chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

大人として、太った男子のおっぱいを揉むということ

chocoxina:
いやー、こむそうさん。今日はお越しいただきまして、ありがとうございます。

こむそう
とんでもないです、chocoxinaさん。聞いたところだと、僕のような体型の方を探しているとのことだったので。ぜひお力になりたいと思いまして。

chocoxina:
そうなんです。それで、今回の頼みというのがですね。

こむそう
はい。

chocoxina:
おっぱいを、揉ませていただきたいんですよ。

 

 

 

 

趣旨のご説明

こむそう
……。

chocoxina:
あの、おっぱいをですね

こむそう
聞こえてます。「人を平日に呼び出しておいて、内容がそれかよ」と思ってただけで。

chocoxina:
失礼いたしました。本来であれば事前にお伝えするべきだったんですが。

こむそう
――まあ。おっぱい揉ませるくらいは別にいいんですけど。

こむそう
なんで? と思ってます。

chocoxina:
もちろん、私が本提案を行うに至った動機については、これからしっかりとご説明させていただきます。

こむそう
本提案て。

chocoxina:
また先ほど、こむそうさんは「おっぱい揉ませるくらいは別にいい」とおっしゃいましたが。

こむそう
はい。

chocoxina:
私はですね。

chocoxina:
そんなに軽々しく許していいことではないと思うんですよ。

こむそう
あなたが頼んだんですよね。

chocoxina:
私が今、非常に問題のある頼み事をしているのはわかっています。

こむそう
いいって言ってんだろ。

chocoxina:
そこで今回、

chocoxina:
私におっぱいを揉ませていいかどうか、適切に判断いただくために――

こむそう

chocoxina:
このようなスライドをご用意いたしました。

 

こむそう
???

本日の流れに関するご説明

こむそう
――おっぱいを揉まれるだけならともかく、事前に、プレゼンがある?

chocoxina:
おっぱいを揉ませることは「ともかく」で済ませていいことではないですよ。

こむそう
はぁ。

chocoxina:
それはそうと、これから行うご説明は、おっぱいを揉ませていただく行為と不可分です。

chocoxina:
あなたが男性だからといって、おっぱいを揉ませる行為には、決して「おふざけ」で済まないリスクがあること。そして、リスクの程度や、そのリスクを負わせるに至った私の動機。これらについてご理解いただく。

chocoxina:
小学生ならともかく、私のような大人が、関係値の低い相手におっぱいを揉ませてもらおうとするなら、こうした手続きは当然行われるべきだと考えています。

こむそう
なんか、すげーめんどくさいこと言ってるけど「めんどくさい」って言ったらダメなんだろうな。

動機に関するご説明

chocoxina:
まずは、本提案に至った動機についてご説明します。

タップ(クリック)で拡大できますが、スライドの内容については文中で触れるのでご安心ください

こむそう
パワポ見てたら、だんだん契約とかの手続きしてる気分になってきました。おっぱい揉まれるだけなのに。

chocoxina:
今回、おっぱいを揉ませていただきたい理由を一言でまとめると、「若き日の筆者の供養」といったところでしょうか。

chocoxina:
「太った男子のおっぱいを揉む」という定番のおふざけを体験したい。しかし、小学生当時から今日に至るまでその行為を「遠慮」してきた自分を裏切ることもできない。こうした背景から「きちんと許可を取ったうえで、成人男性におっぱいを揉ませていただく」ことを望むに至った、というわけですね。

こむそう
なんでしょう。すごい「理論武装」感があるのに、言ってること自体に嘘はなさそうで不思議な感じです。

chocoxina:
理論武装と言いますか、今あえて述べていないことがあるとすれば――

chocoxina:
こうした思いを抱いてから今日までの間に私がずいぶん太ってしまって「もう自分のを揉めばいい」状況になっていることでしょうか。

こむそう
体型の自虐はやめてください。僕からフォローできないんで。

こむそう
――まあ、それはともかく。人のを揉むのが大事なんだろうな、ってことは想像つくんで、そこは大丈夫です。

chocoxina:
では一旦、動機については納得いただけたということでよろしいですね?

