【ARMS】なぜお前はグランプリLv4で死ぬのか

よくきたな。俺はchocoxinaだ。おまえはARMSを知っているか? 知っているだと? それは少年サンデーでやっていたほうではないか? あいつは右手にジャバウォックを宿すらしいが、俺はよくしらない。ともかく今俺の右手にはジャバウォックではなく、ARMSのうりょくが宿っている。左手にもだ。

おれは誰にもテキストを読ませる気はないが、今回とくべつにARMSについて語ろう。このゲームが真の男のためのものであるとお前らにわからせてやるつもりだ。

※筆者注:この文章は逆噴射聡一郎先生の文体を過度にリスペクトして執筆されています。氏についてくわしくはこちら(

ダイハードテイルズ所属作家紹介:逆噴射聡一郎 | ダイハードテイルズ

)を御覧ください。

 

ARMSとはなにか?

ARMS・・・それはわりと最近任天堂がはつばいした対戦格闘ゲームだ。 なんか腕が伸びるファンキーな見た目とか、任天堂が出しているとかの理由でパーティーゲームのような印象を受けるが、「対戦」「格闘」というワードには真の男にうったえるみ力があり、事実このゲームはかなり真の男の世界、すなわちメキシコだ。(注:パーティー的なモードも含まれており、ライトに楽しむことも可能です)

俺は発売当時このゲームをナメていた。所詮任天堂がキッズむけに出したお遊びだと思っていたし、発売前の体験会では適当に空中からパンチを撃つだけでミイラや実けん生物を叩きのめすことができた。発売後、グランプリ(コンピューター戦だ)で7段階あるうちのレベル4に挑まなければランクマッチに挑戦できないと知ったときも俺は余裕をぶっこいていたし、真っ先にそのレベル4に挑んだ。そして・・・

「ウオーッ!?」

おれはわけもわからず死んだ。KOをつげる無慈悲な声、ゆうゆうと紅茶を飲むベイブのまなざし、観衆の嘲笑・・・。そういったものが俺をさいなんだ。俺は、泣いた。ここで仮にジョイコンを投げ出していたら今のおれはなかったが、俺はそうしなかった。今でこそ俺はランクマッチという真のメキシコで男を磨いているが、その前に長い復讐の旅に出るひつようがあった。そしてそこで俺は、ARMSが真の男のためのゲームであると理解したのだ。

 

お前はこうして死ぬ

グランプリにおける典型的な負けパターンは、こうだ。試合開始と同時にお前はやみくもなジャンプやダッシュを繰り返し、敵が射程に入ったと見るや空中から安直なワンツー・パンチをくり出す。相手のベイブはお前の右腕をステップで避け、左腕は自分の右腕を当てて相殺する。するとどうだ。相手は左腕を残してお前をにらみ、両腕が伸び切ってガラ空きなお前のボディに冷こくなストレートをあびせる。それを何度も繰り返すうちにお前は凍り、燃え、感電し・・・そして、死ぬ。お前はぶざまな死骸をメキシコの荒野にさらし、犬にさえかえりみられることはない。

ここでお前は3つの失敗をおかしている。両腕を伸ばしてしまったことと、安易にジャンプしたこと、そもそもノープランで先手を取ったことだ。

 

両腕を伸ばすな

ARMSのリングはメキシコだ。お前と対戦相手は真正面で向かい合い、弾が1発しか入らない拳銃を両手に持っている。メキシカン・スタンドオフだ。ARMSにおける腕は拳銃だ。弾切れした銃はリロードしなければ使えないように、パンチを放ったら腕が伸び切るか相手にヒットして、戻ってくるまで使えない。

暴力がうずまくメキシコで、銃を使えない奴はどうなる? 死ぬ。だからお前は、両腕を伸ばして銃が使えなくなる時間をなるべく短くしなくてはならない。これは同時に、両手を出す「投げ」のアクションを極めて慎重に行わなければならないことを意味している。

 

むやみにジャンプするな

お前が今から5秒後、アントニオ・バンデラスに殴られることがわかっていたとする。お前は顔を守るように腕をクロスさせ、地面に脚を踏ん張るだろう。そこでジャンプをしようなどというあほはいない。弾き飛ばされてガードの意味がないからだ。だからARMSファイターも空中でガードはできない。

お前が空中を飛び回っている間は相手のパンチも当たりにくいのでそのリスクがわかりにくいが、真の恐怖は着地の瞬間におとずれる。空中の無防備さと地上の狙い易さ・・・さながらメキシコの荒野の真ん中で歩きスマッホをしながらテキーラで飲んだくれているようなものだ。敵はお前にハンドガンでも、ギターケースのロケット弾でも当てることができる。ジャンプは間合いの調整や緊急回避のために必要だが、そのようなリスクがあることを常に意識しておけ。

 

後の先をとれ

俺が最初に挙げた負けパターンの動きを思い出してほしい。あのときお前を負かした敵と同じ動きができれば、お前は強くなれる。ブチョのように悪どいCPUを相手に全く同じ動きはできないだろうが、一つだけ簡単に真似できることがある。先手を取らないことだ。 試合が始まったら、相手をよく見ながら間合いをはかる。相手がパンチを撃ってきたら、避ける。ある程度離れていればこれは簡単だ。そしてそこからパンチをくり出すことによって、お前は相手より腕を一本多く残した状態から殴り合いを始めることができる。相手には拳銃が一丁、お前には二丁。これはかなり有利であることが知られている。

自分からパンチを撃つときにも、なるべくこの状態を作るように動く。誘われた相手のパンチをがんばって2つとも避けたり、自分の二発目をワンテンポ遅らせたり、逆に早めたりして相手のペースを崩し、2対1、1対0の状況を作るのがいいと思う。Lv4くらいのCPUはあほなので、わりと簡単にペースを崩す。

 

