chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

悪夢で見たエレベーターに乗る

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このやべー角度のエレベーターに乗ってきました

 

 

誰もが悪夢に悩む

いろいろな人が共通して見る悪夢、というのがあるらしい。

数年前のある時期、「歯が抜ける悪夢」を何度も見ることがあったので、すがるような気持ちでGoogle検索をかけたところ、夢占い関連の記事がわんさかヒットした。

歯が抜ける夢 - Google 検索
占いの結果はともかく、ある夢が夢占いの事例集に載るということは、占い師がその夢について何度も相談を受けたということだろう。それを知っただけで「俺だけじゃないんだな」と安心したのを覚えている。


夢占い関係のサイトにはほかにもさまざまな悪夢の定型が紹介されていて、例えば
・何かに追われる
・冤罪を受ける
・叱責される
・暗いところへ落ちる
などが「メジャーどころ」のようだ。読者の方にも、いくつか思い当たる例があるのではないかと思う。

今回取り上げる悪夢も、上で紹介したものほどではないにせよ結構メジャーらしいのだが、果たして共感してくれる方はおられるだろうか。

ええっと、「エレベーターに乗る夢」なんですけれども。

 

 

エレベーターの悪夢とはf:id:chocoxina:20170319001931p:plain

(これから、人に聞かせる話として最大のタブーである「自分が見た夢の話」をさせて頂くんですが、どうかほんの少しだけ我慢してついてきて下さい)

 

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――見覚えのないエレベーターに乗った状態から夢は始まる。


――そのエレベーターはガラス張りになっている。外は漠然とした「街」であったり、工場の中や荒れ野だったりする。


――エレベーターは自分の操作を待たず勝手に動き出す。それはただ上昇するだけではなく、地面と平行に動いたり、うんと大きくジャンプしたり、建物や地形をなぞるように動いたりする。その予測不可能な動きや、どこへ連れて行かれるか分からない状況が、えも言われぬ恐怖を呼び起こす。


――そうして乗客を思うさま振り回しているうちにエレベーターは止まって、目的地(謎の団地や、昔のガールフレンドの家や、実家の周りの住宅街)に俺を放り出す。


――その目的地に、何かしらのトラウマを想起させられるうち、夢は次第に輪郭をおぼろにしていく――

 

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(お付き合いいただきありがとうございます。口直しに空でも眺めてください)


重ね重ね、読者の皆様には夢の話などしてしまって恐縮なのだが、実はこういうタイプの夢を見るのはchocoxinaだけではないらしいのだ。

 

そのことを知ったのはごく最近、日課のネットサーフィンに勤しんでいたときのこと。

 

 
Twitterでたまたま「水平に動いてから垂直に上がるエレベーター」というのを見かけて、すげえ! これ夢で見たことある! などと感激していたら、

 

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なんだか、他にもそういう意見が続々と集まっている。

マジで? みんなもエレベーターの悪夢見るの? 俺も俺も!

 

「夢で見た感じのエレベーターが実在する」「しかもその夢を見ているのは俺だけではないらしい」という2つの興奮がないまぜになって、気づけば仕事そっちのけでエレベーターについて調べていた。

上記の動画はどうもイタリア(?)の工場で撮られたものらしいのだが、同じくらい変わったエレベーターが日本にもあるらしい。


やっべ、行こう。

 

 

エレベーターに乗りに山梨まで

新宿からまずは京王線か中央線で高尾まで、そこから中央本線に乗り換えて四駅。都合一時間少々で今回の目的地である四方津(しおつ)駅に到着する。

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レトロで可愛らしい佇まいの駅

 

 

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駅周辺はご覧の通り山あいののどかな町で、旅馴れていない筆者からするとこの段階で既に夢っぽい。今夜の夢はトトロの世界かな? という感じだ。

 

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名所案内を参考にこのままハイキングと洒落込みそうになったが、今日の目的はエレベーターである。

 

 

で、そのエレベーターというのは、四方津駅から北に、案内板などに従って歩道橋を2分ほど歩いたところにある。

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この画面両脇の

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これ!


