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ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

第一回 キング・オブ・あやかりハイツ決定戦(下北沢編)

有名な町、無名な町というのがある。

たとえば、三軒茶屋、浅草、田園調布、などといった地域は、東京の地理に明るくない人でもその名前を聞いたことがあるだろう。

一方で、それらのすぐ近くにある、上馬、入谷、奥沢、といった場所は、恐らく近所に住むか沿線を使うかしていなければ、正直どこにあるのかわからないのではないだろうか。

ここでいう後者、つまり、メジャーな町の近くにあるそうでもない町の中にこそ、今回紹介する「あやかりハイツ」はある。

すなわち、

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このように、自身の住所ではなく、近所のよりメジャーな町の名を名乗るアパート・マンションである。

普段はややネガティブな側面(近所を歩いているときに見かけると土地勘が狂う、とか)が目立ちがちなこれらの建物であるが、今あえてその「あやかりぶり」に着目し、ランキング形式で紹介したい。

第一回(次回未定)となる今回は、若者の町、下北沢からお送りしていく。

第3位:Comforia下北沢

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第3位のComforia下北沢は、一般的には「羽根木」と呼ばれるエリアにある。

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駅からは直線距離で800m、また実際の最寄り駅は京王井の頭線新代田駅だ。

渋谷で仕事をした帰りであれば、下北沢を通り過ぎてそのままこちらまで電車に乗ってくることになるだろう。

(ちなみに、この後紹介するほとんどの建物は、地域こそそれぞれ違うものの、駅からの距離はほぼ同程度である。今回は、建物と下北沢との隔たりを多面的に評価してランキングをつけさせて頂く)

さて、このComforia下北沢のランクインを決定づけたのは、建物の眼前にある両側計5車線の環七通り。

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この大通りを横断して下北沢駅まで行くのは容易ではなく、見かけ以上の時間がかかるのだ。

またこの建物から下北沢駅までは住宅街を突っ切るような格好になり、直通するような分かりやすい道もないため、心理的な隔たりはより大きなものになるだろう。

とはいえ、新代田駅の近くには「FEVER」という著名なライブハウスをはじめ、いかにも「っぽい」店が多く、Conrofia下北沢は、その辺りを含めた広義の「下北沢エリア」からさして離れていない、という見方もできる。

恐らく「モヤさま」ならば、下北沢回でこのあたりまでは歩いてくるだろう。

またこの建物は、新代田を含めた近隣のどの駅からも微妙に遠いため、かえって「それならまあ、下北沢と名乗るのもそう突飛ではないのかな」という同情心もわいてくるというもの。

京王線代田橋駅の近くに住みながら「笹塚在住」を名乗っている筆者としては、この建物のほうが自分よりよほど誠実ではないのか、とさえ考えてしまう。

その辺りを鑑みつつ今回は3位としたが、「下北沢から住宅地の小径を抜け、さらに大通りを渡った先」にあるこの建物には、あやかりハイツの基本が詰まっていると言えるだろう。

第二位:下北沢パークホームズ

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第二位の下北沢パークホームズは駅からおよそ900mほどの所にあり、今回紹介する中ではもっとも下北沢から遠い。

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最寄りのスーパーは下北沢とは反対側で、生活圏という面でも下北沢とは大きく隔てられたように見えるこの建物だが… これほどのアパートが優勝を逃したのには、上位の強さ以外にも理由がある。

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実はこの標識を見て分かるとおり、ここから大通りを素直に進めば下北沢の市街地へ行くことができるのだ。

住む部屋によっては窓から見ることもできそうなこの案内標識は「ここが下北沢ではない」ことを強調しているようでもあるが、一方で下北沢との強固な地理的連続性を示してもいる。

あるいは、ここに住む若者にとってこの青看板は、さながら映画8mileで同名の通りを超えることが成功の象徴であったように、将来この道を先へ先へ、下北沢に向けて進んでいくための道しるべにも見えるかもしれない。

