君は「いきあたりバッテラ」を知っているか。
知らないのか、ならば教えよう。 そういうボードゲームがあるのだ。
流行ってるだろ最近、ボードゲームとかいうやつ。
※この記事は、ボドゲ紹介 Advent Calendar 2018 7日目として作成されました。
まずは「お邪魔者」の話
「いきあたりバッテラ」の話をする前に、「お邪魔者」というゲームについて話す必要がある。
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その筋の間では相当に有名だし、プレイしたことがある人もいるかもしれない。
このゲームでは、プレイヤーはドワーフになって金鉱を掘り進んでいく。
地下深くにある宝石を見つけるために協力して穴を掘っていくんだが、プレイヤーの中に実は「お邪魔者」が紛れていて、こっそり邪魔をしてくる。
宝石のない方へ皆を誘導したり、働き者の道具を壊したりするわけだ。
働き者たちとしては、そういったお邪魔者の道具を壊したりして円滑に仕事を進めたいわけだが、いま自分の隣で素っ頓狂な横穴を掘っているドワーフが、お邪魔者なのかただの間抜けなのかは分からない。
金鉱掘りに必要なカードはランダムに配られるので、必要な仕事がいつでもできるとは限らないのだ。
そういう状況で、お互いの正体もわからないまま、邪魔し、邪魔される展開を楽しめるのがこの「お邪魔者」というゲームで、こういった種類のゲームを好事家たちは「正体隠匿系」と呼んだりする。
今度こそ「いきあたりバッテラ」の話
さて本題の「いきあたりバッテラ」。
このゲームもお邪魔者と同じ「正体隠匿系」に属する。
さっきのゲームでプレイヤーは「働き者」と「お邪魔者」に分かれたが、このゲームでは「徳島県民」と「香川県民」に分かれる。
「いきあたりバッテラ」はその名の通りバッテラを作るゲームであるからして、もちろん悪者は香川県民である。
そして他にもこのゲームには、先の「お邪魔者」と似た部分が多い。
「お邪魔者」はテーブルに道を模したカードを並べて金鉱を掘り進めるゲームだが、「いきあたりバッテラ」は材料の書かれたカードを並べてバッテラを作るゲームである。
ゆえに、配られるカードの中には
鯖、
酢飯、
昆布、
そして特に徳島名物でも香川名物でもない鶏のから揚げが入っている。
プレイヤーはこれらのカードを一人一度に一枚ずつ場に出し、並んだ3枚が「鯖・昆布・酢飯」の正しい組み合わせ(順不同)だったときにバッテラが一つ完成。 そこで徳島県民にいくらかの点が入る、という流れだ。
逆に、香川県民が得点を得るためには、材料の中に鳥からを紛れ込ませたり、鯖や酢飯を必要以上に突っ込むことになる。 むろん、手札の都合で仕方なくそうなったのだ、という芝居を打つ必要があるだろう。
そして、「お邪魔者」で他プレイヤーに妨害用のカードを突き付けることができたように、「いきあたりバッテラ」では怪しいプレイヤーを故郷(くに)に返すことができる。
※このカードを他プレイヤーに渡すことで故郷に帰す
故郷に返されたプレイヤーはその正体を問わず、カードを出すことも得点を得ることもできなくなり、ゲームが一区切りつく(バッテラが10個作られる)まで香川で寂しくうどんをすすることになる。
そうして故郷に返されたプレイヤーがめでたくも香川県民だった場合、彼をカウンターから追い出した徳島県民は得点を得ることができるのだ。
「いきあたりバッテラ」はなぜ素晴らしいか
このゲームは短く、そして大味である。
そして何より、短く、大味であるようデザインされている。
「いきあたりバッテラ」を少しでもプレイすると分かることだが、このゲームにおいてバッテラを正しく作ることは容易ではない。
4種あるカードのうち3種を過不足なく1枚ずつ用意しなければならないというのに、プレイヤー一人ひとりの手元には高々2枚のカードしかないからだ。
このような状態で、あるプレイヤーが徳島県民か香川県民かを見分けることは、少なくともカードの出し方だけを情報とする限りほぼ不可能に近い。
だのにこのゲームでは、「香川県民を故郷に返す」アクションに非常に高い得点が設定されている。
愚直にバッテラを作るだけではなく、不完全な情報をもとに積極的にプレイヤーを故郷に返さなければならないのだ。
また「故郷に帰れ」のアクションはかなり強力であるにも関わらず、ほとんどデメリットを与えられていないのも巧い。
このバランシングによって、「いきあたりバッテラ」では、大味な展開がほぼ約束されることになる。
「鯖!」「昆布!」「昆布!」「故郷へ帰れ!」「鳥から!」「故郷へ帰れ!」と繰り返すうち、プレイヤーのテンションは否応なく高まっていく。
この「いきあたりバッテラ」には「超高速正体隠匿徳島ご当地寿司作りゲーム」という副題がついているのだが、まさにその名の通りスピーディーかつトランシーで寿司作りッシュな体験が得られることだろう。
ところでボードゲーマーの間では、あまり出来のよくない短時間ゲームを「まあ、酒でも飲みながらやる分にはいいんじゃないですか」などと評する向きがある。
しかしその点「いきあたりバッテラ」はまさに本来の意味て「酒でも飲みながらやるゲーム」だ。
現在絶版で入手しにくいゲームだが、プレイする機会があればぜひお試しいただきたい。
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