こむそう
その言い方だと、ちょっと丸め込まれたみたいな感じですけど。最初からよろしいんです僕は。

リスクに関するご説明1

chocoxina:
では続いて、本提案を承諾いただいた場合のリスクについてご説明します。

chocoxina:
本提案のご承諾によって発生するリスクは、大きく「尊厳リスク」「炎上リスク」「関係性リスク」に分けられます。

こむそう
パワポ作る人って、ものごとを何でも3つに分けたがりますよね。

chocoxina:
まず「尊厳リスク」のご説明から始めましょうか。

chocoxina:
簡潔に申し上げれば、こむそうさんの身体はこむそうさんだけの、かけがえのないものである、という気持ちに関するリスクです。私のこむそうさんに対する態度や隠された本心、また意思決定の流れ次第で、そうした気持ちが損なわれてしまう可能性があります。

こむそう
んーーーーーーーーーまあ、茶化していいような話でもないか。僕自身について「かけがえのないもの」とか言うのも何ですけど。

chocoxina:
今回のご説明自体が、突き詰めればこの「尊厳リスク」の低減を目指したものです。私はあなたやあなたのおっぱいを、決して軽くは扱わないと、それを納得いただくための時間というわけですね。

こむそう
こっちは今、むしろその「軽くなさ」にビビってるんですよ。

chocoxina:
それはやむを得ません。安請け合いされて、後で事態の深刻さに気づくような事態は、なるべく避けねばなりませんので。

chocoxina:
それに、私がただ「軽く扱いませんよ」と言っただけで、スグにそれを信じてしまうようでは困ります。

こむそう
困りはしないでしょ。

chocoxina:
いいえ。あなたが別の男におっぱいを揉まれるとき、相手の意図をよく確認もせずに――

こむそう
別の男におっぱいを揉まれるときなんかないです。

chocoxina:
とにかく、私があなたの尊厳を傷つけるような意図を持っていないことをご理解いただけるように、いくつか背景情報をご提示します。

chocoxina:
まず前提として、私は女性愛者を自認しています。また現在独身ではありますが、今日が売上の入金日、俗に言う給料日ということもあり、性的な欲求を満たすためであれば「他の方法」が取れる状態です。あなたを騙して性的に利用する動機は、客観的に見て乏しいといえるでしょう。

こむそう
別に僕も、chocoxinaさんが僕のおっぱいで興奮するつもりだとは思ってないですよ。

chocoxina:
こむそうさん。「私」を信用しているならありがたいですが、「あなたのおっぱいを揉もうとする人」全般をそのように信用しているなら問題ですよ。

こむそう
あなた以外に「揉もうとする人」がいないんですって。

chocoxina:
ともあれ、こうした自分の指向についても、口で説明するだけでは不十分でしょう。

chocoxina:
こちらをご覧ください。

chocoxina:
先日行ったおっぱいパブの名刺です。

こむそう
ふざけてる?

chocoxina:
いたって真面目です。もっとも、こうしたお店や、キャストさんのような職業それ自体を認めていない方からすれば、私が誰かへの配慮のために別の誰かを踏みにじったようにも見えるでしょうが――

chocoxina:
しかし、僕が独身で、配偶者などの「社会的な裏付け」をお見せできない以上、せめてこうして、法の許す範囲で「女性のおっぱいにコストを払える」ことを示す必要があると、そう考えたわけです。

chocoxina:
ちなみに、おっぱいパブでは「そういう場所」なりの感謝を込めて嬢にそこそこドリンクを入れたんですが、お会計が「桐箱入りのマスクメロン」くらいになってしまいました。

こむそう
なんでそこまでしたんですか。

chocoxina:
嬢のおっぱいを、そしてあなたのおっぱいを揉ませていただくために、必要なことだからです。

こむそう
普通は「ここまで必要」と思ったら諦めますけどね。

chocoxina:
!! ちょっと待ってください。

chocoxina:
嬢からLINEだ。

こむそう
楽しんでんじゃねぇよ。

chocoxina:
いやいや、私が楽しんでるということは、これまでの性的指向に関する発言に嘘がなかった、ということですからね。なんならここまでお見せしても「両刀」の可能性は否定できていないんですから。