であれば、そういった精神性はむしろ、下北沢市街に住むよりもずっと下北沢的だとさえいえるだろう。

下北沢という町の名前にあやかっているようでいて、その実、町の外からしか醸し得ない「らしさ」を演出して見せた下北沢パークホームズ

順位こそ二位となったが、彼はあやかりハイツ界のエミネムとして、その功績を永く語り継がれるに違いない。

番外編:ドエル下北沢

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ここで、とある理由からベスト3入りを逃した建物をご紹介しよう。

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このドエル下北沢は、下北沢駅からおよそ800mのところにあり、ランクインした他の建物に劣らない距離を誇る。

そしてこの建物は下北沢駅から単純に距離が離れているのみならず、より建物から近いところに京王井の頭線の池の上駅と小田急東北沢駅をたたえており、下北沢駅は3番目に近い駅に過ぎないのだ。

上北沢駅まではおよそ500m、池の上に至っては300m弱ほどだという点を踏まえると、それでも「下北沢」を名乗っていることのインパクトを感じて頂けるだろう。

また、これら二つの駅はいずれも、下北沢より東京寄りにある、というのも注目すべきポイント。

例えばここの住人が都心で仕事をしているとすれば、たいてい下北沢は定期券の範囲外になるはず。

平日はよほど明確な目的がなければ電車を一駅余計に乗ることはないだろうし、休日もついつい渋谷に出てしまう、なんてことさえありそうだ。

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さらに、この建物から下北沢駅へ至る道にはこのような急坂があり、自転車やスクーターなどが利用しにくい、という点も見逃せないだろう。

このように、単純な距離以上の「隔たり」を見せてくれたドエル下北沢だが…… 実は住所上は「世田谷区北沢一丁目」に位置しており、こう見えてれっきとした「下北沢」の物件なのだ。

いくら「下北沢らしくない」とはいえ、下北沢そのものに建つ物件を「あやかり」と呼ぶことは語義に反する。

あやかりハイツを愛する者として、ここは涙を飲んで選外とした次第だ。

第一位 NYX下北沢

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第一位のNYX下北沢は、ここまで紹介した物件のいわば「全部入り」だ。

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駅からの距離はおよそ800mほど

建物の目の前には先程も登場した環七通り(しかも立体交差の近くだ)があって、下北沢エリアとの心理的な隔たりが大きく……

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さらに建物のほど近くに大きなスーパーがあるため、ここに住めば、日々の生活のうち「下北沢でないところ」に頼る割合が大きくなるだろう。

最寄り駅となる「世田谷代田駅」は建物から徒歩4分という好立地。

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近隣には「代田」の名前を大きくアピールしたお洒落な商店もあり、下北沢とは別個の文化が根付いている点も見逃せない。

駅もスーパーもカルチャーも、知名度以外は大抵備えているこの町であくまでも「下北沢」を名乗る姿勢は、「あやかり」というよりもむしろある種の誇り高ささえ感じられる。

もしも自分が、下北沢でなにかダサい行いをしたら、遠くからNYXくんが「下北沢の名に傷がつくだろ!」と、謎の立場で怒ってきそうなくらいだ。

あやかりハイツとしては文句ナシの一位であるNYX下北沢だが、ただどうにも筆者としては、君が建つ代田という土地にも、どうか心を開いてやってくれないものかと、なんだか再婚家庭の子供をみる保育士のような気持ちになってしまう。

このへん、カルディの本社とかもあって良いところなんですよ。

さいごに

今回は下北沢を舞台に、「あやかりハイツ」のあやかりぶりのランキングを発表させて頂いた。

きっと皆様の家の近所にもあるはずのあやかりハイツ。

今度見かけたら、街との物理的な距離や、そこで暮らした際の文化的な隔たりなど、さまざまな視点から鑑賞することで、今までよりずっと楽しめるようになるはずだ。

筆者の生活圏にも、まだまだ中野や高円寺など、あやかられやすい土地がまだまだあるので、いずれそちらのあやかりハイツについてもご紹介する機会があるかもしれない。

以上、実家の住所を聞かれたときは、実際は違うのに「立川らへん?」と答える筆者がお送りしました。

君たちが「ほっとれもん」と呼ぶものの多様性について

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たとえばあなたが、今日のような秋の日の夜に、中学時代からの友人に呼び出されたとする。

