chocoxinaのover140

ハンドルは「ちょこざいな」と読ませている

アメリカ人はベーコンにチョコを付けて食う(うまい)

噂には聞いていた。

アメリカでは、例えばフライドバターのような、日本人が想像もしなかったような料理が多くつくられること。

またアメリカではベーコンが2000年代から長らくブームになっており、ベーコングッズが作られ、またベーコンキャンプが開催されていること。

その中でさまざまな新作ベーコン料理が生まれ、ベーコンとソーセージをベーコンで包んだものベーコン味のウォッカベーコンをトッピングしたメープルシロップ味のドーナツなどが一定の支持を得ていること。

今回表題とした、ベーコンにチョコを付けたもの、すなわちチョコレートベーコンも、そういった料理の一つであるらしい。

数キロのベーコンを用意したり、酒税法にビクつきながらウォッカを扱ったりするような「フリーク向け」の料理にはちょっと手が出ないが、これなら日本のご家庭でも簡単に作れそうだ。

実際に作ってみたところ、これがことのほか美味しかったし、またチョコレートベーコンをより楽しめるバリエーションも発見したので共有させて頂きたい。

チョコレートベーコンの作り方

作り方、と仰々しく題してみたが、とくに変わった工程もなく、イメージから逸脱することはないだろう。

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ベーコンを炒めてかりっとさせ、

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その間にチョコレートを溶かしておく。

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ベーコンの両面にチョコレートを塗り付けたら、皿に盛る際汚くならないよう冷やし固める。

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触ってもベタつかないくらいになったら、品よく盛り付けて出来上がりだ。

――なんだろうなこれは。

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■どんな色調にすれば「映える」のかわからないので、モノクロにしてみた

作り始めた当初は「世間ではゲテモノみたいに言われてるけど、例えば『雪の宿』みたいに甘じょっぱいお菓子だと思えば悪くないんじゃないの?」と考えていたのだが、実物を目の前にすると途端に自信がなくなってきた。

部屋中に暖かいチョコレートとベーコンの臭いが充満しているのに、それらが同じ皿から発せられていることを脳が認識できないのは、かなり奇妙な感じだ。

見た目もなんか、見ようによっては「ゾンビの表面の、何かが着いたのか皮が剥げたのかもわからないぐじゅぐじゅした所」みたいだし。

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■なんとなくハイネケンを添えてはみたものの、これがおやつなのかツマミなのかも判然としない。

このような料理がまさか美味しいなどと、当時の自分は信じられなかったし、また読者の皆さんも同様だろうとは思うが、ここで改めて強調させて頂きたい。

チョコレートベーコンは美味いのだ。

チョコレートベーコンは美味い

口に入れてまず印象に残るのは、チョコレートの素直なコクと口当たりである。

その後チョコレートが体温で溶けるに従い、ベーコンの香りと塩気が驚くほど控えめに、しかし間違いなくベーコンのそれとわかる個性で顔を出してくる。

ベーコンは調理の過程でラードが抜けており、動物的な臭みはほとんどない。

本来あるべき油が抜けたカリカリのベーコンに、油分の塊ともいえるチョコレート(しかもその油は口当たりよく乳化している)がスッと入り込むようにして、両者はほどなく口の中で渾然一体となる。

結果、チョコレートベーコンは「あっさりとしてなめらかなベーコン」でありながら「甘味の引き立つ塩気と芳香を含んだチョコレート」ともいえる、驚くほど均整のとれた味わいを奏でるのだ。

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■今後も肉片の画像が続くので「よく手入れされた公園」の画像を見て目を休めておいて下さい

この料理には意外にも、一口食べたときの強烈なインパクトのようなものは存在しない。

ただ、その味をどうにか言語化しようとしている間に、二つ、三つと口に放り込んでしまう魅力を備えている。

端的に言えば「癖になる」のだ。

甘しょっぱくて癖になる、といえば、日本人になじみ深いのは「ハッピーターン」であろう。
あれを「甘いのにしょっぱくて気持ちが悪い」などと評する人はそう多くないはずで、チョコレートとベーコンの調和はまさにハッピーターンと同様だといえる。

しかもチョコレートベーコンは、ハッピーターンよりも明らかに低糖質で高たんぱく。ダイエットにも最適である。

更なるバリエーションの探求

結局のところ、最初に作った5枚のチョコレートベーコンは、用意したハイネケンを半分も飲まないうちに全て食べきってしまった。

缶の底に残ったビールを舐めている間も「薄いベーコンを使っているから、チョコレートを塗るのは片面でよかったな」などと考える始末で、恥ずかしながらすっかりハマってしまったと言わざるを得ない。

本場アメリカでは、チョコレートベーコンにさらにナッツなどのトッピングをする例もあるらしく、そちらもぜひ試したいところだ。

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そこで今回、この通り5種類のバリエーションを制作し、それぞれ食べ比べてみることにした。

初めてチョコレートベーコンを作った翌日のことである。

ミルクチョコ×アーモンド

まずは無難に、前例のあるレシピから試していきたい。

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■ちなみにここから、チョコレートを塗るのは片面だけとし、冷やし固める工程を省いている