こむそう
疑ってないんですよ別に。

chocoxina:
ところで、今回こむそうさんにお越しいただくにあたっては、僕がX(旧Twitter)上で「条件に合う体型の人」を広く募集して立候補いただく、という形式を取らせていただきました。これも一応、尊厳リスクへの配慮という背景があります。

こむそう
僕みたいに「はい! 太ってます!」と自分から言える人にだけ来てほしかった、ということですね。

chocoxina:
その通りです。しかし、だからといって「ここに来たってことは、そのくらいする覚悟があるってことだよな?」などと言って、無理やりおっぱいを揉むようなことは断じてありませんので、どうかご安心ください。

こむそう
僕はずっと、揉んでいいって言ってるんですけどね。

リスクに関するご説明2

chocoxina:
続いて、3大リスクの2つめ、炎上リスクについてご説明させていただきます。

こむそう
この謎の時間、まだ1/3しか終わってないんですか?

chocoxina:
必要なら、この時間の意義について再度ご説明します。

こむそう
勘弁してください。
 

chocoxina:
さて、この記事が仮に炎上するとして、責任は明らかに私chocoxinaにあるわけですが、それでもこむそうさんに「延焼」する可能性は否定できません。

chocoxina:
私の書きぶりによって、こむそうさんがなにか非倫理的な発言をしたかのように見えてしまう可能性もありますし、実際のところ、そうでなくとも炎上する可能性、というのがあります。

chocoxina:
世の中って、完全に、マジの人がいるんですよ。

こむそう
そういうこと言うと高まりますよ。炎上リスクとやらが。

タップ(クリック)で拡大できますが、見ない方が健康にいいかも

chocoxina:
例えば、元モーニング娘。辻希美さんは、料理の写真をアップした際に「味噌汁の具の形がポストイットみたい」という理由で炎上したことがあるそうです。このように完全にマジの人に見つかってしまったら、もうお手上げだと考えてください。

chocoxina:
またそういった「完全にマジの人」のような存在を想定せずとも、画像やスクリーンショットなどが完全に記事から切り離されて、遠くの界隈で思わぬ受け取られ方をする可能性もあります。今回は、一部の画像に出典を明示する「透かし」を入れることで対策させていただきますが、効果には限界があるかと思います。

chocoxina:
さて、避けがたい炎上はどうしてもありますが、本来避けられる範囲での炎上のリスクをどの程度考慮すべきかについて、背景情報をお伝えしましょう。

chocoxina:
たとえば私は、路上の落書きについて文化的な視点から取り上げる記事を執筆した経験があります(参考1)(参考2)。こうした題材を扱うこと自体や、これによって一定の評価を得てしまったことについて、快く思わない人は当然いるはずですが、少なくとも現状これによる炎上は確認されていません。

chocoxina:
また「快く思わない人」といえば、インターネット上には過去の私の対人トラブルを5年以上自分のブログでコスり続けているおじさんや、私の過去15年分に及ぶX(旧Twitter)での発言を片っ端から通報してきたおじさんなどもいます。これも事実としてお伝えすべきでしょう。

chocoxina:
これらを好意的に見れば「よくない話題や、完全にマジの人と相対しても炎上は防いできた」とも言えますし、逆に「そもそも不興自体は買っている」とも言えます。

chocoxina:
また実際のところ、私がこれまで「炎上を防いできた」とは言っても、防止への意識や、そのためのテクニックがあるわけではないんです。私が大事にしているのは、協力者や関係者に対して敬意を示すことであって、「炎上するかしないか」という外からの目ではない、というか。

chocoxina:
なので、シチュエーション次第では「私でなければ避けられた炎上」が発生する可能性もあるんです。このあたりを総合的にどう評価するかについては、こむそうさんにお任せしたいと思います。

