chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

chocoxina Goodies代表ことライターchocoxinaはいったい何をしているのか

要はポートレートです。

外部で書かせて頂いた記事

suumo.jp

最近は業務委託を受けて金融系メディアの編集・ディレクションを行っています。
お仕事のご用命はchocoxina(at)gmail(dot)comまで。

■前職の実績

SNSとかでウケたもの

「ウケた」の基準は主観によります。

chocoxina.hatenablog.com

note.com

chocoxina.hatenablog.com

外部で評価いただいたもの

webメディア(主にデイリーポータルZなんですが)の投稿企画に採用されたり、賞で入選したもの。

chocoxina.hatenablog.com

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ウケたとか認められたとかどうでもいいから読んでほしいもの

主に愚痴です。

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「落書き集めて20年」のベテランに学ぶグラフィティの楽しみ方

繁華街を歩いていると、そこかしこで見かける落書き(グラフィティ)。

普段目にしても、治安の悪化を憂いながら通り過ぎることの多い存在だが、

「あのバンクシーもグラフィティ文化に連なる存在」「グラフィティはHIPHOP文化を形作る要素の一つ」

と聞けば、ただ見過ごしたままでいるのはもったいないような気もしてくる。

またこの手の落書きは複数の街で同じ意匠のものを見かけることも多いため、何度も見かけるうちに興味を持った、という人もいることだろう。

今回そんな、我々を奇妙に惹きつけるグラフィティについて、有識者に話を聞いた。

なぜ路上に絵をかくのか、どんな人がかいているのか、「鑑賞」する際の見どころはなにか――そのあたりを知ることができれば、路上の落書きをより深く見られるようになるはずだ。

※落書きは器物破損や建造物損壊などの罪に問われる可能性があります。本稿はそれらの行為を推奨するものではありません。

この記事に出てくるひと

chocoxina(ちょこざいな): この記事を書いているライター。品行方正で遵法意識も高いものの、グラフィティは街歩きの一環でよく見る。

K氏: 20年近くグラフィティを観察・収集している。本人が落書きを行っているわけではないが、今回は氏の交友関係に影響が出ないよう、完全匿名でインタビューに応じていただいた――そういうわけなので本稿におけるK氏の描写はいかなる実在の人物とも関連付けられるべきではなく、つまり彼はまったく完全に架空の人物だと考えられるべきだ。いいね?

落書きってやっぱりナワバリのためにやるの?

chocoxina:
そもそもグラフィティをやる人たちって、いったいどういう目的なんでしょう。世間ではなんとなく「ナワバリを誇示したいのかな」という印象を抱いている人が多いかと思います。

K氏:
そういう人ももちろんいますが、目的はライター※1によって様々ですね。 芸術性を重んじた活動を行って"グラフィティは破壊行為ではなく美しい犯罪だ(graffiti is not vandalism, but it is a beautiful crime)"というカッコいい言葉を残したライターがいる一方で、対象的にvandalism(ヴァンダリズム:破壊行為のこと)自体を目的としたライターもいます。

※1: グラフィティを"かく"人のこと。原則として絵を描く者ではなく字(署名)を書く者なので、ペインターではなくライターと呼ぶのがメジャー。

chocoxina:
表現活動のためにグラフィティを書く人というと、メジャーなところではバンクシーなどですね。

K氏:
はい。とくにアメリカでは彼に限らず、芸術性を評価されたライターがアーティストやデザイナーとして出世する例が少なくないんです。治安の悪い地域の若者が、その道を目指してグラフィティを始めるケースもあるかもしれません。

chocoxina:
川崎の高校生がラップを始めるみたいに、生きるためにグラフィティをするってことか……(参考: https://youtu.be/I4t8Fuk-SCQ?t=240

K氏:
そういった例とは対象的に、ヴァンダリズム(破壊行為)を重視したアーティストも多いですけどね。例えば今持っているものの中だと……

おもむろにめちゃくちゃでかいファイルを取り出すK氏。

chocoxina:
ちょっとすみません、そのファイルは?

K氏:
僕が集めたラベル(ここでは、路上に貼るステッカーの意)のコレクションです。ウチには同じファイルがもう30冊と、未整理のダンボールが数十箱あります。

chocoxina:
……ひょっとして「全て」を持ってるんですか?

K氏:
「全て」ではないです。

この手のラベルは、ライターが自分のサイトで販売していたり、あるいは直接会った際にくれたりするらしい。「路上のものを剥がして集めることはないんですか?」と聞いてみたところ、「やる人もいるし、実際ライターの来日スケジュールを知っていれば貼られていそうな場所を探すのも容易だが、"業界"的にはあまり褒められたものではない」とのこと。

K氏:
ともかく、ヴァンダリズム(破壊行為)を重視したライターというと、例えばこのタグで知られるクルー(徒党)ですね。

K氏:
彼らはドイツのベルリンを中心に活動しているんですが、線路で非常ベルを押して電車を止め、その車両を取り囲んで巨大なグラフィティを書いたりします。

chocoxina:
それはもうテロでは???

