ドンキ歴20年の筆者が送る、ドン・キホーテで得するための5カ条と、得どころじゃなくなる5つの見所
気軽にショッピングもできないご時世である。
なんでも昨今は買い物を3日に一度程度に減らした方がいいとかで、「ちょっとコンビニ寄ってくる」程度のことも今や躊躇われる。
読者の皆様の中には、そんな生活様式に合わせた「たまの買い物」をなるべく効率よく済ませるべく、久々に大型のディスカウントストアに足を伸ばした、という方も多いことだろう。
さて、ディスカウントストアといえばドン・キホーテ、そしてドン・キホーテといえば筆者である。
小学生のころに初めてドンキを訪れ、中高時代は帰宅を遅らせるためにドンキに入り浸り、一人暮らしを初めてからは徒歩圏内のドンキに生活の大半を頼るようになった筆者が、ドンキ歴20年(推定)の知見をもって皆様に「ドン・キホーテを楽しく活用するコツ」をお伝えしよう。
世間では疫禍もいったん落ち着き、少しずつ生活を新たにしていく流れが見られる中、この記事はやや遅きに失した感もあるが、次回の買い出しからでもお役に立てていただければ幸いである。
第1条:ハデな定価に気をつけろ
筆者に言わせれば、商品の安さなどドンキの魅力のほんの一部に過ぎないのだが、ともあれ皆様がたまにディスカウントストアに行くときというのは、概して「それ」を求めるものだろう。
であれば、うずたかく積み上げられた商品や、過剰に装飾されたPOPに気圧されて「特段安くもないもの」を買ってしまうことのないよう注意が必要だ。
■有名なエナジードリンク。これだけの物量とPOPでアピールしているが、ほぼ定価である。
それが定価だろうが9割引きだろうが、価値に見合うと感じたなら遠慮なく買うべきではあるが、それはそれとして「買い物でトクをする」ことは、このご時世に気後れせず楽しめる貴重なレジャーの一つでもある。
そんな愉悦に影を落とすことのないよう、ドンキで買い物をするときはいつにも増して「定価」に気を配っていただきたい。
たとえば、売り場のいい位置に展開されている食料品に、「オススメ」「定番」など、特に価格に言及していないPOPばかりついているときは警戒すべきだ。
また経験上、新商品に「お試しプライス」というPOPがついているときはほぼ間違いなく定価販売なので、これだけでも覚えておいてほしい。
■「機能の話ばかりするときは定価」という見方もある
とはいえ、このように左上にある特価のZIMA缶と、右下にある定価のZIMAに同じ体裁の値札がついているような例もあり、POPの見かけだけでは安さを判断できないことも多い。ドン・キホーテはかように油断ならず、奥が深いのである。
第2条:「安さの理由」は一応見ておけ
ドンキの一部のPOPには「安さの理由」という欄があり、なぜその価格を実現できたのか説明されていることがある。
記憶が確かなら、この手のPOPが出始めたのは2010年前後で、恐らく当時メディア露出の増えていたオーケーストアの「オネストカード(安い分低品質な商品の問題点などを記載するPOP)」に影響を受けて始められたものだろう。
それはともかく、ドンキのPOPにおける「安さの理由」欄は実際のところほとんど形骸化しており、たいてい
いまひとつ理由になっていないことや
見ればわかるようなことが書かれている。
ただ時折
こういった感じで「まっとうな理由」が書かれていることもあり、そのような商品はかなり狙い目だ。
この欄をチェックしておけば、珍妙なPOPでクスリと笑うか、あるいはお得に買い物できるかのどちらかはほぼ保障されているわけだから、「安さの理由」はぜひとも確認しておくべきだろう。
■もはや安さに関する言及を放棄して、ただ商品説明をしている例(さらに文字が小さい)。「安さの理由」はそれだけでブログが一本書けるほど見ごたえがある
第3条:車を出た瞬間から油断するな
ドン・キホーテといえば、「圧縮陳列」と呼ばれるスタイルの売り場づくりが特徴的で、とにかくあらゆるところに商品が置かれている。
■たとえ柱の最上部であろうと、空いた面があるならそこで何かしら売る、というのが彼らのスタイルである。干物売り場にプリンやバナナの被り物が置いてある無茶苦茶さについて「おっ『食品合わせ』で来たか」くらいの気持ちで受け入れられればドンキ中級者だ。
その哲学は店内のみに収まるものではなく、ドンキでは大抵、店の軒先や駐車場の一部までもが売り場になっている。
仮にあなたが家族連れで買い出しに出かけたなら、車を降りたその瞬間からドンキの「圧」を感じることになるだろう。
それはつまり、さきほど紹介したような「派手な定価」などの罠について、店に到着したその瞬間から警戒しなければならないことを意味する。
■本来ナニ売り場でもない駐車場においては、全ての出会いが突然だ。ここを訪れる者は、突如遭遇した「着圧ソックス」などの相場を正しく判断する必要がある。