こむそう
それはわかりましたけど。なんでそんな、僕のおっぱいを揉むために自分のデジタルタトゥーまで掘り下げるんですか。

chocoxina:
必要なことだし、何よりも――

chocoxina:
インターネットをやりすぎて、このくらいの自傷がむしろ、気持ちよくなっているからです。

こむそう
燃やされろ。

リスクに関するご説明3

chocoxina:
最後に、関係性リスクについてもご説明しましょう。そもそも、おっぱいがどうとかにかかわらず、我々のやりとりは常に二人の関係に影響を及ぼします。

chocoxina:
その中でも「おっぱいを揉ませる」という重大な依頼を気安く受けてしまえば、私はあなたのことを「頼めばなんでもしてくれる存在」とみなすかもしれません。今後僕から「お店で見たことない洗剤」や「悪い気を吸ってくれる石」などを売られる可能性が、わずかに上がることは考慮しておいてください。

こむそう
それはまあ、大丈夫そうかなと思います。こうして色々説明してくれてるわけですし。

chocoxina:
だめだめ、油断しないでください。一度私の提案を飲んでしまえば、あなたには次の提案も断りにくくなる心理的な効果がはたらきますからね。

こむそう
そんなに「疑われよう」としなくても。

chocoxina:
また、私におっぱいを「揉ませない」ことによる関係性リスクも無いとはいえないのですが、私からは「断られても気にしないし、気にしないことを信じてほしい」とお伝えしておきます。断られることで私に起こる問題はすべて私の責任ですので、ご自身の心や身体を第一に最終的な判断を行ってください。

chocoxina:
第一、提案を断ったくらいで崩れる関係なんて、最初から無かったのと一緒ですから。

chocoxina:
こむそうさんも普段から、そういう関係で消耗しないように気をつけてくださいね。たとえば――

こむそう
待ってください。もしかして今、これからおっぱい揉もうって人が「説教」始めようとしてます?

質疑応答

chocoxina:
――さて、これでリスクに関する説明は以上となりますが、なにかご質問はありますか。

こむそう
うーん。

こむそう
すみません。いろんなことがいっぺんに起きたので、まだ考えがまとまってなくて。

chocoxina:
本題に関する質問に抵抗があるなら、いったん何か「雑談」みたいな質問を挟んでくれてもいいですよ。私のプライベートとか、先ほど紹介したヤバいおじさんのこととか。

こむそう
そういう余計なことも考えられないです。いま僕「入念な手続きを経ておっぱいを揉まれそうになる」っていう、人生で初めての状況にあるんですよ。

chocoxina:
――いったん休憩しましょうか。

数分休んだり、スライドを見返したりしました

こむそう
――質問とかの前に、改めて自分の考えを整理してみたんですけど。

chocoxina:
はい。

こむそう
今日の僕って、この「状況」に対してずっと混乱してただけなんですよね。実際「揉ませていいか」についてだけ考えてみると、スライドを出される前と後で、結論はまっっっっっっっっったく変わってませんでした。

chocoxina:
――全く、ですか。

こむそう
いやあの、僕のことを色々考えて頂いてるのはわかったし、説明されたリスクの中には、これまで全く意識してなかったものもあったんですけど。最終的に、今回聞いたものはどれも許容できるな、と思ったんで。差し引きぴったりゼロです。

chocoxina:
なるほど。今回のご説明が無駄でなかったのならよかったです。

こむそう
そういえば、一応質問なんですけど。僕のおっぱいを揉むっていうのはこう、どんな感じでなさるつもりですか。

chocoxina:
正面からひと揉みさせていただければ十分です。ご希望に応じて、横から・後ろからなどの方法でも構いませんが。

こむそう
横や後ろはかなり嫌だな。

こむそうさんのご決断

chocoxina:
それでは、最終確認をさせていただくのですが、

chocoxina:
あのー

chocoxina:
おっっぱいをですね?