のどかな駅周辺から徒歩2分でこの近未来っぷり。それこそ夢みたいな唐突さである。


駅から本当にすぐの所にあるこの施設は、名前をコモア・ブリッジといい、山の上にあるニュータウンコモアしおつ」にアクセスするための通路となっている。
肝心のエレベーターは見ての通り斜めに、山の斜面に添って動くタイプで、こういう形式のものを機能そのままに「斜行エレベーター」というらしい。

 

(ところで、1枚目の写真の真ん中にでんと構える超長いエスカレーター。こちらも大変気になるところだが、

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訪問した際は修理中だったのか、乗ることは叶わなかった)

 

 

ともあれエレベーターを見ていく。

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まずはドア部。見切れた画面左側のボードに昇降ボタンがある。

通常のエレベーターでは階数を表示することが多いドア上部は、20mきざみでエレベーターの大まかな位置が表示されるようになっている(そう、このエレベーターは全長200mもある!)。

 

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内装はドアと同じスカイブルー。長めの搭乗時間をつぶすためにテレビがついていたり、天井がお洒落なアーチ状だったりと「しつらえが良い」という言葉がしっくり来る。全体としてはほんのりレトロなたたずまいで、ビビッドな水色が上品にまとまっている印象だ。

 

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「下」「上」という、あまり見たことのない行き先階ボタン。

 

こうして内装の写真を撮りまくっていると、程なくエレベーターは動き出した。
それに気づいてガラス張りの後方を振り返ると「ああ、これだ」という思いがした。待ちわびた悪夢だ。

 

 

夢にまで見た 

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エレベーター独特の浮遊感のある乗り心地と、慣れない方向に動く景色が、少しずつ現実味を失わせる。

 

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自分の元いた場所を眺めると、景色がフラクタルのように遠ざかる。「どこか知らない所へ連れて行かれる」という感じがする。そういえば俺は、この上がどんな場所だか知らない。

 

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備え付けのテレビからはうっすらとニュースキャスターの声が聞こえ、けぶったガラスの向こうからは淡く日が差す。例えばよく晴れた休日、居間のソファでまぶたを薄日に照らされながらうたた寝したら、こういう夢を見るだろうな、と思う。

 

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ドア越しの景色。さまざまな角度の柱が、さまざまな距離感で視界を通り抜ける。傾いているのは地面か、柱か、それともこのエレベーターか、少しずつあやふやになってくる。

録画を切った直後、レールの継ぎ目かなにかに躓いたエレベーターが、小さくがこん、と揺れた気がした。それとも、揺れたのは自分自身だったろうか?

 

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――そろそろ時間感覚すら失われようかというとき、エレベーターは上階に到着した。

 

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上階のホールにはコモア・ブリッジの模型が展示されていて、それを眺めていると「そうか、俺はさっきまでこれに乗っていたんだな」と、主観的な体験と客観的な事実とがようやく繋がったように思えた。

 

 

予期せぬ白昼夢、コモアしおつ

さて、いい体験ができたしもう帰ってもいいんだけど、せっかく上ってきたんだから、と、軽い気持ちで「コモアしおつ」にくり出したのだが。

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そこはおおよそこんな感じの、ごくごく普通の住宅街だった。


普通の住宅街。

確かにその通りだったのだが、それを見るchocoxinaの心中はどこか穏やかでなかった。

家々の淡い色の壁や、よく整えられた庭などを眺めながら散策するうち、無視できない違和感が胸に澱(おり)をつくるのを感じた。

 

・・・なぜ俺は「こんなところ」に? 