とくに店外の自販機は鬼門そのものであり、店内ならば十分ディスカウントされているはずの飲み物が「いやぁココだと手間とかもありますんで」みたいな顔をして、それなり程度の価格で売られていたりするのだ。
■「一般的な自販機」と比べれば十分良心的だが、3ケタ円のコーラで満足しているようではドンキ初心者のそしりを免れないだろう。
ドンキの駐車場に着いたら、たとえ子供がチャイルドシートの窮屈さにグズっていようとも、まずは深呼吸、と覚えておいて欲しい。
第4条:「この前TVで見たやつ」を買え
あのスーパーは野菜が安いだとか、この店は牛乳の品ぞろえがいいだとか、日常的に買い物をする方なら近所の店舗についていくらか知見があろうかと思うが、ドンキで品揃えがよく、さらに安いものといえば「この前テレビで見たやつ」だ。
ドン・キホーテではどういうわけか、テレビ通販でよく見かける感じの商品がかなり安いのである。
■もともと定価で売られることの少ないものではあるが、それを差し引いても安い
ドンキで見るものが、テレビ通販で見た商品そのものかどうか、いわゆる「ホンモノ」であるかどうかはその時々で異なるが、仮に類似品だったとしても、あなたがこれまで押し込めていた購買意欲を暴発させるには十分だろう。
「めっちゃ水を吸う雑巾」「48時間の断食中に飲むジュース」「正しく寝られる枕」などの事が頭に残って離れないなら、ぜひ一度ドンキを訪れてみてほしい。
かつての筆者のように「倒れるだけで腹筋運動ができるマシン」をすぐ粗大ゴミに出すことになろうとも、財布への打撃は小さく済むはずだ。
■「昼間にほのぼのドキュメンタリーを見ていたらいつの間にか宣伝される」ことでおなじみの青汁も、ドンキなら定期購入だの何だのといった複雑なシステムに巻き込まれず試すことができる。
第5条:インテリアの侵蝕に気をつけろ
大抵のドン・キホーテは、家具やインテリア用品も取り揃えている。
居場所のない小物を一手に引き受けてくれる「ちょっとした棚」などが安価に買えることもあり、筆者が独り暮らしを始めたときは大変お世話になったものだが…
ここで読者の皆様に注意しておきたいのは「あまりドンキの家具を買いすぎるな」ということである。
化粧板が「のべっ」とした風合いを見せる家具や、妙に毛足の長いラグやクッション、間に合わせのつもりで買った生活雑貨などなど、単体で見る分にはなんともないモノが複数集まると、ある時点から急に家が「ドンキ然」としてくるのだ。
■筆者の部屋の、ドンキで買った化粧板の家具が3種集まった一角。必要になる都度買う(買えてしまう)ので統一感がない。
■かつてドンキで安かったハンガー達が何種類もかかったつっぱり棒。奥には情熱価格(ドンキのプライベートブランド)の空き箱が見える。
もとよりインテリアにこだわりのある皆様には不要なアドバイスだったかも知れないが、生活のかなりの割合をドンキに捧げた人間の貴重な証言として、どうか心の片隅に留め置いてくれれば幸いである。
■ドンキを日常とすることは、すなわちこの真っ黄色のビニール袋を日常とすることである。部屋の「ガチャつき」は避けられない。
見所1:「わざわざ買いに行かないもの」を見ろ
さて、ここからは「得できるかできないか」という点にこだわらず、ドンキに行った際にぜひ気にしてほしいポイントについて紹介していこう。
ご存知の通りドン・キホーテはディスカウントストアであって、基本的には「ヨソでも売っているようなもの」ばかりを取り扱っている。
(いや、実のところドンキには「情熱価格」「RESTORATION」「ACTIVE GEAR」などのPB品があってこれらもなかなか魅力的なのだが、いったん脇に置いておこう)
そんなドンキの何よりの魅力といえば、なんといっても「わざわざ買いにはいかないもの」が一つの店舗にまとまっている点だろう。
たとえば、大抵の人が「たまに見つけたら買っちゃう」くらいの温度感で接しているであろう「ちょっと気の利いた輸入菓子」も、ドンキならよりどりみどりである。
■個人的なオススメは、キャドバリーデイリーミルクのフルーツ&ナッツというチョコレートバー。チョコの味が優しくてモリモリ食えるのだが、お察しの通りドンキでなくてもそこそこ売っている。
食品のほかにも、例えば夜の生活を豊かにするグッズなどは、たいていのドンキでそれなりの品ぞろえをほこっている。
■お子様も見ているかと思うので、画像にはモザイクをかけておきます。ドンキの周りに住む男子中高生は、皆ここで赤い筒を買うのだ。
あとはボードゲームなんかも、普通の人にとってはわざわざ買いに行く類のものではないだろうから、興味があるならドンキで買うのもいいだろう。
■ドンキのボードゲームはここ一二年で取扱数が3倍くらいになっており、ずっとゲームばかりやってる筆者もニッコリの品揃えである
今度ドンキに行ったら、ぜひ全ての売り場をめぐって「そういえば欲しかったもの」を見つけてほしい。
見所2:「ジャストボックス」の衝撃を思い出せ
