chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

悪夢で見たエレベーターに乗る

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このやべー角度のエレベーターに乗ってきました

 

 

誰もが悪夢に悩む

いろいろな人が共通して見る悪夢、というのがあるらしい。

数年前のある時期、「歯が抜ける悪夢」を何度も見ることがあったので、すがるような気持ちでGoogle検索をかけたところ、夢占い関連の記事がわんさかヒットした。

歯が抜ける夢 - Google 検索
占いの結果はともかく、ある夢が夢占いの事例集に載るということは、占い師がその夢について何度も相談を受けたということだろう。それを知っただけで「俺だけじゃないんだな」と安心したのを覚えている。


夢占い関係のサイトにはほかにもさまざまな悪夢の定型が紹介されていて、例えば
・何かに追われる
・冤罪を受ける
・叱責される
・暗いところへ落ちる
などが「メジャーどころ」のようだ。読者の方にも、いくつか思い当たる例があるのではないかと思う。

今回取り上げる悪夢も、上で紹介したものほどではないにせよ結構メジャーらしいのだが、果たして共感してくれる方はおられるだろうか。

ええっと、「エレベーターに乗る夢」なんですけれども。

 

 

エレベーターの悪夢とはf:id:chocoxina:20170319001931p:plain

(これから、人に聞かせる話として最大のタブーである「自分が見た夢の話」をさせて頂くんですが、どうかほんの少しだけ我慢してついてきて下さい)

 

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――見覚えのないエレベーターに乗った状態から夢は始まる。


――そのエレベーターはガラス張りになっている。外は漠然とした「街」であったり、工場の中や荒れ野だったりする。


――エレベーターは自分の操作を待たず勝手に動き出す。それはただ上昇するだけではなく、地面と平行に動いたり、うんと大きくジャンプしたり、建物や地形をなぞるように動いたりする。その予測不可能な動きや、どこへ連れて行かれるか分からない状況が、えも言われぬ恐怖を呼び起こす。


――そうして乗客を思うさま振り回しているうちにエレベーターは止まって、目的地(謎の団地や、昔のガールフレンドの家や、実家の周りの住宅街)に俺を放り出す。


――その目的地に、何かしらのトラウマを想起させられるうち、夢は次第に輪郭をおぼろにしていく――

 

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(お付き合いいただきありがとうございます。口直しに空でも眺めてください)


重ね重ね、読者の皆様には夢の話などしてしまって恐縮なのだが、実はこういうタイプの夢を見るのはchocoxinaだけではないらしいのだ。

 

そのことを知ったのはごく最近、日課のネットサーフィンに勤しんでいたときのこと。

 

 
Twitterでたまたま「水平に動いてから垂直に上がるエレベーター」というのを見かけて、すげえ! これ夢で見たことある! などと感激していたら、

 

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なんだか、他にもそういう意見が続々と集まっている。

マジで? みんなもエレベーターの悪夢見るの? 俺も俺も!

 

「夢で見た感じのエレベーターが実在する」「しかもその夢を見ているのは俺だけではないらしい」という2つの興奮がないまぜになって、気づけば仕事そっちのけでエレベーターについて調べていた。

上記の動画はどうもイタリア(?)の工場で撮られたものらしいのだが、同じくらい変わったエレベーターが日本にもあるらしい。


やっべ、行こう。

 

 

エレベーターに乗りに山梨まで

新宿からまずは京王線か中央線で高尾まで、そこから中央本線に乗り換えて四駅。都合一時間少々で今回の目的地である四方津(しおつ)駅に到着する。

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レトロで可愛らしい佇まいの駅

 

 

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駅周辺はご覧の通り山あいののどかな町で、旅馴れていない筆者からするとこの段階で既に夢っぽい。今夜の夢はトトロの世界かな? という感じだ。

 

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名所案内を参考にこのままハイキングと洒落込みそうになったが、今日の目的はエレベーターである。

 

 

で、そのエレベーターというのは、四方津駅から北に、案内板などに従って歩道橋を2分ほど歩いたところにある。

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この画面両脇の

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これ!