 

思い出して欲しいのだが、chocoxinaはほんの数分前まで山の中にいたはずだった。

それが、たかが数分エレベーターに乗ってぼんやりとしていたら、いつの間にかこんな小綺麗な住宅地にいる。

 

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ギャップがすごくないすか

 

自分の脳がこの脈絡のなさについて来られないのを感じながら、俺は確かに自分の意思で来たはずのこの場所を、どこか「迷い込んでしまった」ような気持ちで歩いた。


また、この時感じた違和感には別の事情もあって、この家々の外壁の色味や、軒先の植え込みのちょっと気の利いた感じ――これが私事で恐縮なのだけれども、実家の近所の住宅街にそっくりなのだ。

 

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(夢の話に続いて伝わらない話で恐縮です。改めて空でも眺めてください)


ともかく、この時のchocoxinaにしてみれば、トトロの世界のような山の中から、近未来施設の悪夢エレベーターに乗って、パラレルワールドの実家に迷い込んだようなもので、それこそ風邪をひいて夢でも見ているような気分だった。

 

(ちなみに、あとで調べてみたところ、このコモアしおつの戸建て販売が開始されたのは1991年とのこと。その前後に開発された住宅地やその近所に住んでいる方なら、このときchocoxinaがコモアしおつに感じたデジャヴを共有していただけるのではないだろうか)

 

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混乱を収めるためというか「ここなら何か変わったものを売っていて、それを見たらデジャヴからは開放されるかも知れない」というような気持ちで入ったスーパーマーケットもやっぱり普通だったので

 

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完全に目的を見失って「おひるごはん」「おやつ」「普段から集めてるシール付きウエハース」と、うっかりガチの買い物をしてしまった。

 

 

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また、訪問したのが土曜日の昼下がりだったこともあってか、出歩いている人が少なく、生活音が全くしなかったのも夢っぽさに拍車をかけた。

たまに聞こえる音といえば、数分ごとに大通りを通る車のエンジン音や、春先の風が植え込みを揺らす音くらいで、それ以外は文字通り白昼夢のような静寂だった。歩きながらさっき買ったウエハースを一口かじると、ばりりっ、と場違いに大きな音が響いて、思わず身をすくめるほどだった(それでも結局、中身のシールが気になって3枚全部食べた)。

 

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本筋とは全く関係ないんですが、その時のシールです。

 

 

夜の斜行エレベーター

さて、その後は

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夢っぽいというよりもむしろレトロなRPGっぽい立て看板を見つけたり

 

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今まで見た「プラザ」の中で最も小さいやつを見つけたり

 

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地元の飲み屋さんで一杯引っ掛けたりしているうちに日が暮れてきたので、そろそろ帰ることとしよう。

帰りはもちろんコモア・ブリッジの斜行エレベーターを使う。

 

夜の斜行エレベーターは、特に下りともなると、昼のそれに比べて圧倒的に悪夢感が増す。

 

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"暗いところへ落ちる夢や何処までも落ちる夢は、あなたが抱えている問題の根が深く、どんなに頑張っても解決しそうにないことを暗示しています。"

 

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" 死に直面していたり、死ぬことへの恐怖を抱えている場合もあります。"

 

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"悲観的にならず視点を変えるなど大胆な発想の転換が必要です。信頼できる人に相談するのが良いでしょう。"

落ちる夢・落下する夢の夢占い - 夢の夢占い

 

この夜、chocoxinaは案の定エレベーターの悪夢を見ましたが、皆さんはそうならないよう祈っています。あれ結構怖いので。

 

 

後日談

ちなみに、記事中では夢っぽい夢っぽいと書きつつも、訪問時はさすがにもう少し意識もはっきりしていたつもりだったのだが、今になって当時の写真などを見返すと

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メモをとる際に「エレベーター」を書き損じる

 

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「これはかなり夢っぽいぞ!」と思いながら全然夢っぽくない信用金庫の写真を撮る