「たまたま近くに来たからさ」という相手の言葉に、ほんのりと隠し事の気配を感じつつも、あなたは何も聞かず、駅前の公園を待ち合わせ場所に設定したとする。

早めに現場に着きそうなあなたが「何か飲む?」とメッセージを送ると、相手がすぐさま10年来の遠慮のなさで「ほっとれもん」とだけ返信してきたとする。

そうしたらあなたは、自販機の多そうな小径に進路を変更する前に、考えておかなければならないことがある。

すなわち、

どの「ほっとれもん」にするか?

だ。

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本稿は、この時期に自販機で売り出される、温かくてレモン味の飲料群――さまざまなメーカーが商品を展開する一大ジャンルでありながら、いずれも特段の区別なく「ほっとれもん」と呼ばれ、一様に消費されてしまうあれらの飲料について、その多様性を改めて示し、皆がその時々でより適切な「ほっとれもん」を選択するための指標となるものである。

キリン ホットレモン

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最初に紹介するのは、キリンの「ホットレモン」。

いかにも、すべてカタカナでホットレモンである。

この手の飲み物といえば「ほっとレモン」が定番だろう、と思う人もおられるかもしれないが、それは果たして「本当」だろうか?

あなたが最後に飲んだ「ほっとれもん」は、確かに、前半平仮名、後半カタカナの「ほっとレモン」だったろうか?

あなたの言う「ほっとレモン」がどこのメーカーから出ていたろうか、それは「ホットレモン」を出しているキリンよりもメジャーなメーカーだったろうか?

――ともかく、まずこの「ホットレモン」の味について述べるなら、特筆すべきはそのおだやかな甘さだ。

パッケージでは控えめに顔を出す「はちみつ」だが、この飲み物においてはレモンに負けず劣らず主張し、盤石な「ホット感」を演出している。

前半だけ平仮名の「ほっとレモン」を探していたつもりでこの商品に行き当たったどの人も、よもやハズレだなどと思うことはなく、おいしく飲んで頂けるだろう。

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正しい持ち方

さて、今回「ほっとれもん」を紹介するにあたり、すべて22時以降の屋外で味を確認することとした。

コーンフレークは朝10時半に食べるのが最も美味であるように、「ほっとれもん」類は22時以降の屋外で飲むのが一番美味しいからだ。

ただこの、全てカタカナの「ホットレモン」について特に述べるなら、よりこの味わいが際立つ状況というのがあるだろう。

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――たとえば秋の休日。

その日の予定をあらかた終え、本来いくらでもゆっくりしていていいはずの夜半に、どうしても落ち着かなくなって家を出る。

大学時代からの友人が、今頃彼女にプロポーズをしているはずなのだ。

あいつは人の幸せを喜び、人の不運に泣くことができる大した男だが、その分、俗に「男らしさ」と呼ばれる形質を欠くところがある。

あいつは上手くやってくれるだろうか。あてどなく自宅とコンビニの間をうろついているとスマートフォンが震え、奴がlineのスタンプを送ってきたことを知らせる。

中身を確認すると、あいつの好きなアニメのキャラが、こちらへ向けて親指を突き立てている。

そうか、やったな。

同じスタンプを送り返し、返事を待たずにスマートフォンをしまうと、緊張が解けたからか、やにわに身体の芯が寒さを訴えだす。

大慌てで目についた自販機の「ホットレモン」を買い、くっと一口飲み下す。

「良かったな」と感慨にふけりながら身体の芯を温めるこんな夜にこそ、この「ホットレモン」は相応しい。

  • 甘味 ★★★★☆
  • 酸味 ★★★☆☆
  • あたたかみ ★★★★★

アサヒ飲料 ほっとレモン

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さて、皆さんの記憶にある通り、「ほっと」のみが平仮名になったほっとレモンも確かに存在する。

せっかくなので、ここで皆さまにはほっとレモンの「味」についても思い出してもらおう。

レモンの爽やかさとはちみつの温かみ、どちらを強く感じる味だったろうか?