のどかな駅周辺から徒歩2分でこの近未来っぷり。それこそ夢みたいな唐突さである。


駅から本当にすぐの所にあるこの施設は、名前をコモア・ブリッジといい、山の上にあるニュータウンコモアしおつ」にアクセスするための通路となっている。
肝心のエレベーターは見ての通り斜めに、山の斜面に添って動くタイプで、こういう形式のものを機能そのままに「斜行エレベーター」というらしい。

 

(ところで、1枚目の写真の真ん中にでんと構える超長いエスカレーター。こちらも大変気になるところだが、

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訪問した際は修理中だったのか、乗ることは叶わなかった)

 

 

ともあれエレベーターを見ていく。

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まずはドア部。見切れた画面左側のボードに昇降ボタンがある。

通常のエレベーターでは階数を表示することが多いドア上部は、20mきざみでエレベーターの大まかな位置が表示されるようになっている(そう、このエレベーターは全長200mもある!)。

 

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内装はドアと同じスカイブルー。長めの搭乗時間をつぶすためにテレビがついていたり、天井がお洒落なアーチ状だったりと「しつらえが良い」という言葉がしっくり来る。全体としてはほんのりレトロなたたずまいで、ビビッドな水色が上品にまとまっている印象だ。

 

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「下」「上」という、あまり見たことのない行き先階ボタン。

 

こうして内装の写真を撮りまくっていると、程なくエレベーターは動き出した。
それに気づいてガラス張りの後方を振り返ると「ああ、これだ」という思いがした。待ちわびた悪夢だ。

 

 

夢にまで見た 

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エレベーター独特の浮遊感のある乗り心地と、慣れない方向に動く景色が、少しずつ現実味を失わせる。

 

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自分の元いた場所を眺めると、景色がフラクタルのように遠ざかる。「どこか知らない所へ連れて行かれる」という感じがする。そういえば俺は、この上がどんな場所だか知らない。

 

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備え付けのテレビからはうっすらとニュースキャスターの声が聞こえ、けぶったガラスの向こうからは淡く日が差す。例えばよく晴れた休日、居間のソファでまぶたを薄日に照らされながらうたた寝したら、こういう夢を見るだろうな、と思う。

 

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ドア越しの景色。さまざまな角度の柱が、さまざまな距離感で視界を通り抜ける。傾いているのは地面か、柱か、それともこのエレベーターか、少しずつあやふやになってくる。

録画を切った直後、レールの継ぎ目かなにかに躓いたエレベーターが、小さくがこん、と揺れた気がした。それとも、揺れたのは自分自身だったろうか?

 

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――そろそろ時間感覚すら失われようかというとき、エレベーターは上階に到着した。

 

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上階のホールにはコモア・ブリッジの模型が展示されていて、それを眺めていると「そうか、俺はさっきまでこれに乗っていたんだな」と、主観的な体験と客観的な事実とがようやく繋がったように思えた。

 

 

予期せぬ白昼夢、コモアしおつ

さて、いい体験ができたしもう帰ってもいいんだけど、せっかく上ってきたんだから、と、軽い気持ちで「コモアしおつ」にくり出したのだが。

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そこはおおよそこんな感じの、ごくごく普通の住宅街だった。


普通の住宅街。

確かにその通りだったのだが、それを見るchocoxinaの心中はどこか穏やかでなかった。

家々の淡い色の壁や、よく整えられた庭などを眺めながら散策するうち、無視できない違和感が胸に澱(おり)をつくるのを感じた。

 

・・・なぜ俺は「こんなところ」に? 