K氏:
ライターの間では、電車に自分のグラフィティを書いて走らせるのが最高の名誉、なんて考えもあるんです。日本の電車が同じことになったらすぐ車両が交換されてしまいますけど、海外だとそのまま使われるケースも多いですからね。

chocoxina:
確かに、ニューヨークの地下鉄の画像を見ると、しばしばグラフィティが書いてある気がします。

K氏:
あとはやはり、縄張りを誇示するような目的で活動する人もいますよ。「グラフィティ文化の起源」には諸説あるんですが、そのうちの一つに「好きな女の子に自分のことを知ってもらうために、街中に名前と番地を書いた」というのもあるんです。

chocoxina:
へー。金を譲ってほしいから口座番号を歌にした人みたい。

K氏:
何ですかそれ。

K氏:
ちなみに街中には、「縄張り」をもっとシリアスに主張しているグラフィティもあります。

場所は伏す。

K氏:
例えばこれは、いわゆる半グレにあたる〇〇〇〇系の××××氏が書いたタグ(※詳細後述)です。万一この上から何か書いたりしたら△されるかもしれませんし、記事にも出さないほうがいいですよ。

chocoxina:
大丈夫です。今言ったこと一個も載せられないので。

※落書きで目立ってアーティストになろう、などと一瞬でも考えた読者諸氏はどうか考え直してほしい。運良く命が助かっても、日本では器物損壊等の罪に問われる可能性がある。

タグ < スローアップ < ピース

渋谷にあるグラフィティについてもお話を伺いました。

chocoxina:
ところで「タグ」というのは……?

K氏:
グラフィティの手法の一つですね。一色でササッと書かれたものを「タグ」、2色使って縁取りがほどこされたものを「スローアップ」、もっと大掛かりなものを「ピース」と言います。特別手のかかったものを、ピースと区別して「マスターピース」と呼ぶこともありますね。

「ピース」の例。
「スローアップ」の例。
「タグ」の例。

K氏:
ライターの間にもルールがあって、人のグラフィティの上に何か書くなら、より手間をかけたものでないといけません。タグの上に書くならスローアップかピース、スローアップの上に書くならピース、といった感じです。

chocoxina:
それって例えば、おでんをリメイクするなら、もっと味の濃いカレーとかにしないといけない、みたいな感じですか?

K氏:
違います。

chocoxina:
ところで、ライター間における決まりごとというと、グラフィティを書く場所にはルールがある、なんて話を聞いたことがあります。たとえば商店や公共物には落書きするけど住居はダメ、みたいな。

K氏:
そのあたりは土地によるかもしれません。なんだかんだ言って結局みんなアウトローですし。

chocoxina:
なるほど。おでんをカレーにするかどうかも土地によりますもんね。

K氏:
それ多分chocoxinaさんの実家だけですよ。

chocoxina:
これ、スローアップの上にタグが書かれてるようにも見えますね。マナー的に大丈夫なんでしょうか。
いやあの、世間のマナーでいえば落書きはみんなアウトなわけですけど。

K氏:
こういう場合、考えられるケースがいくつかあります。まずはそれぞれのライターの間に「ビーフ」が発生しているケースです。

chocoxina:
ビーフというと、抗争のことですね。ラッパーがよく言ってるやつ。

画像出典:https://www.flickr.com/photos/urbanscrawl/420153465/

※NYの著名な複数クルー間でビーフが発生している例(大きな画像はぜひ撮影者のflickrで)。90年代には、ライター同士の抗争で人が死ぬことも珍しくなかったという。

chocoxina:
――ということは、これ書いた人たちは今めちゃめちゃ喧嘩してるってことですよね? 本人が戻ってくる前に離れたほうがいいのでは……。

K氏:
いえ、おそらくこれは別のケースで、ライター本人が作品に改めて「署名」をしているパターンだと思います。ある程度手がかかった作品の場合、本人はもちろん、手伝ってくれたクルーメイトや他のライターがタグを書くこともあるんです。

先程の画像の「タグ」っぽい部分を拡大したもの。

chocoxina:
なるほど。たしかにさっきのグラフィティはよく見てみると、本体の縁取りとタグ(署名)が同じスプレーで書かれているように見えますね。

こちらは「ビーフ(抗争)」が発生していると思われる例。見方がわからなければただの無秩序な落書きだが、ここまでの知識を踏まえると「スローアップ(2色)」の上に「タグ(単色)」、さらに上に「ラベル」があり、当事者間における相当な緊張状態を感じ取ることができる。次見るときはこれら全てが「生首をこすりつけた血糊のタグ」で上書きされているかもしれない。

ライターの「横のつながり」

chocoxina:
そういえば、ライター同士がクルー(徒党)を組んでいるケースがあるんですね。

K氏:
はい。グラフィティをよく見ると、ライターの名前に加えてクルーの名前が書かれているパターンも多いですよ。たとえばこのラベルに書かれているクルーは世界最大と言われていて、日本人も何人か参加してます。

今回は様々なコンフリクトを避けるため、日本人のライターに関連する固有名詞は文中に明記しないこととします。

chocoxina:
日本人も! それってやっぱり、路上で活動しているうちに海外のメンバーから声がかかる感じですか?

K氏:
そうですね。もともとライターって、国をまたいでも横のつながりが非常に強いんです。日本のライターが海外に行くときは、現地のライターが食事からスプレー缶まで工面してくれますよ。

chocoxina:
おお……無法者とは思えないあたたかみ……。chocoxinaの中の少女がギャップに悶えてます。

K氏:
しまっといてください。

K氏:
ともかく、そういうライター同士のつながりに注目してグラフィティを見るのも面白いかも知れません。例えばこれはもう亡くなったライターのタグなんですが、恐らく本人が書いたものではないですね。

chocoxina:
それって、パクリってことですか???