など、結構ガチの夢うつつになっていた形跡があった。やっぱり寝てたのかも知れない。

「OneShot」で、あなたのNiko君と世界を旅してほしい。

突然なのだけれども、みなさんにはこの「OneShot」というゲームをプレイしていただきたい。

store.steampowered.com

OneShotは、このかわいいかわいいNiko君を操作して、世界を旅するパズルRPGである。
そして、できることなら、これ以上の情報を一切頭に入れずに(steamのレビューさえ見ずに!)体験してほしいゲームだ。
特に、このストアページに表示されているNiko君のビジュアルや世界観が気に入ったなら、それだけで十二分にプレイする価値がある。このかわいいかわいいNiko君はきっと、あなたにとって特別な存在になるはずだ。

 

それでもまだプレイする気のないあなたに、OneShotの魅力をお伝えしよう

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まずなんたってNiko君がかわいいのである

 

このゲームの何よりも素晴らしい点は、ええっと、一番なによりも素晴らしいのはNiko君がかわいいことなんだけど、その次くらいに素晴らしい点は、「ゲームとプレイヤーの関係」を非常にうまくゲームに利用しているところだ。


プレイヤーにとってPC(プレイヤーキャラクター)とは何か。逆にPCにとってプレイヤーとは何か。プレイヤーはゲーム世界をどう捉えているか。それはPC、またはNPCの捉え方とどう異なるか。そういったプレイヤーの価値観が、ゲーム体験を通じてどのように変容するか。その関係性をうまく利用し、ときにはゲームの側からその関係を揺さぶってくるのだ。

 

大抵のゲーム、特にRPGにおいて、プレイヤーとPCの関係というのは意図的に、あるいは仕方なく曖昧にされている。

 

例えば重厚なストーリーのJRPGをプレイするあなたは、間違いなく自分ではない、確固たるパーソナリティや名前を持ったPCを操作しながら、自分自身がどこか蚊帳の外にいるような感覚を覚える。
逆に、無個性で感情移入しやすい「あなた自身としてのPC」を操作しているときのあなたは、「自分自身が行いたいこと」が「ゲームのお約束」で出来ないようなとき(例えば、たかが木一本で遮られているだけの道が通れない、とか、あのシーンでエアリスを突き飛ばせない、とか)に、自身がゲームの外側にいることを自覚させられてしまう。

 

OneShotでは、ちょっとした舞台設定の妙と、それを存分に活かす様々なギミックによって、「ゲーム世界に『あなた』を存在させながら、ゲームへの没入感を損なわない」ことに成功しているのだ。

 

この仕組みについて、OneShotのネタバレを避けながら説明するために、なるべく様子の異なるゲームを例に挙げよう。「Ingress」である。

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ポケモンGOの会社がやってるアレだ

 

Ingressのプレイヤーキャラクターは、間違いなく「あなた自身」だ。
Ingressの世界は現実世界にオーバーレイするように広がっていて、プレイヤーは実際に現実世界を歩き回ってゲームを行う。
Ingressの世界にはXMという作品世界の根幹をなす物質や、それに関する魅力的なアイテムや設備、研究機関や陰謀、それに関わる人々など、綿密に設定された世界が無限に広がっている。
ただし、「あなた」はそういった世界に「スキャナー(アプリのこと)」を通じてしかアクセスできない。

 

こういったかたちの舞台設定は、プレイヤーをゲームに没入させながら、プレイヤーがぶつかるゲーム的なお約束について、「それはあくまでも、あなたが世界と接するインターフェースの問題だ」というふうに、ゲームの内側から説明を与えてくれる。
Ingressの世界がところどころいかにもゲームっぽいのはあくまでも持っているスキャナーの問題で、本当はもっとシリアスなのだ、と説明できるために、ゲーム世界そのものについては余計なフィクション性を感じさせずに済むというわけだ。

 

OneShotにおいても、「あなた」と「ゲーム世界」の間には隔たりがあることがゲーム内部の言葉で説明される。しかし、これによってプレイヤーは逆説的に「このウィンドウの中には、確かに世界が在る」という感覚を強固にし、またOneShotはその枠組みをフルに使って、ちょっと他では思い当たらないゲーム体験をプレイヤーにもたらしてくれる。