その他

・ガードの存在を常に意識しろ。あるていど相手のパンチが避けられるようになったお前はガードの存在など忘れてしまうだろうが、そのような腰抜けはマスターマミーのビッグパンチやミェンミェンのホットリングによってむざんな死をとげる。ガードで敵のパンチをはじいたしゅん間にLボタンを押すとスキのないダッシュができるので、余裕があれば覚えておけ。

・HPゲージ横の三角のドリトスが黄色く燃えると必殺ラッシュが出せるが、これは確実に当てられそうなときにとっておけ。確実というのは相手が少なくとも片腕を伸ばしていて、特にまだ最大まで伸び切っていないときだ。ラッシュは自分の腕がパンチや投げで伸びているときにも発動できる。

・逆に相手のドリトスが黄色くなっているときは注意しろ。不必要なジャンプをせず、常にガードができるようにしておけ。ガードが出来なくても片手が残っていれば相手のラッシュをステップで避けることができる。

・ラスボスにたどり着くまでにチャージの練習をしておけ。チャージというのはジャンプ・ダッシュ・ガードを出しっぱなしにしているときにたまり、チャージ状態でパンチを当てると敵が燃えたりとかして動きがわりと止まる。詳しいことは攻りゃくwikiでも見ておけ。

・アームの種類は何でもいいが、迷ったらグローブみたいな奴にしろ。リボンガールやバイト&バークが持っているクラッカーみたいな奴はそくどが高いので、相手のスキを見つけたときに当てやすい。

・いいね持ちとプロコンのどちらがいいかだと? 知らん。好きなほうでやれ。行き詰まったら両方試してみろ。

 

そしてお前は真の男になる

ARMSは真の男のためのゲームで、リングはメキソコだ。グランプリのLv4は真ん中らへんの難い度とは思えないほど強く、この記事を読んでもまだクリアできないかもしれない。とくにラスボスはチョー強くて苦戦をしいられる。だがそんなときも「エッ真ん中らへんなのにクリアできない・・・ゲームが下手・・・ブックオフに売ってパラッパラッパーでも買お・・・」などと考えないほうがいい。

ニートレホが強いのは自分の強さを信じているからだ。この記事をここまで読んだお前は真の男を目指していて、業者RTや予測変換にも屈しないし、六本木ヒルズアーロンチェアに腰掛けてバターコーヒーを飲むような腰抜けとも違うはずだ。だからお前も自分を信じろ。辛くなったらグランプリをLv1からこう略してもいいし、パーティーマッチでマトアテに興じてもいい。バーサスモードの中にトレーニングもある(一部のトレーニングはグランプリよりも強いので負けても気にするな)。そんなふうにARMSをエンジョイしたあとでまたLv4に挑戦すると、たしかな上達を実感できるだろう。

そうしてやがてグランプリをクリアしたお前は真の男になる。その先にはランクマッチやLv7といった新たなメキシコが広がっているがそんなことはどうでもよく、まずLv4をクリアした自分を誇るべきだ。そうPRIDE OF MEXICO・・・そして未来へ・・・。

妄想大富豪について考える

はじめに

デイリーポータルZで「妄想大富豪」なるゲームが紹介されました。

http://portal.nifty.com/kiji-smp/170607199828_1.htm

詳しい内容は上の記事を読んで頂くものとして、厄介なゲーマーであるところのchocoxinaとしてはこのいかにも楽しげなゲームについていくつか気になる点があるので、自分のためにここに書き残しておきます。

 

基本的なルール

まず、記事に記載のある妄想大富豪のルールは以下です。

・基本は大富豪だが、何を出してもOK
・4枚同時出しによる革命(強弱逆転)はなし
・同じ種類のカードの同時出しは3枚までならOK
・出せるカードがないときはパス
・出せるカードがあるときのパスは二回までOK
・カードを記録するホストと、プレイヤーに別れる
・プレイヤーの人数は三人以上だとより盛り上がる
※パスとアウトの上限はプレイヤーの慣れで調整

 

ここに記事中のリプレイを参考に、不足したルールを補うと以下のようになります。

 

・もう存在しないカードを宣言したり、出せるカードがあるときのパスが規定回数を超えたりすると脱落。つまりこのゲームは「一人負けを決める」もしくは「最後の一人になるまで脱落者を決める」ゲームである。
・カードの所持数という概念はない。つまり誰が何枚カードを出してもよい。
・全てのカードが宣言されたときに関する取り決めは存在しない(っぽい)。

 

記事中ではいかにも記憶力バトルロイヤルという様相の白熱したゲームが繰り広げられたこの妄想大富豪、こんなに楽しそうなのにchocoxinaは一体何を気にしているのかというと、次項のようなことです。

 

無敗の戦略

勘のいい人はもう気づかれたかもしれませんが、このゲームには「自分が脱落する可能性を限りなくゼロにする」戦略が存在します。

 

  1. 最初に自分のターンが来るまでに出たカードを覚えておく
  2. 最初に自分のターンが来たら(ほとんどの場合シングル出しで回ってくる筈です)すぐさま「ジョーカー」を宣言する。
  3. 全員パスをするので、それ以降は「2を三枚、Aを3枚、Kを三枚・・・」と、そのとき出せる最も強い組み合わせを気がすむまで宣言し続ける。

こんな戦略を取れば間違いなくゲームは冬の阿寒湖のように冷え切ったものになるでしょうが、ともかく脱落する可能性を限りなく低くすることができます。
気の知れた仲間内でプレイする分にはお互い空気を読んでこの戦略を取らないようにすればいい(後述するように、実はそうとも言い切れないのですが)としても、このゲームはこういった戦略が存在することで「どうしても負けたくない人間が一人混じるだけでゲームが冷え切る」というリスクを抱えているといえます。

 

もちろんこの戦略、作者のネルソン水嶋さんも認知しており、以下のようにコメントしています。

ネルソン水嶋 on Twitter: "ちなみに先手で最強カードを出しつづける策は当然把握してるのですが、出したら勝ちのゲームではないので、そもそも意味がないのです。サッカーでボールを抱きかかえてゴールに走り込む行為。初手で最強カード出したら即アウトってやってもいいしね。 #妄想大富豪の話"
ただし、この発言を以ってこの問題はハイ解決、とは言い難く、依然として「戦略上正しい行いによってゲームがつまらなくなる」可能性が残っています。