――今回5種を飲み比べた者として「正解」を述べさせてもらうなら、「ほっとレモン」の味は、甘みと酸味のどちらにも突出しない中庸さにこそ特徴がある。

「スポーツドリンクって、あっためたらこんな感じになるのかな」というくらいに軽やかなのだ。

これは逆接的に、もしあなたが「ほっとれもん」の味になにか明確な印象を覚えていたなら、それはアサヒの「ほっとレモン」ではなかった可能性が高いことを示唆する。

本当はカタカナのホットレモンだったのかもしれないし、あるいはこれから紹介するような、名前の大きく異なるいずれかの商品かもしれない。

ともあれ、この平仮名の「ほっとレモン」を飲むべき状況というのは、例えば以下のような時だろう。

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――なかなか休みの合わない彼女と、仕事終わりの時間を利用したディナーデート。

就業間際の会議からリモート飲みになだれ込もうとする部長をどうにかいなしているうちに、気付けば約束の時間を過ぎてしまった。

待ち合わせ場所のランドマークに大慌てで駆け寄ると、僕を見つけた彼女の表情がぱっと明るくなるのが見える。

僕が遅れてごめん、と言うのを聞いた彼女は少し慌てたように怒り顔を作り、ミルクティーね、と言って僕の腕を取るのだ。

遅刻の負い目を早々に清算させてくれる彼女のこんな優しさは、去年僕が彼女に惹かれた理由の一つでもある。

あの日もこんな肌寒い日だったな、と思い出しながら、今日もありがたく140円のお詫びをさせて頂こう。

寒空の下待たされた彼女にはミルクティーを、そして息の上がった僕にはほっとレモンを。

一口目を飲むタイミングが不意に揃ったのを笑い合いながら、乾いた喉を潤すこの瞬間にこそ、アサヒ飲料のほっとレモンは相応しい。

  • 甘味 ★★☆☆☆
  • 酸味 ★★☆☆☆
  • 軽やかさ ★★★★★

Pokka ぽっかぽっかレモン

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ここから少しずつ、あなたの思う「ほっとれもん」とはイメージがズレてくるかもしれない。

とはいえあなたが「あったかいレモンのやつ」を飲みたいとき、肌寒い屋外でこの「ぽっかぽっかレモン」を見かけたら、恐らく妥協する意識さえなしに自販機に小銭を投入することだろう。

しかしこの「ぽっかぽっかレモン」は、そうして漠然とした「ほっとれもん感」を期待して飲んだときに、最も違和感を覚えるかもしれないものの一つだ。

「ぽっかぽっかレモン」を一口飲み、レモンの爽やかさが鼻腔を抜け去った直後に感じるのは、鮮烈な糖の甘さ。

はちみつとも違う、どこか黄金糖を思わせるようなパンチがあり、恐らくあなたの「ほっとれもん観」の中心からはいくらか外れた存在だろう。

この特徴的な味わいは、他の「ほっとれもん」と同じように飲むよりもむしろ、以下のような時に相応しい。

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――12月末、何時ともつかない深夜、僕は見慣れない駅で目を覚ます。

確かつい先刻まで、気の置けない友人と、久々の飲み会に興じていたのではなかったか。

スマートフォンを取り出し、現在時刻を確認すると、自分が終電を乗り過ごしたことをようやく自覚させられる。

これから家に帰れるか、あるいはどこか泊まれる場所はあるか?