 

OneShotをプレイするあなたは「あなた自身」にかなり近い存在として、Niko君、つまり、あの猫耳猫目で萌え袖で褐色の超絶かわいい少年であるところのNiko君と、さまざまな形で協力しながら謎を解いていく。それによってあなたは、いや「あなた自身」は、Niko君との間に、テキストで描写される以上の特別な関係性を感じることだろう。これがOneShotの大きな魅力だ。

 


さて、一つ伝え忘れたこととして、このゲームは全編英語で、有志による日本語パッチも存在しない。

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伝え足りないこととして、Niko君はかわいい


しかし、ここまでで興味を持ってくれたのであれば、その障害を乗り越えてでもプレイする価値があると保障しよう。
最近はGoogle翻訳も優秀になってきた(カメラで撮影するだけで翻訳できるのだ!)し、どうしてもわからなければ、和訳をまとめてくれているページもある。


(あなたがスケベ心でプレイ前にネタバレを踏まないようあえてリンクしないが、「Oneshot 適当和訳」で検索すれば出てくるはずだ)


最後にもう一度Steamへのリンクを貼るので、あなたがもし、少しでもこのゲームに興味を持っているのであれば、もうつべこべ言わずポチってしまうことだ。

store.steampowered.com

 

プレイにあたって諸注意

最後に、OneShotoをプレイするにあたっての諸注意を以下に記す。
ゲームのダウンロードが完了したら、SteamのPlayボタンをクリックする前に、ほんの一呼吸おいて内容を確認してほしい。手間をとらせる代わりに、よりよいゲーム体験を保証しよう。

 

・初回プレイは、3時間くらいまとまった時間が取れるときに行うべきだ。絶対に。
・上で紹介した和訳は「ゲームが一区切りついたときに、そこまでのプレイを振り返る」ような形での使用をオススメする。かのサイトはデータベース的なものであって構成がストーリー進行に沿っていないので、思わぬネタバレを踏む可能性が高い。
・PCのユーザー名に全角文字を使っていると序盤で若干バグるので、特別事情がなければこの機会に変えてしまおう。なおそのままでも一応ほぼ支障なくプレイはできる。
・フルスクリーンではなくウインドウモードでのプレイを推奨、なのだけれど、画面があんまりにも暗い序盤や、高解像度ディスプレイを使っている場合などは適宜使い分けを。ただ繰り返す通り、原則ウインドウモード推奨である。
・ゲーム中頻出する"phosphor"という語はここでは「燐光体・蛍光体」の意で、世界観の根幹をなす要素になっている。読解の参考まで。

2000円の3Dペンを買って二歳児に戻った話

アキバのヨドバシで、知らないおもちゃを見つけた。

売り場で一目見た途端、その場から動けなくなって、舐めるようにスペックを見て、でも買ってはならないような気がして、一度冷静になるためにトイレに入って、用を足したら一直線に売り場に戻ってまた箱を食い入るように見た。大の大人が、たかが2000円のおもちゃを前にしてだ。

今回は、そうやって買ったおもちゃが滅茶苦茶楽しかったというだけの話をします。

 

3Dドリームアーツペン

そのおもちゃは、3Dドリームアーツペンという。

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3Dドリームアーツペン|商品情報|メガトイ|メガハウスのおもちゃ情報サイト

樹脂で平面に絵を描いてからライトでじっくり硬化させて、そうして作ったパーツを立体に組み上げる、という遊び方をするものらしいのだが、ペン先に別売りのライトを付けることで、描いた先から樹脂を硬化させて「空中に絵を描く」ような使い方ができる。

 

一目見たときに「やべえぞこれは」と思った。3Dプリンターが市場に出回り始めたころに流行った「3Dペン」そのものだ。

 

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空中に絵を描ける世界初の3Dペン 「3Doodler」公式サイト|ナカバヤシ株式会社