こむそう
何照れてるんですか。

chocoxina:
すみません、これでいよいよ決まるんだと思ったら急に恥ずかしくなって。

こむそう
今日もっとありましたよ、恥ずかしがるところ。

chocoxina:
失礼しました。

chocoxina:
えー

chocoxina:
こむそうさん

chocoxina:
――おっぱいを、揉ませてください。

こむそう
――どうぞ。

実行

chocoxina:
――それでは

chocoxina:
よろしくお願いします

こむそう
はい。

 

 

 

 

 

――拝啓 こむそう

――思えば私は、昨日まで「あなたに対してどのように配慮するか」ばかり考えていました。それ自体は決して間違いではなかったと今でも信じていますが、当時の自分には、重大な見落としがあったと言わざるを得ません。

――入念に許可を取って、ついにおっぱいを揉ませていただく。その瞬間に平静を失っていたのはこむそうさんではなく、私の方でした。

――人の身体に触れるとき、これほど明確に「許し」を得たことがあったでしょうか。肉親、友人、パートナー、あるいは先日のおっパブ嬢。人と触れ合うとき、常に今回のように入念な確認を取るのは現実的ではないでしょう。

――許可を得ようとすることでかえって問題を生じさせる場面が、社会には少なからずあります。しかし一方で、これまでの私には、そうしたケースを言い訳にして、取るべき許可をおろそかにしていた場合もあったかもしれません。

――ともあれ今日は私にとって、これまでの人生で最も明確かつ完全に、人のおっぱいに触れる許しを得た日でした。

――互いに「いま、これから」接触が起こるのだ、ということがわかっている状態。

――目的が達せられる寸前だというのに、この場から逃げ出したくなるような、強い動揺がありました。

――しかし、私がこれほどまでに平静を失っている一方で、この瞬間のこむそうさんが、驚くほど泰然自若としていたのをよく覚えています。「私の説明にご納得いただけた」ことだけが理由とは、到底思えませんでした。

――後で聞いたところによれば、こむそうさんは小学生時代に、同級生の男子に自分のおっぱいを揉まれた経験があったとのことですね。

――自分の身体のこと、そしてそれに触れられることについて、これまでの人生を通じて、私なんかよりもずっと多く考えてこられたのかもしれません。

――リスクがどうのと、教えを授けるくらいの気持ちで準備を進めてきた私でしたが、今回のことを通じて、むしろ様々なことを教えてもらいました。

――ありがとう、こむそうさん。

おわり

chocoxina:
改めて、今日はありがとうございました、こむそうさん。

こむそう
こちらこそ、は、おかしいな。僕から感謝することないですからね。

こむそう
――僕は、いい意味でなんともなかったですよ。急に触られる驚きもなければ、悪意みたいなものを感じることもなかったし。

chocoxina:
そう言っていただけてよかったです。今日は念願が叶っただけでなく、なんだか、おっぱいを通じて少し大人になった気がします。

こむそう
その発言は、かなりセクハラだと思いますけど。

-fin-

「診療時間表」に見る医者の人間らしさ

医者はこわい。

ちょっと血かなんかを見ただけでこちらが日々酒浸りであることを見抜いてくるし、針や冷たい板や苦い粉で攻撃してくるし、さらに相手によっては、こちらが「風邪ひいたみたいで」とつぶやくだけで機嫌を損ねさえする(なぜなら風邪かどうか判断するのは医者にのみ許された高度な仕事なので)。

そんな「無機質な白衣で屹立(きつりつ)する高学歴」こと医者であるが、彼らの存外に人間らしい一面を、いわゆる町医者の軒先で見ることができる。

診療時間を見やすく記した表。

これというのが、一つひとつ見比べてみると単にバリエーションに富んでいるだけでなく、デザインから何から、今この姿に至るまでに介在したであろう人間のさまざまな思いが感じ取れるのだ。

一つ見ただけではピンと来ないだろうから、これからいくつか紹介しよう。

(以後、歯医者や動物病院などなどの診療時間表についても、特に区別なく紹介していく)

「修正」に見る価値観

まずわかりやすいのは、完成した診療時間表に、後から「修正」がほどこされているパターンだ。

表面の印刷を剥がし、さらに裏面から新しい数字を貼り付けたもの

なるべく自然に見えるような工夫がほどこされたもの(診療時間だけでなく、火曜日の診療可否が修正されている)