冷静さを取り戻した頭を持ち上げると、刺すように寒い外気が胸元を抜ける。

早く体温を上げなければ命が危ない。

おぼつかない脚で自販機に駆け寄る。

鋭く痛む頭がカフェインを拒否するのを感じながら、Pokkaの「顔缶」の隣にある「ぽっかぽっかレモン」を買い、矢も盾もたまらなず一口すする。

ああ、甘い。

無くしたマフラーについてなるべく深刻に考えないようにしながら、これからの数時間について検討する深夜にこそ、「ぽっかぽっかレモン」は相応しい。

  • 甘味 ★★★★★★
  • 酸味 ★★☆☆☆
  • 救荒食糧感 ★★★★☆

伊藤園 あたたまるビタミンレモン

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日本に生まれ育つと、レモン味のものに対してビタミンCの含有を期待するよう価値観がセットアップされるものだ。

実際それにどれほどのビタミンが含まれていて、それがどれほど我々の身体に役立つのかはともかく、肌や唇が乾燥しだすこの時期になると「ほっとれもん」はいかにも有難く映るだろう。

伊藤園の「あたたまるビタミンレモン」は、我々のそんな弱さを見透かすように、ややマイナーな伊藤園の自販機からこちらを覗いてくる。

一口飲んでみると、幼少期にカリコリと食べた「おいしいビタミン剤」を思わせるケミカル感があり、これはこれでなかなか悪くないものだ。

ほかの「ほっとれもん」のいずれとも異なる個性を備えた「あたたまるビタミンレモン」を最もおいしく飲めるのは、恐らく以下のような時だろう。

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――私(いかにも、ここで筆者は26歳女性である)の部屋に、明日いきなり彼が来ることになった。

大慌てで片付けをしていたらあっという間に夜中の零時を過ぎてしまって、しかもまだまだ、寝るまでには終わりそうにない。

ひとまず燃えるゴミを出しに出てきたんだけど、ホコリを吸っちゃったみたいで喉が嫌な感じ。

こういうときはいつも、近くの自販機で買える「あたたまるビタミンレモン」を飲むことにしている。

ビタミンが入ってるみたいだし、はちみつも喉にいいって言うし。

これを飲んでスグに喉が治るなんて思ってるわけじゃないけど、何もしないでストレスためるよりはずっといいだろうし。

なにより、「あたたまるビタミンレモン」って、こうやってちょっとだけ体調の悪い秋の日に飲むのが、いちばん美味しいと思うから。

  • 甘味 ★★☆☆☆
  • 酸味 ★★★☆☆
  • ありがたみ ★★★★☆

サントリー あったかいはちみつレモン

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サントリーの「はちみつレモン」といえば、1986年に発売されたロングセラー。

しかしこれをひとたび温めてしまうと、ほかのものたちと十把一絡げに「ほっとれもん」と呼ばれてしまう。

ホットドリンクのフィールドは、かの「はちみつレモン」にとってもアウェーなのか?とも思うが、実はそうでもない。

何を隠そう、サントリーはコンビニを中心に「ホットはちみつレモン」というよく似た商品も展開しているのだ。

もっとも、先ほど紹介した「ほっとレモン」もしばしばコンビニで販売されているのだが… 地域によっては、このはちみつレモンシリーズをこそ、ここまで紹介したどの「ほっとれもん」よりも目にし、あるいは口にしている可能性もあるだろう。

さて、味についてだが、名前に強調される「はちみつ」の濃厚さはそこまで目立たず、むしろレモンの爽やかさを前面に押し出した味わいだ。

自分が以前飲んだ「ほっとれもん」はコレだったのではないか、と思わされるような、わかりやすくホットでレモンな飲料となっている。

このように、身近さを感じさせる味とネームバリューを備えた「あったかいはちみつレモン」を飲むのに相応しい状況といえば、まさに冒頭で紹介したようなシチュエーション。

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言い換えれば、あなたが何か言いたげな旧友を迎えるときは、「ほっとレモン」でも「ホットレモン」でもなく「あったかいはちみつレモン」を買わなければならないのだ。

