先日入ったラーメン屋がかなり威勢のよい店で、戸をくぐると結構な大音声で
「せいー!!!」
という挨拶が聴こえてきた。
せいー。
「いらっしゃいませ」を「せ」まで略した上に、元々ありもしなかった「い」の方を強調してすらいる、何とも豪快な挨拶だ。
ただそのときchocoxinaが何より驚いたのは、その豪快さを更に強調するかのような、発音の明朗さについてであった。
威勢のよさを重視するあまり発音が雑になる、というのは、ラーメン屋に限らずよくあることだろうと思う。
しかし、もともと「いらっしゃいませ」だったものを発音する都合上、大抵は「いらっしゃいま」にあたる部分の面影が残っているものだ。
chocoxinaが今まで遭遇してきた威勢のいい挨拶も、殆どが「しゃせーい!!!」くらいのものだったし、そこから更に略されることがあるとしても、せいぜい「ぃゃせーい!!!」あたりが関の山だろう。
しかしあの店は違った。
彼らはあまりにも明確に「せいー!!!」と発音していた。
「せ」の部分が音として発される前から口を"S"のかたちに構えていることがありありと分かるような、サ行の摩擦音をたっぷりと含んだ「せいー!!!」だった。
これはいいものを聞いたぞ、と思った。
ここまで潔く省略された「いらっしゃいませ」は聞いたことがなかった。
これは「いらっしゃいませ史」に残る発見かもしれない、と思いながらカウンターで「中盛りほうれん草増し油少なめ」の注文を終えると、ある張り紙が目についた。
せいー。
彼らは端から「いらっしゃいませ」などと言う気はなかったのである。
彼らはそのまま、我々に「せいー」と伝えるつもりで「せいー」と発音していたのだ。
何だよ「せいー」って。ふざけやがって。
ラーメンは美味しかったです。