K氏:
違います。これは恐らくトリビュート(表敬の証)でしょう。こうやってクルーメイトのタグを書く行為は、ライターの間でも容認されています。

chocoxina:
読者の皆様に言っておきますが、ここでいう容認っていうのは文化の話であって法的な話ではないですからね。

グラフィティ出身のアーティストについて

chocoxina:
冒頭で仰っていたように、ライターがデザイナーやアーティストとして有名になるケースもあるんですよね。

K氏:
はい。例えばこの人は日本のライターなんですが、Adidasと世界レベルのコラボを実現した実績がありますし、今は油彩画で個展を開いたりしていますね。

これも一応名前は伏せておきます。ちなみにグラフィティというと大抵こういった感じの「読みにくい」文字で書かれているが、K氏曰く「慣れれば読めるようになる」とのこと。そもそも彼らの作品は「署名」なので、(我々が普段する署名と同じように)可読性は二の次なのだ。

K氏:
彼はもう結構なお歳のはずなんですが、デザイナー・アーティストとして名を立てた後も現場に出てグラフィティを書いてるんですよ。

chocoxina:
ひっ……!これまでの功績なり家庭なりがチャラになるリスクを負ってでも、ライター精神みたいなものを大事にしてるってことなんでしょうね……。

K氏:
あとは、いま現代美術家として知られている「KAWS」もグラフィティから名を挙げた一人です。手塚治虫とコラボしたこともありますよ。

chocoxina:
この目がバツの感じ、見たことあります!

K氏:
KAWSのステッカーは僕もいろいろ集めてるんです。例えばこれ。

警視庁の人へ。怒らないでください。

chocoxina:
ピーポくんじゃん!!!

K氏:
ピーポくんKAWS以外のグラフィティライターにもかなりウケてるんですよ。別のライターが発行したZINE(同人誌みたいなもの)にもこうやってまとめられてますし。

chocoxina:
ほんとだ……animeっぽい感じとか、イジることで反体制になる感じがソソるんですかね。

「認められた」ライターたち

chocoxina:
技術やセンスがあるとはいえ、仮にも違法行為で名を馳せた人が名声を集めるというのは、日本の感覚からするとちょっと奇妙な感じがします。

K氏:
グラフィティの本場とも言えるアメリカだと、「過去と能力は別」という意識が強いのかもしれませんね。 たとえば、ニューヨークの有名なクルーで、店から棚ごと盗んだスプレーでタグを書きまくっていた「IRAK(アイラック)」という悪名高い集団がいるんですが、そこのライターがハイブランドのagnès b.とコラボした例なんかもあります。

※参考:https://web.archive.org/web/20150822002642/http://www.agnesb.co.jp/graff/

chocoxina:
あああの、アグネス……

K氏:
アニエスベーです。

chocoxina:
ところで、スプレーを盗む上にそれで落書きまでする、っていうのは相当なアウトローですね。

K氏:
昔のライターの間では、盗んだスプレーを使うのがカッコいい、という文化があったんですよ。さすがにラックごと万引するとなると、Rackingという名前がつくくらい珍しかったですけど。

chocoxina:
それが名前の由来になってるんですね。

K氏:
他にも面白い例として、世界中に「BNE WAS HERE」というタグを貼りまくっていたライターがいます。BNEはサンフランシスコでお尋ね者になるくらい精力的に活動していたライターなんですけど、あるとき彼が、世界中の「水」に関する問題を解決するために財団を設立したんです。アメリカでは法律上、そういった慈善団体に寄付をすると税額控除の対象になるので、つまりBNEの活動に税金が使われるようになったんですよ。

chocoxina:
めちゃめちゃアメリカって感じだ……。

ちなみに、BNEのラベルは日本にもめちゃくちゃ貼られており、23区の主要な駅なら1時間も探せば見つけられるはずだ。恐らく東京以外でも同様だろう。

ラベルの材質もさまざま

chocoxina:
タグといえば、chocoxinaは以前その「素材」に注目していくつか収集していたことがあるんです。日本だと、テプラを使った例や、宅急便のステッカー類を使った例がありました。

K氏:
テプラはともかく、宅急便の荷札はアメリカでもよく使われてます。USPSアメリカ郵便公社)のラベルがメジャーで、特定の時期に発行されたレアなものはとくに「Blue top」という名前がついていたりしますね。

chocoxina:
名前のとおり上のところが青くて、ちょっとオシャレですね。

K氏:
荷札に限らず、ライターの間では入手しやすいものがグラフィティに使われる傾向があって、例えばこの「ハロータグ」なんかは日本でも見かけるかと思います。もともとはアメリカで、パーティーの際の名札代わりに使われるシールですね。

chocoxina:
確かにこのデザイン、路上でめちゃめちゃ見るな……。

K氏:
あとはこの、郵便局で貰える関税告知書(CN22)なんかも、まとまった量が入手できるからか世界中で人気が高いです。

chocoxina:
それはいいけどなんで持ってるんですか。

K氏:
ライターに会ったとき、これにタグを書いてもらうんです。たくさん持ってるんで差し上げますね。

chocoxina:
え、あ、うす。ありがとうございます。

多く貼り、消されないための工夫

chocoxina:
もう一枚頂いたこれは……?

K氏:
eggshellというブランドのものですね。

K氏:
さきほど紹介したBNEというライターが使い始めた特殊な材質のステッカーで、一度貼ると、端をめくろうとしても細かくボロボロと砕けてしまうので剥がしにくいんです。

chocoxina:
おお……貼られた場所の権利者からしたらたまったものじゃないですが、その分自分の作品が永く残るんですね。

ちなみに、どうしてもeggshellのステッカーを剥がしたい場合、貼られた直後であれば上からダクトテープなどを貼ってまとめて剥がせばうまくとれる場合があった。そうでない場合はヘラなどで削り取るようにするのが最も効率がいいと思われる。自宅などに望まないタグを貼られた方はぜひ参考にしてほしい。chocoxinaが自分のラップトップを犠牲にして得た知見だ。