彼はきっと、10年前と同じようにあなたの前にあらわれ、しばらくは他愛のない話で盛り上がることだろう。

そうして終電の時間が近づいてきたころ、胸に秘めたなにかについて話してくれるかもしれないし、あるいは、あなたと久々に話ができたことを静かに喜びつつ、なにか独りで重大な決断をするのかもしれない。

いずれにせよ、君の変わらぬ友情と、「あったかいはちみつレモン」の酸味は、間違いなく彼を良いほうに向かわせるはずだ。

  • 甘味 ★★☆☆☆
  • 酸味 ★★★★☆
  • 爽やかさ ★★★★☆

人生に多様な甘酸っぱさを

人の数だけ「ほっとれもん」の必要な場面があり、そして「ほっとれもん」にはそれぞれ異なる味わいがある。

たかが100円そこそこの飲み物でさえ、うまく選べばあなたの人生を少しだけ豊かにしてくれるだろう。

それでは皆さん、よい秋を。

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これは飲み物をうまく選べなかったときの写真

【ネタバレ】Outer Wildsで詰まったところまとめ

この記事はOuter Wildsについての遠慮のないネタバレが含まれており、したがって攻略には不向きです。

操作性

  • とかく悪く、最後の最後までミスによる死に見舞われた。
  • あの悪辣な操作性にだんだんと慣れていく体験が「ループものの主人公感」を補強するのだ、という意見があるかもしれないが、正直こちらはループものにさしたる思い入れがないので……。
  • あれはリアルを追求した結果だ、という見方もできるかもしれない。ただそもそも探検にあたっては、「渡航記録」というストーリー上反則レベルの手法でユーザビリティを提供しているのだから、操縦だって多少やりやすくしておいてもよかったはずだ。

木の炉辺

  • 「ループもののゲームである」という予備知識を持った状態で、いつ終わるともしれないチュートリアルを進めるのはかなり根気が必要だった。
  • 無重力の練習をする施設、みたいなやつ、ついぞ行かなかった気がする

灰の双子星

  • 重力が弱いので着陸がしんどい。
  • どの星よりも「待ち時間」が多く発生するのに、ここに限って焚火がないのはどういう了見なのか。
  • 天井が壊れていて使えない(使おうとすると砂に飲まれてしまう)、あのコアに対応したワープホールを使うための方法が「砂に飲まれないようにタイミングよく入ろう」なのは許しがたい。スマートでないのはもとより、ここで失敗したときに「タイミングが悪いのか、そもそもこの方法が間違っているのか」が分からないままループを再スタートさせられ、宇宙船の操縦と5分以上の待機を強いられる苦痛は相当のものである。この方法が正解だと分かったうえで辺りを見回せば「橋の上にnomaiが倒れている」ことがヒントであると気付けるのだが、本当に必要だったのは「コアに行くにはワープ以外に方法がない」という事実についてのより明確なヒントであって、ワープの実現方法についてのものではないのだ。ちなみに日本語圏では「あらかじめワープホールにリトルスカウトを配置しておいて、奴がワープする瞬間に発生する『判定』にぶつかりに行く」というTASじみたテクが紹介されているが、デザイナが想定しているかどうかは微妙なところ。作中の文章に「ワープ中の人やモノに触ると巻き込まれちゃうよ!」とでも書かれていたならばまあ、その点についてだけは許す用意がある。
  • 同様に、太陽プロジェクトへのワープホールも、一見サボテンで塞がれている部分の通り方が「服が破れても直ちに死にゃしないので突っ切りましょう」なのはどういうことなんだ。そうして飛んだ先で、さらに落下死のリスクを背負ってまで得られた情報があんなちょっとしたものでいいのか。
  • コアの話に戻ると、通路から落ちて詰んだことが複数回あった。重力が完全に切れる直前にうっかり飛んでしまったときなどは、暗い球体の中を一生慣性に従って跳ね回り続ける存在としてループを過ごす羽目になった。
  • コアの中から出る方法が最後までよくわからなかった。帰りのワープホールは乗りっぱなしだと動かないなんて話ありましたっけ?
  • アイテムを持って地上に出ると音楽が荘厳になるのだけれど、それがあまりにも超新星爆発のときのBGMと似すぎている。こちらはいつワープが開くのかやきもきしながら待って、残り時間をずっと気にしていたんだぞ。ここで一度攻略を諦めて放置、その結果死亡ENDを見た。死亡したらセーブデータを壊すくらいのことはやってくるかもしれないと思ったが、その点に対して未必の故意があったことを否定しない。プレイヤーキャラクターが死んでもプレイヤー自身が死ぬわけではない、という当然の事実により、キャラとプレイヤーのつながりが不可逆的に絶たれた。俺がキャラクター本人なら、こういうことがないように何ループもかけて入念に練習するのだろうけど、ゲーム内では当然やりたくない。だって命かかってないから。