 

思い出して欲しいのだが、chocoxinaはほんの数分前まで山の中にいたはずだった。

それが、たかが数分エレベーターに乗ってぼんやりとしていたら、いつの間にかこんな小綺麗な住宅地にいる。

 

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ギャップがすごくないすか

 

自分の脳がこの脈絡のなさについて来られないのを感じながら、俺は確かに自分の意思で来たはずのこの場所を、どこか「迷い込んでしまった」ような気持ちで歩いた。


また、この時感じた違和感には別の事情もあって、この家々の外壁の色味や、軒先の植え込みのちょっと気の利いた感じ――これが私事で恐縮なのだけれども、実家の近所の住宅街にそっくりなのだ。

 

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(夢の話に続いて伝わらない話で恐縮です。改めて空でも眺めてください)


ともかく、この時のchocoxinaにしてみれば、トトロの世界のような山の中から、近未来施設の悪夢エレベーターに乗って、パラレルワールドの実家に迷い込んだようなもので、それこそ風邪をひいて夢でも見ているような気分だった。

 

(ちなみに、あとで調べてみたところ、このコモアしおつの戸建て販売が開始されたのは1991年とのこと。その前後に開発された住宅地やその近所に住んでいる方なら、このときchocoxinaがコモアしおつに感じたデジャヴを共有していただけるのではないだろうか)

 

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混乱を収めるためというか「ここなら何か変わったものを売っていて、それを見たらデジャヴからは開放されるかも知れない」というような気持ちで入ったスーパーマーケットもやっぱり普通だったので

 

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完全に目的を見失って「おひるごはん」「おやつ」「普段から集めてるシール付きウエハース」と、うっかりガチの買い物をしてしまった。

 

 

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また、訪問したのが土曜日の昼下がりだったこともあってか、出歩いている人が少なく、生活音が全くしなかったのも夢っぽさに拍車をかけた。

たまに聞こえる音といえば、数分ごとに大通りを通る車のエンジン音や、春先の風が植え込みを揺らす音くらいで、それ以外は文字通り白昼夢のような静寂だった。歩きながらさっき買ったウエハースを一口かじると、ばりりっ、と場違いに大きな音が響いて、思わず身をすくめるほどだった(それでも結局、中身のシールが気になって3枚全部食べた)。

 

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本筋とは全く関係ないんですが、その時のシールです。

 

 

夜の斜行エレベーター

さて、その後は

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夢っぽいというよりもむしろレトロなRPGっぽい立て看板を見つけたり

 

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今まで見た「プラザ」の中で最も小さいやつを見つけたり

 

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地元の飲み屋さんで一杯引っ掛けたりしているうちに日が暮れてきたので、そろそろ帰ることとしよう。

帰りはもちろんコモア・ブリッジの斜行エレベーターを使う。

 

夜の斜行エレベーターは、特に下りともなると、昼のそれに比べて圧倒的に悪夢感が増す。

 

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"暗いところへ落ちる夢や何処までも落ちる夢は、あなたが抱えている問題の根が深く、どんなに頑張っても解決しそうにないことを暗示しています。"

 

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" 死に直面していたり、死ぬことへの恐怖を抱えている場合もあります。"

 

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"悲観的にならず視点を変えるなど大胆な発想の転換が必要です。信頼できる人に相談するのが良いでしょう。"

落ちる夢・落下する夢の夢占い - 夢の夢占い

 

この夜、chocoxinaは案の定エレベーターの悪夢を見ましたが、皆さんはそうならないよう祈っています。あれ結構怖いので。

 

 

後日談

ちなみに、記事中では夢っぽい夢っぽいと書きつつも、訪問時はさすがにもう少し意識もはっきりしていたつもりだったのだが、今になって当時の写真などを見返すと

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メモをとる際に「エレベーター」を書き損じる

 

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「これはかなり夢っぽいぞ!」と思いながら全然夢っぽくない信用金庫の写真を撮る


など、結構ガチの夢うつつになっていた形跡があった。やっぱり寝てたのかも知れない。