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ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

第一回 キング・オブ・あやかりハイツ決定戦(下北沢編)

有名な町、無名な町というのがある。

たとえば、三軒茶屋、浅草、田園調布、などといった地域は、東京の地理に明るくない人でもその名前を聞いたことがあるだろう。

一方で、それらのすぐ近くにある、上馬、入谷、奥沢、といった場所は、恐らく近所に住むか沿線を使うかしていなければ、正直どこにあるのかわからないのではないだろうか。

ここでいう後者、つまり、メジャーな町の近くにあるそうでもない町の中にこそ、今回紹介する「あやかりハイツ」はある。

すなわち、

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このように、自身の住所ではなく、近所のよりメジャーな町の名を名乗るアパート・マンションである。

普段はややネガティブな側面(近所を歩いているときに見かけると土地勘が狂う、とか)が目立ちがちなこれらの建物であるが、今あえてその「あやかりぶり」に着目し、ランキング形式で紹介したい。

第一回(次回未定)となる今回は、若者の町、下北沢からお送りしていく。

第3位:Comforia下北沢

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第3位のComforia下北沢は、一般的には「羽根木」と呼ばれるエリアにある。

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駅からは直線距離で800m、また実際の最寄り駅は京王井の頭線新代田駅だ。

渋谷で仕事をした帰りであれば、下北沢を通り過ぎてそのままこちらまで電車に乗ってくることになるだろう。

(ちなみに、この後紹介するほとんどの建物は、地域こそそれぞれ違うものの、駅からの距離はほぼ同程度である。今回は、建物と下北沢との隔たりを多面的に評価してランキングをつけさせて頂く)

さて、このComforia下北沢のランクインを決定づけたのは、建物の眼前にある両側計5車線の環七通り。

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この大通りを横断して下北沢駅まで行くのは容易ではなく、見かけ以上の時間がかかるのだ。

またこの建物から下北沢駅までは住宅街を突っ切るような格好になり、直通するような分かりやすい道もないため、心理的な隔たりはより大きなものになるだろう。

とはいえ、新代田駅の近くには「FEVER」という著名なライブハウスをはじめ、いかにも「っぽい」店が多く、Conrofia下北沢は、その辺りを含めた広義の「下北沢エリア」からさして離れていない、という見方もできる。

恐らく「モヤさま」ならば、下北沢回でこのあたりまでは歩いてくるだろう。

またこの建物は、新代田を含めた近隣のどの駅からも微妙に遠いため、かえって「それならまあ、下北沢と名乗るのもそう突飛ではないのかな」という同情心もわいてくるというもの。

京王線代田橋駅の近くに住みながら「笹塚在住」を名乗っている筆者としては、この建物のほうが自分よりよほど誠実ではないのか、とさえ考えてしまう。

その辺りを鑑みつつ今回は3位としたが、「下北沢から住宅地の小径を抜け、さらに大通りを渡った先」にあるこの建物には、あやかりハイツの基本が詰まっていると言えるだろう。

第二位:下北沢パークホームズ

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第二位の下北沢パークホームズは駅からおよそ900mほどの所にあり、今回紹介する中ではもっとも下北沢から遠い。

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最寄りのスーパーは下北沢とは反対側で、生活圏という面でも下北沢とは大きく隔てられたように見えるこの建物だが… これほどのアパートが優勝を逃したのには、上位の強さ以外にも理由がある。

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実はこの標識を見て分かるとおり、ここから大通りを素直に進めば下北沢の市街地へ行くことができるのだ。

住む部屋によっては窓から見ることもできそうなこの案内標識は「ここが下北沢ではない」ことを強調しているようでもあるが、一方で下北沢との強固な地理的連続性を示してもいる。

あるいは、ここに住む若者にとってこの青看板は、さながら映画8mileで同名の通りを超えることが成功の象徴であったように、将来この道を先へ先へ、下北沢に向けて進んでいくための道しるべにも見えるかもしれない。