このサイトの3Doodlerは14000円、ヨドバシで見つけた3Dドリームアーツペンはペン一本とライト一つで2000円程度。圧倒的に安い。

しかも売り場には、

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こんな作例まで展示されているのだ。

これは凄い、最近の子供はこんなハイテク玩具で遊んでるのか、欲しいな、2000円だし買うか、と、そこまで思いを巡らせたところで、ふと「ここは一旦冷静にならなければ」と思い、あわててトイレに逃げ込んだ。

 

たかが2000円の衝動買いで何を大袈裟な、とお思いだろうが、その理由を説明する前に、ちょっと身の上話をさせて頂きたい。

 

 

クリエイティブなおもちゃは怖い

chocoxinaの最近の悩みとして「老い」が怖い。

たかだか20代の若造が何を、と人生の諸先輩方は笑うかも知れないが、これは、かつては出来たことが少しずつできなくなり、かつてはきいた無茶がだんだんときかなくなってくる、という現実に人生で初めて直面した自分の素朴な本音である。

 

その中でも特に怖いのが、自分の中から「創造性」みたいなものが無くなっていくことだ。

10代の頃は、やりたい事や作りたいものがいくらでもあった気がするのに、最近はまったくそういったモチベーションが湧いてこない。

 

今もし、無数のレゴブロックが目の前に積み上げられているとして、そのブロックで何を作るか? 時々そう自問して、その度にため息をつく。作りたいものが何も思い浮かばないのだ。

 

そんなわけで、3Dドリームアーツペンを買うのが怖くなった。

アイツは「さあ、何でもすきなものを作ってごらん!」と我々を迎えてくれるようでいて、その実「いったい俺で何を作ってくれるんだ?」と創造力を試してくる。

もし、アイツを買って何も作れなかったら。考えるだに恐ろしかった。想像の中の「レゴブロックの山の前で立ち尽くす自分」が現実のものになって、老いた自分と真正面から向き合うことになるからだ。

 

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老いを恐れるchocoxina(イメージ)

 

やはり買うのはやめようか、と思いながらトイレから出て、やはり最後にもう一目だけ見ようと売り場に戻ってみたが、そのおもちゃは変わらず魅力的だった。

何を作るかはともかく、このペンで空中に線を引いて、出来上がったものを触ってみたい、と思った。こんなに何かが欲しくなるのは数年ぶりだった。

頭の中で発展性のない問答を繰り返して、最終的に、最低限のセット(ペン一本とライト一つ)だけを買って帰った。

 

長々としみったれた話をしましたが、以下たのしいおもちゃレポートになります。

 

 

こういうおもちゃです

さて、このペンとライト。

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画像右のペン本体は修正液のようなタイプで、蓋を兼ねたペン先を少し緩めてから本体の膨らんだ部分を押すと、ニュルニュルとインクが出てくる。ここの押し加減で出てくるスピードを調整するようなイメージだ。

そこに画面左のライトをはめると、このようになる。

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LEDが3つペン先に向けられており、ペン先から出たインクをただちに硬化させるようになっているのだ。

ちなみにこのライト、ONにするといかにも「紫外線とか含んでます」的な青くて強い光を放つ。

テーブルに跳ね返った光でさえ、凝視すると目の奥にズン、と来るような感じがあり、多分あまり目にいいものではないだろう。注意書きにも「長時間作業しないように」とある。

 

ともかく、こうして完成したものを見てみると、笑っちゃうくらい単純である。

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ダライアスに出てきそう

 

普通の3Dペンなら、大仰なペン本体の尻から長いフィラメントを挿し入れ、ACアダプタもつなぎ、スイッチを押して本体内の複雑な機構で送り出し、先端でヤケドしそうなくらい加熱してやっと樹脂が出て来るというのに、こちらは「絞り出してから、光を当てる」だけだ。

こんなんで空中に絵を描こうというのか。このあと半信半疑で線を引いてみたわけだが、これがもう、すごかったのだ。

 

線を引くと、線が引ける

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その辺にあったマカダミアナッツチョコの箱に、柔らかいままの樹脂で土台(チョコの左上のとこ)を作ってから、ライトを点けた本体を強めに握って、土台を起点に真上にすっ、と引く。

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!!