さて、この定番ともいえる「ミルクチョコ×アーモンド」であるが、食べてみるとチョコとアーモンドががっちり手を取った結果ベーコンの味わいが引っ込んでおり「なんか変わったナッツが入ったうまいチョコ」くらいの趣になってしまった。

これが「定番」なのだとすると、チョコレートベーコンは本国において、ツマミではなくおやつとして受容されているのかもしれない。

  • おやつ度 ★★★★★
  • ツマミ度 ★★☆☆☆
  • 仕事中に食べたい度 ★★★★☆

ミルクチョコ×チーズ

とはいえ、個人的にはチョコレートベーコンの「ツマミ」としてのポテンシャルを高めていきたい。 そこで、冷蔵庫に眠っていたベビーチーズをのせてみることにした。

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ベーコンとチーズの取り合わせなら間違いなくツマミに寄るだろうと考えたが、思えばチョコレートとチーズを合わせたケーキなんていうものもあるし、どちらに転んでもおかしくない。

実際食べてみると、すべてが違和感なく混じりあった結果、おやつともツマミともつかない中庸でもったりした何かになってしまった。
例えるなら、ヤンキーとオタクで仲良くしているのが面白いコンビだったのに、間に陽気な男が入ったらただのありがちな仲良しにしか見えなくなっちゃったみたいな。伝われ。

ただ味が悪いわけではないので、例えばこのままクラッカーに乗せたら、いい意味で印象に残らない気の利いたオードブルになりそうだ。ナビスコのルヴァンにチーズとガナッシュをこんもり乗せて、ベーコンの小片をナナメに突き立てておく感じで。

  • おやつ度 ★★★☆☆
  • ツマミ度 ★★★☆☆
  • 沢口靖子にオススメ度 ★★★★★

ミルクチョコ×ブラックペッパー

ツマミとしてのチョコレートベーコンにすっかりハマっている自分としては、食べる前から勝利を確信していた取り合わせである。

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■ここまで読んだ皆さんにはどう見えるだろうか?

どうあれ筆者にできるのは、やはりこれこそが正解だったと皆に伝えることだけである。胡椒とベーコンの相性は言うまでもなく、チョコレート側も辛いものとタッグした実績(柿の種、タバスコ等)には事欠かない。

どの二者を切り取っても面白い上に、三人寄れば更に強い。さながらお笑いでいうところのネプチューンである。

黒い小瓶の一振りが、チョコレートベーコンを完全なるツマミに引き寄せるのだ。皆も知り合いのアメリカ人に教えてやって欲しい。

  • おやつ度 ★★★★☆
  • ツマミ度 ★★★★★★
  • 名倉潤さんの快復をお祈りしている度 ★★★★★

ミントチョコ

ベーコン料理としてはことのほかあっさりとしているチョコレートベーコンを、よりあっさりとさせるべく、清涼感のあるミントチョコを使用してみた。

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しかし食べてみると、いかんせんミントの主張が強すぎる。寝る前に歯を磨いていたら、歯間からさっき食べたベーコンのカスが出てきた、みたいな味だ。

冷やして食べれば、食感が変わったり香りが落ち着いたりして多少改善するかもしれないが、これ以上試す気にもならない。
ミントチョコに一切の非はなく、責められるべきは筆者の愚かさのみである。

  • おやつ度 ★☆☆☆☆
  • ツマミ度 ☆☆☆☆☆
  • 豚さんへの申し訳なさ ★★★★★

ミントチョコは普通に食べるに限る。

ホワイトチョコ

「チョコレートがベーコンの油を置き換える」という性質に注目し、より油分の強いホワイトチョコレートを使用してみた。

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■これまでとだいぶテクスチャが違うし、なんならマヨネーズに見える

ミルクの味に動物性の香りが足されたら、バターのような趣が出たりしないかと期待もしたのだが、どうもそういう感じではない。「寒い国には、こういう甘いシチューもあるのかな?」くらいの、悪くはないが褒めるところも見当たらない味だ。

ベーコンチョコレートにおいて、ミルクチョコの苦味って大事だったんだなと気づかされる。また普通のチョコレートベーコンと比べると油分の口に残る感覚が強く、自分がこれまで食べてきたチョコレートベーコンの危険性を強く認識させられる。

  • おやつ度 ★★★☆☆
  • ツマミ度 ★★☆☆☆
  • 翌朝の顔のテカり ★★★★☆

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■二日連続でチョコレートベーコンを食べたことにより、翌朝どころかその場で顔がテカテカになった筆者

チョコレートベーコンは美味い(2回目)

以上が、名作ベーコン料理ことチョコレートベーコンの紹介と、新たなバリエーション探求の記録である。

より大きく厚いベーコンでの制作や、イギリス式の作り方(チョコレートをベーコンで包んで焼く)など、まだまだ試したいことは多いのだが、ひとまずここまでで、皆さんにこの料理の魅力が伝わったなら幸いである。

少なくとも筆者はこれから、スーパーで4連に束ねられたハーフベーコンをすべてチョコレートベーコンとして消費するつもりだし、皆もぜひ、できれば今夜の晩酌から試してみてほしい。

合わせる飲み物は、ビール、バーボン、あるいはコーラなんかもいいだろう。