バックライトの影響で見えにくくなっているもの

もはや画面左上にある診療時間表の更新は諦め、別途カレンダーを掲示しているもの

せっかくそれなりのお金をかけて印刷したであろう診療時間表を修正する、というイレギュラーに相対したとき、見た目にこだわるのか頓着しないのか、そもそも失敗と断じざるを得ない状況になってしまうのか。こうした対応の違いには、院長の個性や診療に対する態度さえ垣間見えるようだ。

個人的には一番最後、カレンダーを掲示するタイプの病院に温かみを感じるし、ぜひ診療してほしい、と思うのだが、あいにくここは動物病院。

どうにか筆者のような資本主義の犬も診てくれないだろうか。

透明なガラスへの非合理的なこだわり

そもそも、だ。

開業医として一生を過ごすつもりであれば、そのキャリアの中で働ける曜日や時間はいかようにでも変化しそうなもの。

それならば、診療時間表は始めからもっと「後から修正が利くつくり」にしておけばいいのに、と思わないこともない。

コピー用紙しか張り出していない、というハードコアなパターン。後から修正しやすい、という意味では極めて合理的だ

ただどうやら、あの修正しにくそうな構造の背景には、つまらない合理性などではない「何か」が優先された、人間らしい選択があるようなのだ。

ここまでにもいくつか見たような、透明なガラスに描かれた診療時間表。

だがよく見ると、

句点のあたりが若干わかりやすいかな

表面はなんと不透明。そこに文字だけでなく影まで印刷することにより、ガラスが透明であるかのように見せかけているのだ。

わざわざこのような表現を選択しているのはおそらく、開業医の間で「診療時間表といえば、透明なガラスに白か黒の文字で描かれているもの」というコモンセンス、あるいは流行が共有されているためだろう。

この仮説を補強する例が他にもある。

これもよく見ないと詳細がわからないかと思うのだが、採光性の高そうな透明なドアに白文字で診療時間表が描かれており、しかしそれでは見にくかったためか、後ろにグレーの布が後付けされているのだ。

一つのガラスに「光を通す」ことと「光を反射させ、描いてあることを目に届ける」ことを両立させようとしたらこうなることは予測できたはず――とまでは言わないが、もしここの院長に、診療時間表はガラスに描くもの、というこだわりが備わってさえいなければ、この不幸は免れたのではないか、と考えさせられる。

先の例を踏まえて見ると、「診療日に後ろのブラインドが開くことはないんだろうな」と余計なことを考えてしまう

ガラスの採光性と視認性を両立するなら、このように擦りガラスを採用することがベストプラクティスだと思われるが、これ以外に採用例を発見できていない

例外処理に見る、個性と機転

これまで多く見てきた「縦軸に診療時間、横軸に曜日」のフォーマットは、その時間・その曜日に診療をしているか・していないかを一目で判別することができる。

ただ一方で、それ以上の込み入った情報をこの体裁で示すためには、ちょっとした工夫が必要になる。

○と●の区別がある

◎の日は○の日より診療時間が長いのかと思いきや、その逆。子供が学校で混乱するぞ

半円を用いることで「通常の○と違うことを示す」「詳細を書き込むスペースを確保する」という2つの問題を解決する、非常に優れたアイデア

診療の内容と時間、そして土曜日の例外処理でかなり難解になっている

最後のやつなどは、二軸の表に納めるよりももっと適切な方法があるのではないか、と思うのだが、これももしかすると「診療時間表とはこういうもの」という固定観念によってイノベーションが阻害された結果なのかもしれない。

シンプルに文字のみで構成された案内。先の例と比べるとむしろ洗練されているようにさえ見え、なんならイノベーティブな印象まで受ける。医者の腕も良さそうだ。

医者、こわくないかもしれん

診療時間表を詳しく見ていくことで、泥臭い手作業や、常識・流行にとらわれた非合理など、図らずも「医者のカワイイところ」を見出すことができた。

多少健康に気を使っていても運が悪ければ容赦なく医者にかからされかねない昨今、これを機になるべく偏見を持たずに接していきたい。

偏見を持たないどころかむしろ感謝すべきである、という意見についてはまったくその通りだと思います。

chocoxinaが2022年にハマったコンテンツ

エルデンリング

フロム・ソフトウェアアクションRPG。ソウルシリーズにオープンワールドを導入した大作である。

とにかく圧倒的な物量によって「大冒険」を演出してくるゲームで、新しいところに行けば新しいものがある、という原初の喜びが100時間絶えることなく続く。各ボスやダンジョンの攻略難易度がやたら高い点も「ここは一旦置いて他のところを見よう」という動きを誘発しやすく、冒険と戦闘のループがプレイヤーをつかんで離さない。

