予想外の接敵でプランを狂わされないためには、頓死のリスクを背負ってでも、より狭く、暗い道を歩く方がよさそうだ。
この辺りを踏まえつつ、前回のセッションから2日後、最後のセッションを決行した。
まずは先ほどのマップでいう上方向へ。ルールに記載はなかったが、今回猫との接触は密とはみなされない。
この辺りで右方向へシフトしたかったのだが…
行き止まりだったため逆戻り。令和の東京に行き止まりなんてあるのか。
その後どうにか別の道をマップ右方向に抜け、
突き当りを左折したところ。このまま直進してマップ上方向へ抜ける選択肢が見えてきたが、前方にはエネミーとコンビニが見えるため、まだなるべく右方向への道を模索したい。
そこでこの道を右折したところ、
結局もとの道に戻ってきてしまった。なんなんださっきから。
エネミーのみならず、まさか「道そのもの」にまで牙をむかれるとは思わなかった。小路を選ぶことのさらなるリスクに直面したかたちだ。
ともあれ、どうやらマップ上方向へ進んで距離を稼ぐしかないようだが…
接敵!!!(大変お疲れ様です)
ここで一旦脇道に退避。
しかるのち、意を決して直進したところ…
どうにか「関所」を超えることができた。
しばらく直進した後T字路に。ここで気力の限界(マジの息切れを発症)を感じたため、スコアを伸ばすことはあきらめて家路へ。
その後も、
エネミーをやりすごしたり、
再来の気配を感じて、モザイクの必要がなくなるほどカメラをブレさせたりしつつ、どうにか無事帰宅することができた。
■首を右に曲げて見てもらうと、今までの説明と方角が揃います
今回のポイントは455pt。初日と比べてかなり時間をかけたにも関わらず、ベストスコアを更新できなかった。
とはいえ、この日は疲労のおかげかめちゃめちゃぐっすり眠れたので、その点についてはよかったです。
さいごに
この遊びについては、どうしてもこう「みんなもやってみてね」とは言いにくいのだけれど、ともかくもこのご時世、ソーシャルディスタンシングさんぽそのものに限らず「こういう感じのこと」をやりながら、なるべく楽しく過ごしていけたらいいですね。
それでは、筆者は「どうぶつの森」に帰らなければならないのでこの辺で失礼します。ドレミちゃんも僕を待っているので。