灼熱の双子星

  • なんか探索できる箇所が2か所くらい残ってた気がする。
  • ゲームの序盤にここを探索して、nomaiの遺跡を見つけたときの興奮はすごかった。ゲーム中一番の衝撃だったが、言い換えるとこの先コレを上回ってこなかった。

巨人の大海

  • コアの中に入ったとき、電気に覆われた部分は当時入り方がわからなくて諦めたのだけれど、渡航記録に「探索できる場所が残っています」のマークが表示されなかったため、だいぶ長いこと存在自体を忘れてしまっていた。クリアした人ならばわかる通り、ここの攻略は必須である。
  • 見かけたクラゲに近づくために、不自然なまでにゆっくりと水中を泳いでいると、たどり着くころにはクラゲさんが底に沈んでいる、ということが何度もあった。
  • 宇宙服で水中に落ち、ほぼソフトロックとなることが相当な数あった。

脆い空洞

  • わりと楽しかったけど、探索できるところが残っていた気がする。
  • ランタンって行ったらなんかあるんですかね?

侵入者

  • 重力砲で脱出ポッドをどかしてから来てもその場所に何もなかった時の肩透かし感わかる???
  • なんか迷路みたいになってる部分、たぶん正解するとその先にだれかいたんだろうけど、難しそうだったしおおかた予想がついたので諦めました。

闇のイバラ

  • 炉辺の種にリトルスカウトを飛ばしたとき、かつてイバラに着陸してわけもわからず死んだ経験が線でつながる感じがして爽快だった。このゲームで受けた衝撃第二位。
  • ホワイトホールから空洞に戻るときに学んだ慣性移動で、アンコウの傍を通る時の緊張感がこのゲームで受けた衝撃第三位。ただ主人公がゼーハー言う音にビビってスラスタを動かしてしまったことがあるので、あの演出を考えた奴は嫌いです。その呼吸アンコウに聞こえるぞ。

量子の月

  • 着地に相当難儀した。量子試練の塔は攻略していたのだけれど、ついぞ「観測」の定義が明確になされなかったので、リトルスカウトを飛ばす→(撮影をせずに)奴が近くをとおったタイミングを見計らって突っ込んで肩透かし、みたいなことを複数回やって、終盤まで半ばあきらめていた。「カメラが向いていることは観測じゃないけど、いっかい写真を撮っちゃえばそのあとリトルスカウトさんの目線がどうなっても観測」という定義はかなり恣意的じゃないですか?現実における微視的な量子の世界でさえ観測の定義はあいまいなのだから、ゲームの中ではハッキリさせておいてくれ。塔を建てたやつがいらんポエジーを発揮したせいで俺は!
  • タワーを北極にもっていく手順については「総当たりが要るな」とわかった段階で早々にスポイラーをチェックした。

エンディング

  • ピアノを集めるくだりが分からずに天を仰いだ。もしこの作業中にもゲーム内時計が続いてるとしたら、ここでまごついたおかげで死んでまたやり直すことになるぞ、と考えると雰囲気を味わう余裕などない。

さいごに

この呪詛にまみれた記事は、こういった気持ちで書かれました。

このゲームを楽しめた人が本当にうらやましいんですよ。