そもそも戦闘も「まったく何をどうしたらいいのかわからない」という状態には陥りにくく、繰り返し負け続けるなかで成長を感じやすいデザインになっているので挫折はしにくいだろう。聞くところによれば、これまで同社が手掛けてきたゲームよりもバトルに勝ちやすい仕組みが充実しているようだ。

キャラクターが世界観重視の迂遠な言い回しをするせいで進行に迷いやすい、などの問題もあるが、そうしてまで守られているハードファンタジー的な雰囲気は大いに体験する価値ありだ。

筆者は購入してからしばらく、生活に影響が及ぶレベルでのめり込んでしまったので、可能なら冬休み中に済ませてしまうべきだろう。

プロジェクト・ヘイル・メアリー

SF小説。「#火星ひとりぼっち 」のバイラルマーケティングが記憶に新しい映画「オデッセイ」の原作者が送る最新作だ。

太陽からエネルギーを吸い取る謎の微生物「アストロファージ」による地球の寒冷化に対処すべく、宇宙船で一人奮闘する男の物語である。

さて、映画オデッセイの原作「火星の人」といえば、執筆時点でギリギリ実現可能だった技術、あるいは少なくとも可能に見える技術だけを使って「男が一人火星に取り残され、しかも最終的に帰ってくる」という壮大な物語を成立させた傑作だ。

プロットは基本的に「火星に取り残された男が直面する問題と解決策」の繰り返しなのだが、「なぜかNASAのすべてを知っているオタク」こと作者のアンディー・ウィアーが持てる知識を総動員することで、圧倒的なリアリティと予想もつかない展開を実現している。

それを成し遂げた作者が、「アストロファージ」というひとさじのフィクションを手に入れたらどうなるか。それはもう物語が加速度的に壮大になるのである。

太陽系を超えた銀河規模の危機に、銀河規模の解決策。問題そのものであったはずのアストロファージが問題解決の重要なファクターになり、地に足のついた展開の積み重ねが、読者を半ばファンタジーのような結末に導く。

主人公があらゆる科学的・数学的知識を総動員して問題に対処する様子は知的好奇心を刺激して心地よく、主要キャラも魅力的だ。

Splatoon3

人に変身できるイカがインクをかけ合って戦うNintendo製TPSの最新作。

ドパドパと音を立てながらインクをぶちまける快感はシリーズ通して健在。3になって特別大きな新要素が追加されたわけではないのだが、発売時期が仕事の暇なタイミングと被ってしまったためそれはもう狂ったようにプレイした。

チームの人数差が見やすくなるなど細かな改善が効いており、シューターゲームの楽しさを味わい安くなっている点も、のめり込みぶりに拍車を掛けたかもしれない。

最初のシーズンにS+50までランクを上げて以降、今月はややモチベーションが落ち着いたからかパッとしないXパワーのままあまりプレイしていないのだが、ここからもう再開すべきではない気がする。

プレイヤー間で広く言われていることなのだが、このゲームをプレイしているとどうにも味方の問題が目につきやすく、読者の皆様には到底聞かせられないような暴言を吐きながらコントローラーを振ることになるのだ。

RRR

rrr-movie.jp

インド発のアクション映画。バーフバリでおなじみのS・S・ラージャマウリ監督が、1920年代、大英帝国支配下のインドを舞台に男二人の使命と友情を描く。

ほぼ3時間にわたる上映時間の間ひとときもダレることなく刺激的で、筆者は人生で初めて同じ映画を劇場で2回見ることになった。

他に類例のないド派手なアクションシーケンスが連発されるこの作品。ネット上では、普段あまり見ない種類の映画から自分の価値観を守るためか、しばしば「ツッコミ所も多いけど勢いがあって面白いから好し」などと評されることも多いのだが、丹念に見てみると、各シーンにはしっかりと「振り」が効いていて「かっこよさ優先で捨て置かれた不整合」みたいなものが見当たらないことに気づく。