 

このときchocoxinaが受けた衝撃、画像で伝わっただろうか。

いや、伝わるものか。

 

読者の皆様には「チンアナゴの霊」みたいなものがマカダミアナッツチョコの箱の上に立っている画像しか見えていないだろうが、これは、俺が、たしかに、空中で、引いた、線なんですよ。

 

 

伝われ、この感動

ペンを握り込むと、ペン先にインクが滲む。

滲んだインクはただちに硬化してもとの場所にとどまり、動かされたペンは硬化した樹脂から離れていく。

硬化した樹脂とペン先の間には新たににじみ出てきたインクがつながっていて、それもまた直ちに固まる。

このサイクルが目にも留まらぬスパンで繰り返され、インクの排出(握り込む強さ)と動かす手の速さが釣り合ったとき、そこには「空中に線を引いている」というひとつながりの知覚が生じるのだ。

 

すっ、とペンを動かすと、何もない空間にすっ、と白い線が生じる。これだけのことがただ楽しい。

 

そこからはもう猿のように線を引いた。

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たまたま部屋に落ちていた安全ピンをおさかなさんにしてみたり

 

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なんとなく描いた三角形をなんとなくどんどん繋げて、何らかの構造を作ってみたり

 

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なんとなく思い浮かべた文字(しもネタ)を空中に書いてみたり

 

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もはやなにか計画するのもまどろっこしくなって、思いつくままに線を引いたりした。

 

この楽しさをどうにか人に伝わるように説明するなら「ものすごくレスポンスのいいペンタブを触ったとき」の感動が近いだろうか。しかもそれが三次元に描けて、後には触れられるものがその場に残るというオマケまである。

 

また、自分が滅茶苦茶に線を引きながら想像したのは「初めてクレヨンを握った幼児」の気持ちだ。

 

握り心地のいいカラフルな棒を紙に押さえつけて、ぐいっと動かすと、紙の上に鮮やかな線があらわれる。

きっと幼い我々はそれだけのことが楽しくて、ただ画用紙を真っ赤に塗りつぶしたり、床や壁に色とりどりの素敵な線を生じさせたりしたのだろう。

3Dドリームアーツペンを握ったchocoxinaの気持ちは完全にそれだった。だって、線を引くと、線が引けるのだ!

 

 

クリエイティブはこわくなかった

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改めておさかなさん。どう見ても二歳児の所業だが、27歳児の作である。

 

この玩具を購入する前の自分は「これを使って、なにか意味のあるものを作れなかったらどうしよう」と思い悩んでいた。

それが今や、無限のポテンシャルを持つおもちゃでわざわざなんの意味もない線を引いて喜んでいるし、そのことに関してなんの負い目もない。

 

子供がレゴブロックを手に取るときだって、今のchocoxinaと同じような気持ちだろう。

色とりどりのブロックをぱちん、と嵌めると、ブロックは嵌めたとおりの形を保ち、そのことがただ楽しい。そうやって気の赴くままにブロックを組み上げるうちに、そのカタマリが家や車や動物やモンスターに見えてきて、イメージ通りに組み上げたいという欲求が湧いてくる。

購入前のchocoxinaの「何を作るか思いつかないから、買わない」という考えは、そもそも順序が逆だったのだ。

 

3Dドリームアーツペンはchocoxinaを二歳児に戻してくれた。

ペン先がつまりやすいとか、固まってないインクが手につくとやたらベタベタするとか、欠点も少なくないおもちゃだが、これからも折に触れて触るだろうと思う。

触っているうちになにか作りたいものが思い浮かんでも、なにも思い浮かばなくても、大した問題ではないわけだし。