まず第一に、ここでは上記の戦略(以下、全出し戦略と呼びます)は「意味がない」と断じられていますが、前述したとおりこの戦略にある程度の意味があることは明らかです。カードが全て出された場合の処理が不明瞭なので細かなことは言えませんが、少なくとも妄想大富豪は脱落者(すなわち負けるプレイヤー)を決めるゲームですので、そこで自分が脱落する可能性を0にできるということは、全出し戦略に「五分五分以上」の利益があることを意味します。

次に、先のpostで示されている「初手で最強カード出したら即アウト」という代案はほとんど意味を成しません。初手で全出し戦略を行わないならばその次以降にそれに極めて近い戦略を行なう権利を依然として有するからです。

 

空気を読んでも

また、参加するプレイヤーが全員空気を読んで全出し戦略を行わなかった場合にも、実は似たような問題が発生しえます。

 

このゲームは脱落者を決めるゲームですので、大きく分けて二つの戦略が存在します。積極的に他人が脱落するように仕向ける「攻撃」か、なるべく脱落しないようにプレイして全員が脱落するのを待つ「防御」かです。

このゲームにおいて「攻撃」とは「他人が覚えにくい数字を宣言すること」だと言え、また防御は「自分が覚えやすい数字を宣言すること」だと言えるでしょう。
そしてこのゲームは「攻撃」よりも「防御」が強いゲームなのです。それは何故か。

 

まず第一に一般論として「他人に覚えにくい数字」というのは、ほとんどの場合「自分にも覚えにくい数字」です。つまりこのゲームにおいて誰かを攻撃すると、自分も攻撃されたのと同等に近いリスクを背負うことになります。
そして第二に、このゲームにおいて「防御」は極めて万能です。ここで妄想大富豪における防御とは何かをよりハッキリさせておくと、それは「最も強いカードを覚えておき、それを宣言すること」です。

(先の記事中では、例えば3、4、5、6、という風に足並みを揃えることが無難なように書かれていますが、それが誤りだという主張を内包します)


このゲーム、例えば序盤のプレイヤーが「3!」「4!」「7!」「10!」などとてんでバラバラの数字を宣言するからといって、そのあたりの数字を闇雲に覚えておくことはあまり役に立ちません。仮に今あなたが「今回のゲーム中、5が一度も出ていないぞ!」ということを覚えていたとしても、自分の前のプレイヤーが「7!」と宣言したならば、あなたは8以上の数字を宣言しなければならないからです。


しかしここで、あなたが「ジョーカーと2は全て出ていて、Aは2枚残っている」ということだけ全力で覚えていたとしたらどうでしょう。直前のプレイヤーがどんな数字を宣言してきても「A!」と悠々宣言し、全員パス(または誰かが2を宣言して脱落!)するのを確認した後で、いくらでも「今まであまり出ていなかった気がする数字」を54枚のカードの中から思い出して宣言することができます。


2からクイーンくらいまで強いカードの出方さえ覚えていれば自分の手番を無難に過ごすことができる。これがこのゲームにおいて防御が万能である理由です。
そして今一度思い出してほしいのですが、このゲームで誰かを攻撃することはリスクになるのでした。するとこのゲームで最も有利な立ち回りは「自分は防御に徹して、誰かが攻撃で自滅するのを待つ」ことだといえるわけです。


うわー、という感じでしょう。一番つまらない戦略を取ったしょっぱい野郎が一番有利になってしまうのです。

※もっと言えば、このつまらない防御戦略のもっとも堅実なバリエーションが、先に挙げた全出し戦略だと言えます

※さらにいえばこの防御戦略は「結局全出しに近いことをすればいいんじゃん」というところを巧妙に無視した産物なので、多少の誤りは多めに見ていただきたいところです

 

で、そんな戦略があるから何だというのか

ーーと、ここまでいかにも妄想大富豪を批判するかのような物言いを続けてきましたが、妄想大富豪というゲームにこのような戦略が存在することは、必ずしもそのゲームの価値を損なわないと考えています。


先のリプレイでは、ある男性がゲーム中「13より上のカードが全て出ていたかどうか」でおおいに悩み、結局不正なパスをして失敗しています。これは先に挙げた防御戦略の観点からいってかなり下手を打っているわけですが、それはそれとして記事中の男性はたいへんに楽しそうです。
要はこのゲーム、「戦略だの何だのと言い出さない限りは超絶楽しいゲーム」だと言えるわけなんですね。野暮なこと言ってんじゃねえよchocoxina、というだけの話なわけです。

 

とはいえ野暮で厄介なchocoxinaはどうしても「ゲームがしらけるリスク」が気になってしまう性分で、じゃあなるべくしらけないような改良案を考えてみよう、というのがこの先の話になります。

 


代案1.チャレンジルール


このゲームが「脱落者を決める」ゲームである限り、全出し戦略や防御戦略のようなしょっぱい手段が有効であり続けるので、すこしルールを加えて「勝者を決める」ゲームに変更してみるのはどうでしょうか。


まず変更点として、存在しないカードをコールしたり、まだ出せるカードがあるのにパスを行なうなどの不正な宣言をしても脱落しないものとします。
そのかわり、自分の順番が回ってきていないプレイヤーは、他のプレイヤーが不正な宣言をしたと思ったらいつでも「ダウト」と言うことができます。


ダウトが行われたらすぐさま答え合わせをし、宣言が不正だった場合はダウトしたプレイヤーの勝利、宣言が不正でなかった場合はダウトしたプレイヤーが脱落してゲーム続行、というわけです。