であれば、そういった精神性はむしろ、下北沢市街に住むよりもずっと下北沢的だとさえいえるだろう。

下北沢という町の名前にあやかっているようでいて、その実、町の外からしか醸し得ない「らしさ」を演出して見せた下北沢パークホームズ

順位こそ二位となったが、彼はあやかりハイツ界のエミネムとして、その功績を永く語り継がれるに違いない。

番外編:ドエル下北沢

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ここで、とある理由からベスト3入りを逃した建物をご紹介しよう。

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このドエル下北沢は、下北沢駅からおよそ800mのところにあり、ランクインした他の建物に劣らない距離を誇る。

そしてこの建物は下北沢駅から単純に距離が離れているのみならず、より建物から近いところに京王井の頭線の池の上駅と小田急東北沢駅をたたえており、下北沢駅は3番目に近い駅に過ぎないのだ。

上北沢駅まではおよそ500m、池の上に至っては300m弱ほどだという点を踏まえると、それでも「下北沢」を名乗っていることのインパクトを感じて頂けるだろう。

また、これら二つの駅はいずれも、下北沢より東京寄りにある、というのも注目すべきポイント。

例えばここの住人が都心で仕事をしているとすれば、たいてい下北沢は定期券の範囲外になるはず。

平日はよほど明確な目的がなければ電車を一駅余計に乗ることはないだろうし、休日もついつい渋谷に出てしまう、なんてことさえありそうだ。

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さらに、この建物から下北沢駅へ至る道にはこのような急坂があり、自転車やスクーターなどが利用しにくい、という点も見逃せないだろう。

このように、単純な距離以上の「隔たり」を見せてくれたドエル下北沢だが…… 実は住所上は「世田谷区北沢一丁目」に位置しており、こう見えてれっきとした「下北沢」の物件なのだ。

いくら「下北沢らしくない」とはいえ、下北沢そのものに建つ物件を「あやかり」と呼ぶことは語義に反する。

あやかりハイツを愛する者として、ここは涙を飲んで選外とした次第だ。

第一位 NYX下北沢

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第一位のNYX下北沢は、ここまで紹介した物件のいわば「全部入り」だ。

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駅からの距離はおよそ800mほど

建物の目の前には先程も登場した環七通り(しかも立体交差の近くだ)があって、下北沢エリアとの心理的な隔たりが大きく……

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さらに建物のほど近くに大きなスーパーがあるため、ここに住めば、日々の生活のうち「下北沢でないところ」に頼る割合が大きくなるだろう。

最寄り駅となる「世田谷代田駅」は建物から徒歩4分という好立地。

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近隣には「代田」の名前を大きくアピールしたお洒落な商店もあり、下北沢とは別個の文化が根付いている点も見逃せない。

駅もスーパーもカルチャーも、知名度以外は大抵備えているこの町であくまでも「下北沢」を名乗る姿勢は、「あやかり」というよりもむしろある種の誇り高ささえ感じられる。

もしも自分が、下北沢でなにかダサい行いをしたら、遠くからNYXくんが「下北沢の名に傷がつくだろ!」と、謎の立場で怒ってきそうなくらいだ。

あやかりハイツとしては文句ナシの一位であるNYX下北沢だが、ただどうにも筆者としては、君が建つ代田という土地にも、どうか心を開いてやってくれないものかと、なんだか再婚家庭の子供をみる保育士のような気持ちになってしまう。

このへん、カルディの本社とかもあって良いところなんですよ。

さいごに

今回は下北沢を舞台に、「あやかりハイツ」のあやかりぶりのランキングを発表させて頂いた。

きっと皆様の家の近所にもあるはずのあやかりハイツ。

今度見かけたら、街との物理的な距離や、そこで暮らした際の文化的な隔たりなど、さまざまな視点から鑑賞することで、今までよりずっと楽しめるようになるはずだ。

筆者の生活圏にも、まだまだ中野や高円寺など、あやかられやすい土地がまだまだあるので、いずれそちらのあやかりハイツについてもご紹介する機会があるかもしれない。

以上、実家の住所を聞かれたときは、実際は違うのに「立川らへん?」と答える筆者がお送りしました。