K氏:
ライターは、自分の作品を長く残すためにいろんな工夫をしてるんです。グラフィティが消されることをライターの間で「buffされる」って言うんですけど、クルーによってはbuff対策として、上からペンキを塗られても時間が立つと表面に滲み出てきて再び見えるようになる、という謎のインクを使っていたりします。

chocoxina:
その技術、どこかしらの企業が金を出して買うべきでは???

buffされたグラフィティの例。これは「にじみ出てきた」わけではなく単に消しきれずに残っただけと思われるが、それにしてもこの絵はもう少し気合を入れて消すべきだったのでは。

K氏:
他にも、人の手が届かないように天井などの高所に書く「ルーフトップ」なんかもbuff対策の一例ですね。

chocoxina:
たっっっっっっけ!これってハシゴとかに登って書くんですかね。

K氏:
はい。ルーフトップは足場が不安定な分いろんなリスクがあって。例えば海外だと、地権者に現場を押さえられて「Hold up!(手を挙げろ)」と銃を向けられたものの、梯子から手を離せなくてそのまま射殺されてしまったライターなんかもいます。

chocoxina:
危険すぎる。ただでさえ落下したり捕まったりするリスクもあるのに……。

※繰り返すが、読者の皆様は絶対に真似しないでほしい。最近は大きなビルに梯子をかけるとその場で警報が鳴るケースもあるようだ。

K氏:
別のbuff対策としては、電話ボックスなどのガラス面にエッチング液でタグを書く手法もあります。文字のところだけが擦りガラス状になるので、ほぼ永久に消えません。

chocoxina:
これ、消えかかった落書きかと思って見てたけど、むしろ逆なのか……。もし「書きたて」を見つけても触らない方がいいですね。

K氏:
たぶん指が溶けますよ。

K氏:
あとは珍しい例として、そもそもインクで書く以外の表現をするライターもいます。このInvaderがそうですね。

宮下公園の高架にある。見たことのある人も多いかもしれないが、実はこれ、公式のものではないのだ。

chocoxina:
インベーダーではなくアトムでは???

K氏:
Invaderというのはライターの名前です。

chocoxina:
ややこしいな。

K氏:
とにかく、彼はこうやってインクの代わりにタイルでグラフィティを描いているんです。ただでさえ剥がしにくい上に、それでも剥ぎ取って転売されるくらい有名になってからは、作品の縁にセメントを盛り付けて、ヘラなどを差し込みにくくしています。

chocoxina:
これを剥がそうと思ったら、ちょっとした工事ですね。

「工事」が試みられた後のグラフィティ。先に紹介した某日本人ライターとのコラボとのこと。

K氏:
ちなみにこのライターは、自分の作品を撮影してコレクションするための専用アプリも公開しています。知り合いのマダムがそのフルコンプをライフワークにしてますよ。

chocoxina:
アナーキーな老後だ。

※そのアプリがこちら。https://space-invaders.com/flashinvaders/

東京湾以外にもバンクシーがあった

chocoxina:
Invaderのタイルみたいに、有名になって価値が認められるようになると、コレクションとして剥がされたり、転売されたりといった例があるんですね。東京湾の「バンクシー作品らしきネズミの絵」も、今は大事に展示されてますし……。

参考: 防潮扉の一部に描かれた「バンクシー作品らしきネズミの絵」の展示について

K氏:
バンクシーといえば、かつて日本に、「バンクシー作品らしきネズミの絵」以外にも彼のグラフィティがあったんですよ。

chocoxina:
バンクシー作品らしきネズミの絵」以外にも!?

当時の写真を見せてもらった。撮影時すでに消されてしまっていたものの、一部隠れていた部分だけが残っている。

K氏:
彼が今ほど有名ではなかった頃の話で、今はもう、そのグラフィティのある施設が取り壊されてしまったんですけどね。当時「どうせ壊されてしまうなら欲しい!」と思って、工事現場のおじさんに「10万渡すからあの絵を取ってきてくれ」って名刺を渡したんですが、連絡来なかったな……。

chocoxina:
(工事のおじさん、いきなりスパイ映画みたいな依頼されてビビったんだろうな)

次に来るライターは?

chocoxina:
Kさんくらいグラフィティに詳しいと、「KAWSバンクシーの次に来るライター」が分かったりするんじゃないですか? 次のブランドコラボや個展の物販を押さえて、金持ちに売りさばきましょうよ!

K氏:
次に来るライターの話は実際よく聞かれるんですが……グラフィティに興味を持ったなら、単純に自分が「いい」と思ったものにお金を落とせばいいと思うんですよ。今は多くのライターが自身のサイトを持っていますし、直接ラベルやZINE(冊子)なんかを買うこともできます。

一例。氏のステッカーは日本を含むアジアの繁華街で相当な数見ることができる。

chocoxina:
まあ……そりゃそうなんですが……。

K氏:
そもそも「だれそれの作品に数百万の値段がついた」というのも、大抵の場合売り手と買い手の二人がその値段で合意した、という話でしかないじゃないですか。我々も、数千円、数万円から同じことをやればいいんです。

chocoxina:
たしかに……そう考えると、高値のつきそうなアーティストを探すのって、間接的に金持ちの好みを伺ってるみたいでダサく思えてきたな。

K氏:
また個人的には、世の中の人達がもっと気軽にアーティストにお金を落とす世の中になってくれるといいな、という願いもあります。

chocoxina:
なるほど。たとえば将来、多くのグラフィティライターが作品で生計を立てられるようになって、さらにそのお金を都市に還元するような仕組みができれば、都市景観とグラフィティが「共存」する道も開けるかもしれませんね。