ただ防御ばかりしていては他のプレイヤーが勝ち抜けてしまうほか、危険な数字を宣言するリスクが若干下がるため防御戦略のメリットが減り、また勝者のみが決まるルールにすることで、全出し戦略は「負けない戦略」であることよりも「勝てない戦略」だという側面が強調されます。

 


2.半妄想ルール


先ほどとは別に、全出し戦略や防御戦略をなるべく簡単なルールの追加で潰すことによって、妄想大富豪本来の楽しさを生かすルールを考えてみます。
まずプレイヤーに、本物のトランプを五枚ずつ程度配ってしまいます。
そのトランプが全てなくなるまで通常の大富豪を行なったあとで、続きを妄想大富豪で行うのです。
序盤に思い通りのカードが出せなくなるために、防御戦略や全出し戦略は極めて行いにくくなるでしょう。

 

 

3.逆大富豪ルール


通常の大富豪は手札を全て出し切ったら勝ちですが、その逆のルールを妄想大富豪に追加します。
つまり、4人プレイなら一人あたり14枚のカードを持っているものと仮定し、一人が14枚目のカードを宣言して(仮想の手札が空になって)しまったらそこで脱落とします。
これにより、一人で何度もカードを出す全出し戦略や、一ターンに少なくとも2枚のカードを出さなければならない防御戦略はかなり不利になるほか、自分が最強のカードを出さなくて済むように立ち回る戦略性が追加されます。

 

終わりに


さて、こうして人様がせっかく考えたゲームに難癖をつけ、テストプレイもしていない代案を賢しらにも提示したわけですが、せっかくなのでこの記事を読んで妄想大富豪に興味を持たれた方はぜひプレイして頂き、ちょっと物足りないなと思った方は上記のバリエーションを試して頂くとよろしいかと思います。

【落ちのない話】相席屋に行ったことがない

一般に、新しいことに挑戦するときは、余計なプライドを捨てるべきだ。

その方が先人のアドバイスなどを素直に受け入れられるし、自分の実力を過大評価して失敗することもない。

何事においても、初めのうちは謙虚であることが成功の秘訣と言えるだろう。

 

さて話は飛んで、俺ことchocoxinaは「相席屋」に行ったことがない。

https://aiseki-ya.com/

相席屋がどういう店かご存知ない方は上のリンクを参考にして頂くとして、まあざっくり言えば来店する男女の相席を斡旋して出会いの場を提供する飲食店である。

長いこと恋人のいないchocoxinaとして、そう無関心ではいられないたぐいの店ではあるのだが、繰り返す通りこの店には行ったことがない。それは何故か。

 

chocoxinaは概して臆病なので、こういう変わった業態の店に行こうかと考えるとき(そう、一度訪店を検討したことがある)には、店のシステムなどをしつこいくらいに調べることにしている。

先の公式サイトには利用方法が詳しく書かれたハウツーが用意されていたのだけれど、それを読み進めるうちに、なんというかこう、打ちひしがれたのだ。

https://aiseki-ya.com/howto/

このページ、最初のうちは特に、繊細なchocoxinaからしてもなんともない内容が続くのだが、引っかかったのがstep4。

タイトルが「お礼も忘れずに」だ。

この項目を読み進めるうちに俺は、ああ、そうか、と思い至る。このような店に行くというのは、店側に「お礼もできない奴」だと思われることなのだなと。

屈辱、という言い方が適切かどうか分からないが、例えるなら男子トイレに行ったときに、小便器の上に「一歩前へ」「トイレは清潔に」などの張り紙に紛れて「ちんちんはちゃんとしまいましょう」と書かれていたみたいな衝撃だった。バカにしてんのか、と喉まで出掛かった(もっと言えば、chocoxinaが最初に確認した当時、あのページはカラテカ入江をイメージキャラクターにしたクソちゃらいもので、よりみじめな気持ちにさせられたものだった)。

 

とはいえ、だ。考え直してみれば事実chocoxinaにはずいぶん長いこと恋人もいないわけで、なにか性格に重大な欠陥がある可能性について真剣に検討しなければならないところだ(性格だけでなく見た目に問題があることも否定しないが)。

そんな自分、それこそ性格に重大な欠陥を抱えていながら、あまつさえその自覚すらない現在の自分は、果たして他人に「挨拶もできない奴」だと思われたときに「バカにしてんのか」などと言い返せるような高尚な人間だろうか? それこそ思い上がりで、新しいことに挑戦するに際しての謙虚さが足りていないのではないか?

ーーいやでも待ってくれ、ただでさえ人様に誇るところのない自分が「人並みに挨拶ができるという人として最低限度の自負」までかなぐり捨てなきゃならないなんて、そんなのあんまりではないか、そんなゴミクズみたいな所まで自己評価を落として、どうやって女性に顔向けしろというのかーー

 

そんなことを考え続けて結局そのときは訪問を諦め、そのまま今日に至る。

果たして自分は謙虚さを欠いたのか、それとも辛うじてゴミクズのような卑屈から踏みとどまったのか。どちらにせよ未来のパートナーに申し訳の立たぬ性格で痛し痒しである。

【落ちのない話】天使でも女神でもない歌声を聞いた

出勤途中に毎日通る住宅街で、前方に見慣れない親子連れを見かけた。

小学一、二年生だろうかという男児はこちらに背中を向けながら頭をぐったりと垂れ、腕や脚を不自然な方向に曲げて、右隣の母親に脇を抱えられながらどうにか歩いていた。背中越しにも、何かしらの障碍を抱えていることが容易に見て取れた。

隣の母親は、身長がその男児と頭2つ分も違わないような小柄な女性だった。俺は反射的に「大変そうだな」と思った。

 

ゆっくりと歩く二人を追い越しながら、彼女らの方を振り向かないように、彼女らを自分の下卑た好奇の目に晒さないように気をつけていると、女性の声が聞こえてきた。「さんぽ」を歌っていた。

月並みに形容すれば、その声は天使のようだった。

 

