一般に、新しいことに挑戦するときは、余計なプライドを捨てるべきだ。
その方が先人のアドバイスなどを素直に受け入れられるし、自分の実力を過大評価して失敗することもない。
何事においても、初めのうちは謙虚であることが成功の秘訣と言えるだろう。
さて話は飛んで、俺ことchocoxinaは「相席屋」に行ったことがない。
相席屋がどういう店かご存知ない方は上のリンクを参考にして頂くとして、まあざっくり言えば来店する男女の相席を斡旋して出会いの場を提供する飲食店である。
長いこと恋人のいないchocoxinaとして、そう無関心ではいられないたぐいの店ではあるのだが、繰り返す通りこの店には行ったことがない。それは何故か。
chocoxinaは概して臆病なので、こういう変わった業態の店に行こうかと考えるとき(そう、一度訪店を検討したことがある)には、店のシステムなどをしつこいくらいに調べることにしている。
先の公式サイトには利用方法が詳しく書かれたハウツーが用意されていたのだけれど、それを読み進めるうちに、なんというかこう、打ちひしがれたのだ。
このページ、最初のうちは特に、繊細なchocoxinaからしてもなんともない内容が続くのだが、引っかかったのがstep4。
タイトルが「お礼も忘れずに」だ。
この項目を読み進めるうちに俺は、ああ、そうか、と思い至る。このような店に行くというのは、店側に「お礼もできない奴」だと思われることなのだなと。
屈辱、という言い方が適切かどうか分からないが、例えるなら男子トイレに行ったときに、小便器の上に「一歩前へ」「トイレは清潔に」などの張り紙に紛れて「ちんちんはちゃんとしまいましょう」と書かれていたみたいな衝撃だった。バカにしてんのか、と喉まで出掛かった(もっと言えば、chocoxinaが最初に確認した当時、あのページはカラテカ入江をイメージキャラクターにしたクソちゃらいもので、よりみじめな気持ちにさせられたものだった)。
とはいえ、だ。考え直してみれば事実chocoxinaにはずいぶん長いこと恋人もいないわけで、なにか性格に重大な欠陥がある可能性について真剣に検討しなければならないところだ(性格だけでなく見た目に問題があることも否定しないが)。
そんな自分、それこそ性格に重大な欠陥を抱えていながら、あまつさえその自覚すらない現在の自分は、果たして他人に「挨拶もできない奴」だと思われたときに「バカにしてんのか」などと言い返せるような高尚な人間だろうか? それこそ思い上がりで、新しいことに挑戦するに際しての謙虚さが足りていないのではないか?
ーーいやでも待ってくれ、ただでさえ人様に誇るところのない自分が「人並みに挨拶ができるという人として最低限度の自負」までかなぐり捨てなきゃならないなんて、そんなのあんまりではないか、そんなゴミクズみたいな所まで自己評価を落として、どうやって女性に顔向けしろというのかーー
そんなことを考え続けて結局そのときは訪問を諦め、そのまま今日に至る。
果たして自分は謙虚さを欠いたのか、それとも辛うじてゴミクズのような卑屈から踏みとどまったのか。どちらにせよ未来のパートナーに申し訳の立たぬ性格で痛し痒しである。