ドン・キホーテに古くからある特徴的なシステムとして「ジャストボックス」というのがある。
現金で買い物をする際は、レジ横に置いてある1円玉を4円まで使ってよい、というサービスで、うまく活用すれば財布の小銭を減らすのに役に立つ。
近頃はカードやら電子マネーやらなんとかPayやらが普及して現金を使うことがめっきり減ったし、さらに近年ジャストボックスの利用には「お会計1000円以上から」という制限が課されて使いにくくもなったが、ともかく筆者としては今一度、このジャストボックスの衝撃を思い出してほしいのだ。
そこらへんに置いてある小銭を我が物顔で掴んで支払いに充てる、という体験は、ドンキ以外でそうそう味わえるものではないだろう。
また、もしあなたが未だ「ジャストボックス」を使ったことがないなら幸運である。
当時小学生だった筆者が、初めての買い物でおずおずと1円玉に手を伸ばしたときの、「本当にいいの?」という戸惑いを、今こそぜひ追体験していただきたい。
見所3:マイルドヤンキー文化を体感しろ
ドン・キホーテという店やその客層について、正直なところある種の偏見を抱いている、という方も少なくないことだろう。
であれば、たまのドンキめぐりの際にはいっそのこと、そういった「ドンキらしさ」を楽しむつもりで行くのも手だ。
ドンキの客層にある種の偏りが見られるのは事実であるし、そのつもりで商品を探せば、ラインナップからターゲティングの傾向を感じることができるだろう。
■これは数年前の夏、大久保のドンキで安い浴衣セットを買ったら、ホストクラブか大衆演劇でしか見ない材質のやつだったときの写真。
■「グレーのスウェット上下」を着て深夜にたむろしてみたかった皆様、その願いはドンキで叶えられます。筆者は日常的に着るようになってしまいました。
■実際にコトが起こらなければ書かれないタイプの、特殊な注意書きを見ることもできる。
見所4:品揃えを信じ、そして震えろ
例えば、ゲームのハードが不調で、分解清掃のために特殊なドライバーが必要になったとき。
ガスの通っていない家で土鍋をあたためることになって、電熱調理器が必要になったとき。
手作りお菓子を、急に七色に染めたくなったとき。
ネットの情報を頼りにイヤホンを改造していたら、「タバコと、熱収縮チューブと、セメダインスーパーX」がいっぺんに必要になったとき。
筆者はこれらの状況をすべてドンキで解決したことがある。
■すみません、電熱調理器のくだりはフィクションなんですが、これを見つけた衝撃を皆様にお伝えできればと思いまして。
あなたがもし「ナントカ成分が入ってるタイプのスプレー」であるとか「カー用品のなんちゃら配線をつなぐときのカバー」であるとか、専門外のもの、あるいはナニ売り場にあるのかさえ見当がつかないものを探すことになったら、まずはドンキに行ってみるといい。
ホームセンターのような、専門家による細やかなサポートには期待しにくいが、モノ自体がある確率はかなり高いはずだ。
見所5:インフラとしての覚悟を見ろ
ここまで紹介したとおり、ドン・キホーテにはおよそあらゆるものが売られているのだが、このご時世に「何でも売っている店」に赴くひとというのは、結局のところある特定のものを求めている。
筆者宅最寄りのドンキにも、ある時期からはマスク、アルコールスプレー、トイレットペーパー、塩素系漂白剤、その他もろもろを求める人が押し寄せ、土日ともなるとレジ待ちの行列が店内の1フロアをまるまる1周するほどになったこともあった。
■そんな客のために、在庫状況をわかりやすく展示しているホワイトボード
ドン・キホーテは、パーティーグッズとB級感と突っ込み所とマイルドヤンキーに満ちた猥雑なディスカウントストアであるが、そんなドンキが今日の日本において、近隣のインフラをその真っ黄色な体で支えていたことも、ここに報告しておきたい。
■おう、頑張ろうな
ボリューム満点激安ジャングルだぞ
以上「ドン・キホーテをお得に利用し、あるいは楽しむコツ」についてご紹介させていただいた。
未ださまざまな楽しみが制限されている昨今、この記事を活用してせめて買い出しくらいは楽しんでいただければ幸いである。
たいていの読者にとって、これまでドンキは「仕方なく行く店」だったかもしれないが…… 真っ黄色のPOPとおびただしい数の「呼び込みくん」、「圧縮陳列」と呼ばれる独自の売り場設計、そういったものを味わいながら買い物ができるある種のレジャー施設として、ドン・キホーテを「楽しみに行く店」と捉え直して頂けたなら、これほど嬉しいことはない。
ところで、ドン・キホーテといえば「ドンドンドン♪ドンキ♪ドンキホーテ♪」というご機嫌なテーマソングでお馴染みだが、実は近年、店内であの原曲が流れる機会はそう多くない。
今はインストアレンジやキラキラハウスREMIX、あるいは完全新曲の「Donki Mambo アイコトバ」など、様々なドンキソングが流れているので、次回お店に行った際はぜひそちらにも耳を傾けてほしい。