人の声から受ける印象などというのがまったくアテにならないことは知っているし、俺は世の母親に女神的な母性を期待するような乳臭い人間ではない。自分自身が声で、見た目で、表情で誤解を受けることの多い人生を送ってきたし、俺の母は自分が小学校に上がる前に家を出ていった。今日俺が彼女の声に抱いた感想というのはつまり「子どもの障碍に負けない母の愛」みたいな夢想から来るものではなく、例えばアイドルが歌うのを聞いて「ナントカちゃんの歌声は天使」などと言うのと大きく変わりないもののはずだ。少なくとも、変わりないものでなければならない。

 

キーを四度下げて、囁くように穏やかに歌う。歩こう、歩こう、私は元気。合間合間に男児の声が聞こえる。その背丈に不釣り合いなほど低い声で呻く。彼女にはその呻き声の機微が分かるのだろうか。今、喜んでいるな、と感じられるのだろうか。歩くの大好き、どんどん行こう。

 

彼女に女神のような母性や愛を期待してはならない。ただでさえ子育てというのは苦労が多いと聞くし、まして子どもが障碍を抱えているとなれば尚更だろう。ときには子どもを殺したいほど憎むようなことすらあって不自然ではない。彼女がどんな気持ちで「さんぽ」を歌ったのか、俺には知りようもない。

それでも、彼女に育てられたあの男児は幸せだろうな、と思わずにいられなかった。たかが歌声から勝手に彼女の愛を想像したわけだ。言い訳すれば、それほどの声だった。

 

俺は彼女に、自分の「性的な妄想のネタにするよりも下卑た行い」を内心で詫びながら早足でその場から逃げた。耳に残る彼女の声を忘れようと努めた。彼女の声に感じ入ることは、感動ポルノの消費にほかならないと思ったからだ。――考え過ぎだろうか。

【落ちのない話】デパートの柱をじゃきじゃきにする仕事

少し前、新宿小田急を歩いていたら、一階の一部が「天井工事中」となっていて、がっつり工事用の足場が組んであった。

「なんの工事かなあ」と思いながら頭上を眺めていると、ちょうど工事中の部分と工事中でない部分の境目にさしあたって、その工事中でない(おそらく工事が終わった)部分では、天井というよりはむしろ柱の上部に、なにかこうじゃきじゃきとした、例えるならCPUのクーラーのような装飾が付いていることに気付いた。柱に装飾を施すための工事だったわけだ。

 

思い起こせば、デパートの柱というのはたしかになにかしらの装飾がついていることが多かったように思うが、今まで特段意識したこともなかった。でも世の中には「そろそろ柱の装飾を変える季節だな」とスケジュールする人や「今度の装飾はなんかじゃきじゃきしたやつにしよう」とデザインする人、そのじゃきじゃきしたやつを実際に作る人や、それを取り付けるための工事をする人がいるのだな、という気づきがあった。

 

で、そうやって、柱の装飾をじゃきじゃきにするひとたちの中で、とくに具体的な意匠、つまり、今シーズンはじゃきじゃきにしようとか、シーズンによっては水玉だったりしましまだったりにしようと決める人たちというのは、一般にはデザイナーと言われるものなのだろうけど、そういうデザイナーさんというのはつまり「なにデザイナー」なんだろうか。「デパートの柱デザイナー」というわけでもないだろうし、さしづめ「空間設計デザイナー」といったところだろうか。いちど話を聞いてみたい。

水を旨くするラーメン調べ

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 手前が今回のメインです。
 
水が旨い。
学生の頃は、水分補給といえばもっぱら炭酸飲料で、ペットボトルの水などは「なぜわざわざ好きこのんで味のしないものを」と下に見ていた節すらあったのだが、いつからか只の水をことのほか美味しく感じるようになった。
天気の良い日にコンビニで買って飲む天然水や、一汗かいた後にウォーターサーバーから飲むよく冷えた水なども素晴らしいが、一番水がおいしいシチュエーションといえばやはり「ラーメン屋」だと思う。
むせ返るような湯気をかき分けて熱々の麺をわっしわっしと啜ったあと、すっかりラーメン味になった口の中にキンキンに冷えた水を流し込むのだ。
あれって、やはりラーメンの種類によって水の美味しさも変わるのだろうか。調べてみよう。

 


家系ラーメン


なんとなく「やっぱり濃い味のスープを流し込むように飲む水が旨いだろうなあ」と思ったので、知っている中で最も味の濃いラーメン屋に来た。杉並区方南にある「桂家」という店だ。

 

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桂家は俗に「家系ラーメン」と呼ばれる濃厚な豚骨醤油ラーメンの有名店で、東京一に推すファンも多いらしい。
今年の初めごろまで店主の体調不良で長期休業していた上、現在も不定休で門前払いを食らうことも多いため、たまにこうして営業中だとついテンションが上がってしまう。
 
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が、今回はあくまで水を飲みに来たのだ。うやうやしく給水器から水を受け取る。
 
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水と、チャーシュー麺ほうれん草増しと半ライス。水がメインだっつってるのにトッピング2つにライスまで頼んでいる。
 
ともかくも麺を食おう。あくまでもこの後の水を味わう為である。
 
――鶏油でとろりとしたスープをまとって、柔らかめの麺が口に飛び込んでくる。
スープは濃厚だが油に覆われて刺々しい感じはなく、それぞれ強烈な油と旨味と塩気とがひとかたまりになって、舌に重いブローを利かせてくる。
麺を噛みしめるたび、その旨味に身体が反応して唾液が湧き出る。
一枚一枚がうれしい厚さに切られたチャーシューをかじり、よくスープに馴染んだ海苔とほうれん草で半ライスをかき込む。「家系を食いたい」と思ったときに活性化する脳の部位がすべて喜んでいる感じがする。
 
おいしいなあ。
 
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 一応別の日にちゃんと撮ったラーメンの画像もご覧下さい。
 