インド映画っていえばアレでしょ、という形で言及されがちなダンスシーンも、本作では「絶対に踊らなければいけない」状況を積み上げた上で見せられるし、最終盤のバトルシーンで矢が尽きないことにすらきちんと理由付けがなされている。そこらの洋画で「弾の尽きない銃弾」が当たり前に使われていることを鑑みれば、RRRを「ツッコミを入れながらワイワイ見るもの」として消費する姿勢はフェアなものとは言えないだろう。

もっともRRRは、そういった小難しいことを考えなくとも楽しめる作品ではある。王道ながら目の話せないストーリーに、屈強な主人公二人のブロマンス、コンセプトアートみたいな絵面がそのまま顕現するバトルシーンの数々が、三時間の間休むことなく浴びせられる。

映画館各所が軒並み戸締まりされてしまった影響か上映の機会が少ないが、まだまだ見られるので冬休み中に時間を見つけて鑑賞してほしい。

TUNIC

store-jp.nintendo.com

かわいい小狐が小さなマップを駆け回るクオータービュー型のアクションRPG。「ソウルライクゼルダ」と評される、謎解きと高難易度アクションを特徴とするゲームだ。

大きな特徴は「ゲームプレイを通じて、そのゲーム自身の説明書を集める」という要素。プレイヤーはかろうじて「スティックを倒すとキャラが動く」ということだけがわかる状態から、ゲーム自体の目的や思いもよらない操作を見出していくことになる。

TUNICは普通のゲームと同様、新しいアイテムを入手すればできることが増えるし、ちょっと探せばすぐに見つかる塩梅の隠し要素も備えている。そこに「説明書を見て新たな操作を知る」というこのゲームならではの要素が組み合わさることで、TUNICをプレイすると「進行度に応じて、マップの同じ場所が全く違うものに見える」という体験を繰り返し味わうことができる。

アクションの難易度については、ゲーム全体の体験に対してややちぐはぐな印象を受けないこともないが、プレイしていて楽しいものではあるし、オプションから無敵モードを使って省略することも可能だ。なるべく気負わず、思わずペンとメモを取りにいくことになるトゥルーエンドまで突き進んでほしい。

キングスジレンマ

レガシー型(ゲームの結果が次回以降に引き継がれるタイプ)のボードゲーム。各プレイヤーはそれぞれ異なる貴族の代表として、数世代に渡り国政に関するさまざまなことを投票によって決定する。

例えば、国民が飢えに苦しんでいるとき、他国から売り込まれた奇妙な色の小麦を輸入すべきだろうか。提案を可決した結果王国に奇妙な疫病がはびこったとしても、逆に否決して国民が飢えに倒れたとしても、議決にあたってイニシアチブを握っていた貴族は歴史に名を残す(残してしまう)ことになる。

各プレイヤーはこのような厳しい決断を繰り返しながら、十数回に及ぶプレイの果てにたどり着く何か(説明書によって軽く示唆されるのみで、詳細は最終盤まで明かされない)に備えて、議会での影響力を拡大していくことになる。時には国の情勢や短期的な権力ばかりでなく、自らが属する家系の思想信条を優先すべき時もあるだろう。

ゲームの基本となる投票のシステムにしっかり小技が効いていて、すべてを投げ打ってでもこの議題は可決したいだとか、否決はしたいが責任は別の家系に負わせたいだとか、そういった高度な目標を実現するために各プレイでしっかりと考えどころが発生して飽きが来ない。倫理観や正義感を問われるハードな議題に対処する面白さや、おぼろげに見える最終目標に備えて中長期的な立ち回りを検討する戦略性など、このゲームならではの魅力が多い作品だ。

プレイのハードルが高い(4人前後のメンバーを合計15時間程度拘束する)ためか国内では値崩れ傾向だが、逆に言えば始めるならば今がチャンスである。