落書きは器物破損や建造物損壊などの罪に問われる可能性があります

世の中の「体制」が強固になればなるほど、「反体制」の文化は活況になるもの。

そしてそんな「反体制」の文化が、そのあり方ゆえに人の心を動かすのもまた、否定しがたい事実だ。

グラフィティについても、無批判に受け入れることは断固として避けつつ、また都市景観にも思いを馳せながら、バランス良く楽しんでいきたい。

ここからは、記事中に収めきれなかった画像などを紹介しよう。

アラフォー世代であれば町中で見たことがあるかもしれない「力士シール」の原本も持っているK氏。

かなりウィットに富んだ、というか挑発的なグラフィティライターの名刺。

K氏は本人曰く「知識が古いので最近のライター事情についてはあんまり」とのことだったが、その分多少古びたものも見逃さない。これも世界的に活動するライターのタグとのこと。

あなたの街にもあるかもシリーズその1。

あなたの街にもあるかもシリーズその2。

あなたの街にもたぶんある「違法荷札」のふしぎ

まずはこちらの画像をご覧いただきたい。

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なんの変哲もない、路上の落書きである。

繁華街の薄暗い通りに大量に貼られ、景観を悪化させているおなじみのアレだ。

さて続いては、こちらの画像を見てみよう。

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さきほどの画像と同じような落書きだが、なにか奇妙な数字が書かれている。

4桁区切り、都合12桁の数字が書かれたこのサイズの紙、というと、なにか察するところのある人もいるかもしれない。

続けてこちらの画像を見ていただければ、その気づきは確信に変わるだろう。

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そう、ここまで紹介した画像はすべて(1枚目も含めて)宅急便の荷札が使われた落書きシールである。

実は、路上に貼られた落書きのうち決して少なくない割合が、これらのように荷札(ここでは宅急便類に貼られるシールの総称とする)で作られているのだ。

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本稿は、こういったいわば「違法荷札」、およびそれらを貼って回っている「荷札族」とでも言うべき人々に関するレポートである。

違法荷札の定着について

さて、今回彼らを「荷札族」と呼称してはみたものの、違法荷札をボムる(路上にこの手のシールを貼って回ることを指す隠語)徒党というのは決して特定少数の集団ではない。

これから主に渋谷で見かけた違法荷札を紹介していくが、そんな狭い地域内でも描かれている意匠はさまざまで、個人あるいは団体の署名と思われる部分だけでも相当の種類がある。

また一口に荷札といっても、実際使われるものはバリエーション豊かだ。

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ここまでメインで紹介してきたような、狭義の荷札である「送り状」

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それを小さく切ったもの

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送り状の土台だけでなく、伝票部分を残したもの

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オフィスの引越のときにダンボールに貼られてるやつ

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ワレモノ注意

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時間帯指定

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お酒が入ってます

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天地無用

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上積厳禁

下の壁なんかは、まるごと引っ剥がしてヤマトに持っていけば、そのまま発送してオフィスの隅に立てかけてもらえそうな充実ぶりだ。

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「荷札族」と呼びうる人々は、すでに一定の広がりを見せていると考えるべきだろう。

違法荷札の発祥に関する考察1.模倣・カウンター・メタファー

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さて、そもそも彼らはなぜ「荷札」を用いて自己表現を行うのだろう。こういったカルチャーは、どのような経緯で誕生したのだろうか。

自分がまず最初に立てた仮説は、なにか既存の文化におけるかっこよさを表現しているのではないか、というものである。

数年前、ヴェイパーウェイヴが流行したころに中野でテプラを用いた落書きが発生したように、荷札はなんらかのカルチャーと親和性が高いのかもしれない、と考えたのだ。

たとえば、荷札の中でも「配達日時指定」や「引っ越し用」のものは、古くから落書きによく使われるステッカーとやや意匠が似ていなくもない。

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blockheadmotors.stores.jp

近いと言われればまあ近いかな、くらいの親和性ではあるが、たとえば昨年末の筆者が年越しそばをカップ焼きそばで済ませたことに比べれば、十分妥当な置き換えといえよう。

このくらいの差異ならばむしろ、"HELLO my name is"ステッカーに対するカウンターカルチャーとしても機能するかもしれない。

(ちなみに、"HELLO my name is"ステッカーはもともとアメリカのパーティで名札として使われるもので、そこから落書き用途に使われるようになったらしい)

またこの「ワレモノ注意」なんかも、単体で見る限りは「ワレモノ」をなにかの比喩と解釈する余地も見いだせなくはない。

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無遠慮に法を冒して街を汚す徒党も、ガラスのように壊れやすい心の持ち主だったりするだろう。このくらいの矛盾は、我々がSNSで毎日見ている地獄と比べればかわいいものだ。

さて、実際のところ、これまで紹介した仮設はいずれも、冒頭で紹介したような「送り状」を使ったステッカーに意味を与えられていないことを認めなければならない。

これについて統一的に説明する仮説として、メッセンジャー文化との関連なども指摘できなくはないが、バイク便と宅急便を同一視するのはやや無理があるだろう。

そこで登場するのが次なる仮説、いわば「実用説」である。

違法荷札の発祥に関する考察2.実用説

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そもそも荷札族が、どのようにして荷札を調達するのか、ということを考えてみる。

彼らを一旦若者であろうと仮定すると、学業などの傍ら、コンビニやドラッグストア、宅配業者などでバイトをしている例も少なくないだろう。

筆者の過去のバイト経験(コンビニ)を思い返すに、店内にあった宅急便の荷札は希望者に無料で渡してよいことになっていたし、とくに棚卸しの対象とはなっていなかったはずだ。

つまり、コンビニバイトやその友人にとって、荷札はきわめて「調達」が容易なのだ。

さきほど「一般的な落書きシール」として紹介した「HELLO my name is」ステッカーは、1ロット100枚前後が1000円少々。決して高いものではないが、それでもバイトで暮らす学生などにとっては手痛い出費だろう。