――と、この通り本筋を完全に忘れるほど美味いラーメンではあったのだが、肝心の「水を味わう」という観点からは今ひとつだった。
口中を支配する濃厚な味と油が、たかが水一杯くらいでは切れてくれないのだ。
給水器の水そのものが、ピッチャーから供されるものほどには冷えていないのも相まって、飲み切ったあとの「水がうめえな!」という感慨はない。「春休み前に転校してきた奴」くらいの印象の薄さだ。

しかしここでも水を飲む利点は確かにあって、例えば麺をひととおり食べ尽くしたあとでスープを残して帰るつもりで水を飲むと、口のなかに残るスープの味が懐かしくなってスープを一口すすってしまい、そこからまた止まらなくなる、という風に、幸福なジレンマを味わうことができる。
この店において、水はあくまでラーメンのおまけなのである(当たり前だが)。
 
家系ラーメン
  • サポート力(水を旨くする力):★★☆☆
  • 飲んだ水の量:1.5杯
  • 水どころではなさ:★★★★
  • 水の飲み頃:スープと交互に少しずつ
 
 
 
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ところで、この日はトッピングたっぷりのラーメンとライスと水1.5杯を接種したあとで、健康に気を使ってトクホ的なお茶を飲んだため、おなかがパツパツになりました。
 
 


天下一品


家系ラーメンが「水のチェイサー」としてはやや不十分だったため、別ベクトルで濃い味のラーメンを求めて天下一品に来た。
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天下一品は京都発祥のラーメンチェーンで、後述する通りとにかく濃厚なスープが特徴的だ。
 
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水と、こってりラーメン

この特徴的なスープを見ているだけで喉が渇く。これは期待できそうだ。
 
――丼に箸を入れると、細目の麺と一緒に粘度の高いスープがこれでもかというほど持ち上がる。
指先にありがたい重みを感じながらすすると、吸い込む空気にまるで色でもついていそうなほどの鶏ガラの臭気が満ちて、むせ返りそうになる。
重さに負けないようにわしわしと麺をすすり、ざらついたスープの中の強烈なうまみに卒倒する。軽快な食感のメンマであごを休めながら、戦うように食う。
 
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そして、そうやって思うさま口の中をざらつかせた後に水を飲むと、これが、すこぶる旨いのだ。
天一のこってり味とざらざら感が綺麗に洗い流されて、清純な水の味が舌を滑る。
ピッチャーから注ぎたての水は、麺をすすり続けて酸欠気味になった脳をキンと冷やしてくれる。瀕死のときに飲むエリクサーはきっとこういう味がするのだろうと思う。
 一杯目を飲み切った後、すぐさまピッチャーに手を伸ばして二杯目を注いだ。これだよこれ、という感じだ。
 
天下一品
  • サポート力:★★★★
  • 飲んだ水の量:2杯
  • 中毒性:★★★☆
  • 水の飲み頃:いつでも
 2件目にしてほとんど正解が出てしまった気がする。天一のように味が濃く、かつ家系ほど油が浮いていないラーメンが水を旨くするのだ。
 
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それはそれとして、この日も前回とは別のトクホ的なお茶を飲みました。効果はともかくお茶の味が濃くて美味い。
 
 
 

汁なし担々麺


さて、もう一軒くらい調査をしたいところだが、三日連続のラーメンはさすがにいろいろ(肌とか肝臓とかに)不安がある。
最後はなるべく体に悪くなさそうなものがいい。例えばスープがなくて、ちゃんと野菜とかが入っているもの。
そしてもちろん味が濃く、かつあまり油っぽすぎないもの。
そんなちょうどいい店が台東区蔵前駅近くにあったので、最後はそこに決めた。近頃話題の汁なし担々麺の店だ。
 
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タンタンタイガーさん

そういえば、そもそも本場中国では汁の入っていないのが普通の担々麺だとかいう話もありますが、今回のメインは水なので些末な話ですね。
 
  
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水と、汁なし担々麺。水だけ飲んでも美味そうなほど写真写りが良い。
 
 
例によってまずは麺を、店員さんに説明を受けたとおりよく混ぜてから食う。

――濃厚なゴマの香りの中にひき肉のうま味、あとはアミエビかなにかの複雑な風味が広がる。クセになるタイプの味だ。
担々麺のキモである唐辛子と花椒はその濃厚さに覆われているようでいて、食べ進めるうちにじわじわと辛い。額の汗腺が開き、舌先が正座した足みたいに痺れる。身体がイレギュラーな刺激に対応しようと活性化するのが分かる。金曜夜の疲れ切った脳に喝が入る。
上に乗ったシャキシャキの水菜が爽やかで、口の中が適度にリセットされていくらでも食べられるようだ。
 
 
そして、この担々麺で口の中をひりひり、しびしびとさせた後の水! これが旨いというか、面白いのである。

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ラーメン屋の水にレモン入ってるとテンション上がりませんか。

花椒で心地よくしびしびととした舌を、キンキンに冷えたレモン水が流れる。するとなんだか、水の冷たさがアップしたような、むしろソーダ水の味がするような、とにかく不思議な感覚がして楽しい。
そうでなくても唐辛子でじんわりと汗をかいた身体はおのずと水を求め、麺を完食した後の何も残っていない状態から、水を2杯、3杯と飲めてしまうのだ。
 
求めていた感じとは少し違うが、この汁なし担々麺が水を美味くしていることは明らかだ。
汁なし担々麺
  • サポート力:★★★☆
  • 飲んだ水の量:3杯
  • 楽しさ:★★★★
  • 水の飲み頃:すべて食べ終えてから
この日はかなり体調が心配だったので、昼夜二連で健康的なものを飲みました。
 
 
 

まとめ

結論ありきで検証を進めた感があるが、ともかく今回の調査では、水を旨くするラーメンの条件として

・味が濃い

・油っぽすぎない

・そもそも水がピッチャーで出ていて冷たい

が大事であることがわかった。今後も引き続き、今回の条件に合致する「本格派博多とんこつ」や、条件に当てはまらないのにやたら水が美味かった記憶がある「昔ながらの鶏ガラ醤油」などについても調査を進めたい。

 

とはいえ、本件検証後の土曜日は内蔵が疲れて一日中ぐったりしていたので、しばらく日を空けたいと思います。

 

悪夢で見たエレベーターに乗る

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このやべー角度のエレベーターに乗ってきました

 

 

誰もが悪夢に悩む

いろいろな人が共通して見る悪夢、というのがあるらしい。

数年前のある時期、「歯が抜ける悪夢」を何度も見ることがあったので、すがるような気持ちでGoogle検索をかけたところ、夢占い関連の記事がわんさかヒットした。

歯が抜ける夢 - Google 検索
占いの結果はともかく、ある夢が夢占いの事例集に載るということは、占い師がその夢について何度も相談を受けたということだろう。それを知っただけで「俺だけじゃないんだな」と安心したのを覚えている。


夢占い関係のサイトにはほかにもさまざまな悪夢の定型が紹介されていて、例えば
・何かに追われる
・冤罪を受ける
・叱責される
・暗いところへ落ちる
などが「メジャーどころ」のようだ。読者の方にも、いくつか思い当たる例があるのではないかと思う。

今回取り上げる悪夢も、上で紹介したものほどではないにせよ結構メジャーらしいのだが、果たして共感してくれる方はおられるだろうか。

ええっと、「エレベーターに乗る夢」なんですけれども。

 

 

エレベーターの悪夢とはf:id:chocoxina:20170319001931p:plain

(これから、人に聞かせる話として最大のタブーである「自分が見た夢の話」をさせて頂くんですが、どうかほんの少しだけ我慢してついてきて下さい)

 

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――見覚えのないエレベーターに乗った状態から夢は始まる。


――そのエレベーターはガラス張りになっている。外は漠然とした「街」であったり、工場の中や荒れ野だったりする。


――エレベーターは自分の操作を待たず勝手に動き出す。それはただ上昇するだけではなく、地面と平行に動いたり、うんと大きくジャンプしたり、建物や地形をなぞるように動いたりする。その予測不可能な動きや、どこへ連れて行かれるか分からない状況が、えも言われぬ恐怖を呼び起こす。


――そうして乗客を思うさま振り回しているうちにエレベーターは止まって、目的地(謎の団地や、昔のガールフレンドの家や、実家の周りの住宅街)に俺を放り出す。


――その目的地に、何かしらのトラウマを想起させられるうち、夢は次第に輪郭をおぼろにしていく――

 

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(お付き合いいただきありがとうございます。口直しに空でも眺めてください)


重ね重ね、読者の皆様には夢の話などしてしまって恐縮なのだが、実はこういうタイプの夢を見るのはchocoxinaだけではないらしいのだ。

 

そのことを知ったのはごく最近、日課のネットサーフィンに勤しんでいたときのこと。

 

 
Twitterでたまたま「水平に動いてから垂直に上がるエレベーター」というのを見かけて、すげえ! これ夢で見たことある! などと感激していたら、

 

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なんだか、他にもそういう意見が続々と集まっている。

マジで? みんなもエレベーターの悪夢見るの? 俺も俺も!

 

「夢で見た感じのエレベーターが実在する」「しかもその夢を見ているのは俺だけではないらしい」という2つの興奮がないまぜになって、気づけば仕事そっちのけでエレベーターについて調べていた。

上記の動画はどうもイタリア(?)の工場で撮られたものらしいのだが、同じくらい変わったエレベーターが日本にもあるらしい。


やっべ、行こう。

 

 

エレベーターに乗りに山梨まで

新宿からまずは京王線か中央線で高尾まで、そこから中央本線に乗り換えて四駅。都合一時間少々で今回の目的地である四方津(しおつ)駅に到着する。

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レトロで可愛らしい佇まいの駅

 

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初めて使う自撮り棒を警戒している筆者

 

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駅周辺はご覧の通り山あいののどかな町で、旅馴れていない筆者からするとこの段階で既に夢っぽい。今夜の夢はトトロの世界かな? という感じだ。

 

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名所案内を参考にこのままハイキングと洒落込みそうになったが、今日の目的はエレベーターである。

 

 

で、そのエレベーターというのは、四方津駅から北に、案内板などに従って歩道橋を2分ほど歩いたところにある。

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この画面両脇の

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これ!


のどかな駅周辺から徒歩2分でこの近未来っぷり。それこそ夢みたいな唐突さである。


駅から本当にすぐの所にあるこの施設は、名前をコモア・ブリッジといい、山の上にあるニュータウンコモアしおつ」にアクセスするための通路となっている。
肝心のエレベーターは見ての通り斜めに、山の斜面に添って動くタイプで、こういう形式のものを機能そのままに「斜行エレベーター」というらしい。

 

(ところで、1枚目の写真の真ん中にでんと構える超長いエスカレーター。こちらも大変気になるところだが、

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訪問した際は修理中だったのか、乗ることは叶わなかった)

 

 

ともあれエレベーターを見ていく。

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まずはドア部。見切れた画面左側のボードに昇降ボタンがある。

通常のエレベーターでは階数を表示することが多いドア上部は、20mきざみでエレベーターの大まかな位置が表示されるようになっている(そう、このエレベーターは全長200mもある!)。

 

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内装はドアと同じスカイブルー。長めの搭乗時間をつぶすためにテレビがついていたり、天井がお洒落なアーチ状だったりと「しつらえが良い」という言葉がしっくり来る。全体としてはほんのりレトロなたたずまいで、ビビッドな水色が上品にまとまっている印象だ。

 

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「下」「上」という、あまり見たことのない行き先階ボタン。

 

こうして内装の写真を撮りまくっていると、程なくエレベーターは動き出した。
それに気づいてガラス張りの後方を振り返ると「ああ、これだ」という思いがした。待ちわびた悪夢だ。

 

 