すぐ手の届くところに無料の素材があれば、代わりにそれを使ってしまえ、という発想はいかにもありそうだ。

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また、宅急便のものとは異なるこの手の荷札は、もしかすると一部のオフィスや引越し業者で手に入るものかもしれない。

そうでなくても、ホームセンターあたりで1ロット20枚100円程度で手に入るため、「ふつう」のシールよりもうんと初期投資が少なくて済む。

nafco-online.com

こちらについても「入手のしやすさ」で説明ができそうだ。

遍在する違法荷札およびその見分け方

さて、仮説が立ったら次は検証である。

一番手っ取り早いのは、荷札族の「現場」を押さえるなどして当事者に話を聞くことだが、仮にも法に触れる行いをしているひとたちが、chocoxinaのようなよそ者に話を聞かせてくれるとは考えにくい。

実際、筆者もネットでかなり「当事者」に近い人物を見つけ、荷札族シーンについてメールで問い合わせたのだが、今のところ返信は得られていない。

ほかにも、chocoxinaの古い友人に、多少そちらのカルチャーに明るい者(元ストリートダンサー)がいるのでそちらのツテを頼ろうかとも考えたのだが、当人曰く

「ストリートカルチャーでちゃんと活動している人間は(世間における立場をわきまえているから)なるべく外では大人しくするのが身上で、仮に身内にタギング(シール貼り)をやっていた奴がいるとしても決して教えてくれないだろう」とのことだった。

となればこちらは、あくまでも観察に徹して傍証を集める必要がある。

もし違法荷札が、ある種の流行によってではなく実用上の理由で生まれたものならば。

それこそ人類史において、道具としての「火」が同時多発的に使われだしたように、渋谷以外の、文化的に隔たりがある地域でも同様に違法荷札が確認できるはずだ。

(むろん、広範囲で違法荷札が確認できる、というだけでは実用説の完全な裏付けとはならないが、「"HELLO My name is"ステッカーのカウンターとして荷札を使うような込み入ったコンテクストが、地域を超えて伝播した」などという説よりは蓋然性が高いと示すことにはなるだろう)

そう思って各所の繁華街に出向き、また近所に住む友人に協力を依頼したのだが、結論からいえば「あるわあるわ」であった。

笹塚・明大前

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池袋

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中野

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秋葉原

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もう「東京にある落書きシールのうち、3〜5パーセントは違法荷札」くらい言ってしまっても大きな間違いではなさそうだ。

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これまでただの白いシールだと思って見ていたものも、いったん「違法荷札」について知った者の目にはその多くが「送り状」であることがわかる。

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あの馴染み深いサイズ感に、印刷された数字やバーコード。上に貼ってあった伝票のノリが3辺に残る感じや、底面のノリが途切れている部分などに気をつければ、みなさんも近所で違法荷札を見つけることができるだろう。

また「枠付きのシールだと思ったら引っ越し用の伝票」というパターンについては数こそ少ないものの、その気で探せば送り状よりは気づきやすいはずだ。

今回の調査範囲は都内に限られているが、もし他県で荷札を見つけたらぜひ筆者に共有してほしい(Twitterハッシュタグ #違法荷札 とかで)。

違法荷札文化の発展

さて、違法荷札がどのような経緯で発生したにせよ、数が増えればそれは流行となり、流行にはカウンターが生じる。

違法荷札界隈にも「ちょっと変わった荷札」を使う潮流が存在するのだ。

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関税告知書である。おそらく日本郵便あたりで働かないと手に入らないだろうし、なんとなく、くすねたのがバレたらものすごく怒られそうな気がする。

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クリーニングに使う荷札と思われる。宅急便のコンテクストから外れており「実用説」を補強する傍証としても見どころがある。(2月7日追記:こちら宅配業者が荷物をまとめて管理するためのカゴに貼り付けるタグだそうです。@masa_game_chさん情報提供ありがとうございます。)

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USPS、すなわちアメリカ郵便公社の荷札である。いかにも入手困難そうな荷札は、他の荷札族からの羨望を受けること間違いなしだ(なお、本エントリに彼らの表現や思想の拡散に寄与する意図はないため、"思想"が感じられる部分にはその内容を問わずモザイク処理を施しているが、表記は日本語であった)。

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韓国のものもある。日本で取扱いがあるとしたら日本郵便あたりだろうか? 上から書かれた意匠がハングル的でもあるため、観光客が貼っていった線も考慮せねばならないが、その場合「違法荷札は海外発祥で、ストリートキッズにとっては昔からの常識だ」という説も立ち上がってくる。

ちなみに、諸般の事情で公開は避けるが、現在国内で「グラフィティ(落書き)用途への転用を示唆しながら、主に国外向けに日本の荷札を販売するサイト」の存在も確認している。

おおもとの発祥が国内外のどこにあるかはともかく、日本では日本の違法荷札文化がすでに定着・成熟していることは間違いないだろう。

今後、日本の荷札を海外の路上で目にする可能性もありそうだ。

落書きは器物損壊や建造物損壊などの罪に問われる可能性があります

以上、東京都内の「違法荷札」事情について紹介させていただいた。

日本各地や国外での状況についても興味はつきないが、ともかく都内の広い範囲にわたって発生していることは確認できたので一段落とさせていただく。

今後も、彼らの自己表現に深入り・肩入れしない範囲で観察を続けていく所存だ。

2021年買ってよかったもの

昨年は夏頃から転職活動を始め、その過程でうっかりフリーランスになってしまった。

そういうわけで下期はブログで冗談を言う余裕もない状態だった(そろそろ再開したいですね)のだが、それはそれとして昨年買ってよかったものについて紹介したい。

以下それなりのアフィリエイトリンクが含まれます。

sphh jp

booth.pm

近頃ギークの間で話題の「自作キーボード」のキットだ。キーボードとして利用するには、以下のリンクから買えるもののほかにキーキャップ(文字が書いてある部分)とキースイッチ(文字通り各キーのスイッチとしての役割を担う部品)、および各種工具類が必要になる。

自作キーボードというと、よくメディアで取り沙汰されるのは指の移動距離を減らそうとした格子配列のモデルや、全てをホームポジションで完結させる超省スペースモデル、果ては宇宙海賊が管制室で叩いているような大仰なものなどが印象的だが、今回筆者が組んだのはより一般的な配列に近いキット。

エンジニアに人気のキーボードを踏襲しつつ左右分割型にして肩への負担を減らした、という設計思想だ。

筆者はキーボードを自作する、ということ自体への興味はさほどなかった(現に組立時ははんだ付けの苦労やその失敗による部品の破損等で楽しむどころではなかった)のだが、そもそも世の中には日本語配列の分割キーボードの選択肢がほとんどなく、自分がこのキットを買った当時は自作するか、あるいはメーカー終売品をメルカリで探すかする他なかったのだ。

そんな苦労はともかく組み上がってしまえば使い心地は見た目の通りで、自分の頼りないはんだ付けに物理的な力がかかるような場所も(ほとんど)なく、更には使われているファームウェアが意外と器用で、作る前に想定していた以上にキー配列の融通が効く。

とくに単押しと長押しに別の機能を持たせられる、というのが便利で、これを駆使して右手のホームポジションをカーソルキーだのテンキーだのに切り替えながら作業できるようになると、なるほど確かにこれらの機能を前提になるべくキーの少ないキーボードを組みたくなる気持ちもわからないではない、という気分になる。

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(ところで、分割キーボードやそのキットを選ぶ際には、物理的なキー配列に注意すべきだろう。6,y,bキーは人によってどちらの指で取るかが異なる上に分割する場合どちらに置かれるかがモデルによってまちまちで、またsphh jpのように"特定の小型キーボード"を模したモデルはshiftキーの列が通常よりも若干左にズレているため慣れるまではミスタイプが増える)

ちなみに、キーキャップはCORSAIRのものを使っている。

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日本語配列の記号が刻印されたキーキャップはそもそも選択肢があまり多くないのだが、これはLEDを透過させるために2色形成になっており、その分肉厚で重量が増すためか打ち心地がいい。

このキーキャップしかり、壊した部品の代替品しかり、これを組むために買ったはんだごてしかり、かかった総コストについては正直計算を始めると頭痛がしてくるレベルなのだが、それでも後悔はしていない。

MX Master 3

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有り体に言うと、ロジクールが出している最強のマウス。価格は実売ベースでも13000円前後となかなか強気なものの、その分多機能なのがウリだ。

シリーズ三代目の本機はセンターホイールに独自の機構が採用されており、ホイールを無段階(なめらか)かつ高速に回すか、あるいは一般的なマウスのようにカリカリと段階的に回すか、というのを自動で制御できるようになっている。

基本的にはカリカリ言うモードにしたまま使用しつつも、ときおりweb記事を読んでいて末尾の脚注から本文に戻るときなどはホイールを強めに回せば自動で無段階モードに切り替わるため、ほぼ一瞬で長いページを縦横に移動することができる。

なによりこの制御が磁力で行われている、というのが嬉しいポイントで、物理的に動く部品が少ない分壊れにくさに期待できる。

仕事やプライベートにChromeを使っているとセンタークリックを使う機会が多いからか、普通のマウスを使っていると1年そこそこでホイールの挙動が怪しくなったりするのだが、それらと比べればMX Master 3はいくらか壊れにくいだろう。

もっとも、個人的に一番購入の後押しとなったのは握り心地の良さだ。数年前から手首の具合があまり良くないので、負担軽減のため、という名目で購入を思い切った感がある。

ちなみに、ここまで紹介したキーボードおよびマウスはオフィスで仕事をするとき(筆者はフリーランスとはいえ現状フルタイムで業務委託を受けておりそこそこの頻度で出勤する)にも持ち出しているのだが、これらをまとめて持ち出すのに一番ちょうどよかったのがこの商品。

www.nitori-net.jp

キーボードとマウス、それにリストレスト等々の荷物を持ち運ぶには、一般的なガジェットポーチだと中が「平らすぎる」のだが、より「箱っぽい」フォルムでそれなりの耐衝撃性もあるバッグインバッグが必要な場合、これに限らずコスメボックスが有力な選択肢となるようだ。

ルックプラス バスタブクレンジング

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「行けたら行く」「どこからでも切れます」に連なって日本にはびこる嘘として、風呂用洗剤が言う「こすらず落ちる」というのがある。

我々はもはや「それ」を指摘するのも馬鹿らしい、という諦念とともに日々バスタブをこすり続けててきた。つまり「こすらず落ちる」を「行けたら行く」よりも信用できない言葉として扱ってきた。

実際のところ、あれらの風呂用洗剤でも「風呂釜中を薬液の泡で覆い尽くす」くらいにたっぷりと使えば本当にこすらずに掃除ができるらしいのだが、あの小さなスプレーでそんなことに気を使うくらいならばこすってしまった方が早いのである。

ただこのルックプラス バスタブクレンジングは、スプレーが広口なためメーカーが想定した通りに泡を散布でき、かつ薬液も十分に強力なため、より現実的な手順で「こすらず落ちる」を実現している。