夢にまで見た 

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エレベーター独特の浮遊感のある乗り心地と、慣れない方向に動く景色が、少しずつ現実味を失わせる。

 

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自分の元いた場所を眺めると、景色がフラクタルのように遠ざかる。「どこか知らない所へ連れて行かれる」という感じがする。そういえば俺は、この上がどんな場所だか知らない。

 

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備え付けのテレビからはうっすらとニュースキャスターの声が聞こえ、けぶったガラスの向こうからは淡く日が差す。例えばよく晴れた休日、居間のソファでまぶたを薄日に照らされながらうたた寝したら、こういう夢を見るだろうな、と思う。

 

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ドア越しの景色。さまざまな角度の柱が、さまざまな距離感で視界を通り抜ける。傾いているのは地面か、柱か、それともこのエレベーターか、少しずつあやふやになってくる。

録画を切った直後、レールの継ぎ目かなにかに躓いたエレベーターが、小さくがこん、と揺れた気がした。それとも、揺れたのは自分自身だったろうか?

 

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――そろそろ時間感覚すら失われようかというとき、エレベーターは上階に到着した。

 

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上階のホールにはコモア・ブリッジの模型が展示されていて、それを眺めていると「そうか、俺はさっきまでこれに乗っていたんだな」と、主観的な体験と客観的な事実とがようやく繋がったように思えた。

 

 

予期せぬ白昼夢、コモアしおつ

さて、いい体験ができたしもう帰ってもいいんだけど、せっかく上ってきたんだから、と、軽い気持ちで「コモアしおつ」にくり出したのだが。

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そこはおおよそこんな感じの、ごくごく普通の住宅街だった。


普通の住宅街。

確かにその通りだったのだが、それを見るchocoxinaの心中はどこか穏やかでなかった。

家々の淡い色の壁や、よく整えられた庭などを眺めながら散策するうち、無視できない違和感が胸に澱(おり)をつくるのを感じた。

 

・・・なぜ俺は「こんなところ」に? 

 

思い出して欲しいのだが、chocoxinaはほんの数分前まで山の中にいたはずだった。

それが、たかが数分エレベーターに乗ってぼんやりとしていたら、いつの間にかこんな小綺麗な住宅地にいる。

 

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ギャップがすごくないすか

 

自分の脳がこの脈絡のなさについて来られないのを感じながら、俺は確かに自分の意思で来たはずのこの場所を、どこか「迷い込んでしまった」ような気持ちで歩いた。


また、この時感じた違和感には別の事情もあって、この家々の外壁の色味や、軒先の植え込みのちょっと気の利いた感じ――これが私事で恐縮なのだけれども、実家の近所の住宅街にそっくりなのだ。

 

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(夢の話に続いて伝わらない話で恐縮です。改めて空でも眺めてください)


ともかく、この時のchocoxinaにしてみれば、トトロの世界のような山の中から、近未来施設の悪夢エレベーターに乗って、パラレルワールドの実家に迷い込んだようなもので、それこそ風邪をひいて夢でも見ているような気分だった。

 

(ちなみに、あとで調べてみたところ、このコモアしおつの戸建て販売が開始されたのは1991年とのこと。その前後に開発された住宅地やその近所に住んでいる方なら、このときchocoxinaがコモアしおつに感じたデジャヴを共有していただけるのではないだろうか)

 

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混乱を収めるためというか「ここなら何か変わったものを売っていて、それを見たらデジャヴからは開放されるかも知れない」というような気持ちで入ったスーパーマーケットもやっぱり普通だったので

 

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完全に目的を見失って「おひるごはん」「おやつ」「普段から集めてるシール付きウエハース」と、うっかりガチの買い物をしてしまった。

 

 

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また、訪問したのが土曜日の昼下がりだったこともあってか、出歩いている人が少なく、生活音が全くしなかったのも夢っぽさに拍車をかけた。

たまに聞こえる音といえば、数分ごとに大通りを通る車のエンジン音や、春先の風が植え込みを揺らす音くらいで、それ以外は文字通り白昼夢のような静寂だった。歩きながらさっき買ったウエハースを一口かじると、ばりりっ、と場違いに大きな音が響いて、思わず身をすくめるほどだった(それでも結局、中身のシールが気になって3枚全部食べた)。

 

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本筋とは全く関係ないんですが、その時のシールです。

 

 

夜の斜行エレベーター

さて、その後は

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夢っぽいというよりもむしろレトロなRPGっぽい立て看板を見つけたり

 

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今まで見た「プラザ」の中で最も小さいやつを見つけたり

 

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地元の飲み屋さんで一杯引っ掛けたりしているうちに日が暮れてきたので、そろそろ帰ることとしよう。

帰りはもちろんコモア・ブリッジの斜行エレベーターを使う。

 

夜の斜行エレベーターは、特に下りともなると、昼のそれに比べて圧倒的に悪夢感が増す。

 

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"暗いところへ落ちる夢や何処までも落ちる夢は、あなたが抱えている問題の根が深く、どんなに頑張っても解決しそうにないことを暗示しています。"

 

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" 死に直面していたり、死ぬことへの恐怖を抱えている場合もあります。"

 

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"悲観的にならず視点を変えるなど大胆な発想の転換が必要です。信頼できる人に相談するのが良いでしょう。"

落ちる夢・落下する夢の夢占い - 夢の夢占い

 

この夜、chocoxinaは案の定エレベーターの悪夢を見ましたが、皆さんはそうならないよう祈っています。あれ結構怖いので。

 

 

後日談

ちなみに、記事中では夢っぽい夢っぽいと書きつつも、訪問時はさすがにもう少し意識もはっきりしていたつもりだったのだが、今になって当時の写真などを見返すと

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メモをとる際に「エレベーター」を書き損じる

 

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「これはかなり夢っぽいぞ!」と思いながら全然夢っぽくない信用金庫の写真を撮る


など、結構ガチの夢うつつになっていた形跡があった。やっぱり寝てたのかも知れない。