叶わぬはずの夢が叶う、という意味で、この商品は魔法のステッキや巨大ロボに匹敵する発明だと言えるだろう。

筆者の家はユニットバスでほとんど湯を張らないためその恩恵を十分に享受しているとは言いにくいが、友人が女性と同居していたころ「保湿成分だかなんだかでやたらヌルヌルしたボディソープだの入浴剤だのも落ちる」と言っていたので、割とハードな使用にも耐えそうだ。

バートル エアークラフト

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(一応Amazonのリンクを貼ったが、サイトを選べばもう5000~10000円は安くなる)

近年は工事現場だけでなく真夏のイベント会場などで見かけるケースも増えた、いわゆる空調服(この呼び方は本来株式会社セフト研究所及び株式会社空調服登録商標)である。

筆者は真夏の公園でディスクゴルフをする際によく利用したのだが、これがあるとないとでは疲労度がまったく違う。

汗がすぐ引く→汗の熱交換作用が十全に発揮される→体温が下がる上に必要以上の汗をかかない→体力の消耗が減る

というわけだ。

「暑い日も涼しくなる」といったたぐいの魔法の道具でないことにはご留意いただきたいが、暑い日の屋外に長く居る予定があるなら大きな恩恵を受けられるだろう。

またこの手の商品の中でもバートルのものは比較的洒脱な見た目のモデルが多く、その気になれば「ワークスタイル」の範疇でまあまあこなれた感じに着こなすこともできるはずだ。

さて、バートルはこのエアークラフトと同じバッテリーを使った冬用のヒーターベスト「サーモクラフト」というのも出しているのだが、こちらは万人におすすめできるかというと微妙なところ。

スイッチを入れれば直ちに用を為す扇風機とは違って、ヒーターは電源ONから十分な暖かさに至るまでやや時間がかかるため、スポーツなどの用途で使うには温度調整がしにくい欠点が目立つのだ。

シカキュア クラッシュジェリーウォッシュ

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洗顔料である。その名の通り(?)泡ではなくこんにゃくの細かい粒子で汚れを絡め取るようにして洗うようになっている。

これで顔を洗うと、汚れは残っていない、妙な保湿成分が膜を張る感じもない、かといって肌のつっぱりもない、という、かなり「ニュートラル」な状態になる。最初に使ったときは、ここ10年どころか20年味わっていなかった感覚に思わず顔がほころんだ。

「肌がニュートラルだとウケる」というエンタメを体感するためだけにも一度試す価値があるだろう。

この製品の唯一の難点は値段で、同じ容量のダヴの洗顔料と比べると実売価格が5倍はくだらない。さらに一回あたりの使用量もざっと3~4倍なので、常用するには通常の20倍というコストが重くのしかかる。 そのためchocoxinaも購入当初は数日に一度のみの使用に止めていたのだが、段々と使用頻度が上がっておりそろそろ甘んじて乗り換える覚悟を決めるべきかもしれない。

ソーダストリームGenesis

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おなじみ、水を炭酸水にする機械である。

それが良いとか悪いとかいう話は一旦置いておいて、筆者は近頃酒ばかり飲んでいるもので、買って以降は想像以上にヘビーに活用している。

購入を検討している人にとって気になるのはランニングコストだろうが、こちらはざっと計算すると「ディスカウントストアでちゃんと安い炭酸水を買う」のと比べるとせいぜい若干安い程度。 それでは初期投資を回収するのがかなり大変そうだが、ソーダストリームの利点というのはランニングコストよりも、購入や輸送の手間を低減し、また何をさしおいてもゴミを減らせる点にある。

ゴミが減るということはすなわち、大量の空のボトルを一週間部屋に保持しなくていいということでもあるし、朝早くにガラガラ言わせながらそのボトルを捨てに出なくていいということでもあるのだ。

パーカー インジェニュイティ

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ボールペンでも万年筆でもない新たなペン先、という触れ込みで売られているパーカーの「5thテクノロジー」を搭載したペンだ。

質のいいサインペンのような機構と万年筆のような「しなり」を兼ね備えており、撫でるような筆圧で、紙との摩擦をほぼ感じさせない書き心地が味わえる。

またペン先の感想などにも強く、万年筆と比べると管理が楽なのもポイントだ。

発売当初デパートで試し書きをして以降ずっと憧れていた商品なのだが、先日メルカリで中古美品がめちゃくちゃな安値になっているのを見つけてとうとう購入してしまった。

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(ちなみに、メルカリで安価な商品を見つけるコツはキーワードを絞らずに検索することだ。これは出品者が型番などの細かい情報を知らない可能性を考慮したもので、同様の理由であえて間違った綴りで検索すると売れ残りが見つかる場合がある)

とはいえ普通に買うにはいささか高値がすぎるペンだと思うので、普段遣いならば仕組みはほぼ同等ながらより安価な「IM」シリーズあたりを検討すべきだろう。

Amazon | PARKER パーカー 5th IM ブルーCT 2073225 正規輸入品 | 文房具・オフィス用品 | 文房具・オフィス用品

またこの5thテクノロジーを搭載したペンはインクが切れたら専用のリフィルを交換することになるのだが、これが実売ベースでも700~800円程度はするためランニングコストにやや不安がある。

筆者は普段あまりペンを使わない(その分たまに使うときはテンションを上げたい)タイプなので特に問題を感じていないが、普段からアナログ手帳でがっつり予定を管理するタイプの人には不向きかもしれない。

さいごに

ここまでの内容とはあまり関係ありませんが、ちかごろnoteで日記を書いています。

https://note.com/chocoxina/

本年もchocoxinaをよろしくお願いいたします。お仕事も募集しております。